「母親からの虐待、学校でのいじめ、親族からの性被害」毒親育ち発達障害の女性が、ストリートピアノで人生を乗り越えるまで
まいどなニュース / 2024年6月10日 15時0分
毒親育ちで発達障害のピアニストゆきさん(@miniminimini918)。現在23歳で、東京都庁展望台に設置している誰もが自由に弾けるストリートピアノで演奏を披露し注目を集めています。
その華麗なる演奏とは打って変わって、母親からの虐待や親族から受けた性被害…そして、幼少期から受け続けてきたいじめなど壮絶な人生を送ってきたといいます。過去の苦悩や抱えている病気のこと、また今後の抱負などを、ゆきさんに聞いてみました。
3歳からピアノを始めた 幼少期、小学校受験を強いられ勉強漬け
──お母さんは子どもに対して過剰な教育やしつけを強いるいわゆる「毒親」だったとのこと。ピアノもお母さんの希望から?
「そうですね。3歳からピアノを始めました。きっかけは、お友だちがピアノを始めると聞いて自分もやってみたいと思っていたこと。また母が自分が途中までしかできなくて悔しい思いをしたから私にやらせたいという理由もあったんです。19歳まで習っていましたが、うまく弾けないと母から体罰や暴言を受けるなどスパルタレッスンでした。辞めたいと言ったら馬乗りになって暴力を振るわれたこともあります」
──幼少期から虐待を受けていたのですね。
「幼少期から小学校受験をさせられて、ずっと勉強漬けの日々。できないと叩かれたりしました。受かったのですが、通うには遠く私が嫌がったことから、結局地元の公立小に通うことに。でも私は発達障害の傾向が強く、人とのコミュニケーションがうまくいかなくて、小学校からいじめを受けました。途中、横浜から東京へ引っ越して転校したのですが、そこでもいじめに遭って。『泥棒した』『特別支援学校に行ったほうがいい』などと言われたり。学校でいじめに遭っていることを母親に相談しても何もしてくれなかったんです。発達障害も親が認めず。病院に行かずそのまま放置されました」
小中高もいじめられ続けて、中3の時にクラスメイトから「死ね」と言われた
──中学生の頃もいじめに?
「はい。集団でいじめられました。中学3年生の時には、クラスメイトなどから『死ね』とか言われて…通りすがっただけで偶然を装って肩をぶつけられたり、机がなくなったり。担任からもペーパーテストの成績が良くても内申を下げられたり。それに母親が学校の給食費を払ってくれなかったので、先生から怒鳴られたり体罰されたりとか。先生からもいじめられていました。部活は母親が決めたテニス部に入ったのですが、リーダーの女の子からボールをぶつられたりしていじめを受けました。また中学生になっても何もかも親が管理。携帯電話も持たせてくれない、部活も母親が決めて。テレビを観たり、漫画を読んだりも全て禁止されていました」
──高校に進学した時は。
「高校も母親が決めたところに入りました。そこでもいじめがあって。私立高校だったのですが、机がなくなったり、物を壊されたりと。それに母親から高校は『奨学金で行け』と言われたり。でも最終的には父親が払ってくれましたが」
──また親族からは性被害を受けたとか。
「はい。親族からレイプされました」
──高校までも壮絶な日々。大学に進学してからは。
「大学も母が決めた私立大に入学。母親からの暴言も続き、入部したテニス部でもいじめられました。大学履修科目も決められ、髪型服装化粧も禁止。大学生になっても奴隷のような生活を続けていました。学校でもいじめられるし、親ともうまくいかない。なので、援助交際、一度は“パパ活”に走りました。そうしたらパパ活相手にストーカーされて。実家を特定され、援助交際をやっていることが母親にばれたんです。母親に怒られ無理やり坊主にさせられて…この家にいたら死ぬ、と思い家出をしました」
大学は中退、専門学校に通った…お金を貯めて20歳で両親と絶縁
──大学は卒業できた?
「いいえ。途中からお金がかかるからと大学中退して美容関連の専門学校に行かされました。当時母親が決めた大学に入ったのに途中で行くなと言われて、はしごを外された気分になったことを今でも覚えています」
──専門学校の時はどんな生活を送ったのでしょうか。
「専門学校に通いながら、自分に合わないアルバイトをさせられました。アルバイト先でもいじめられて、精神的に病んでしまいついに限界に。大学時代から母親に内緒にしながら風俗で働いて貯めたお金で家を出て両親と絶縁しました。20歳のクリスマスの時です。とにかく母親からの暴力から逃れたくて見つからないように、住民票閲覧制限もかけました」
──ご両親と絶縁した後は。
「働いたのですが、人とコミュニケーションが苦手でやはりいじめられたりして仕事を転々としていました。その間、ストリートピアノを始めて。生きづらさから解放されたいと思い、22歳の時に病院で診てもらったところ、発達障害ASDとADHD(※)と診断されました」
20歳過ぎて初めて発達障害の診断 再びピアノを弾き始めた
──20歳過ぎて発達障害の診断を受けたわけですね。
「診断を受けた年に、今の旦那さんと出会いました。私が都庁でピアノを弾いていたところ、話しかけられたことがきっかけです。一人の時は生活が苦しかったのですが、結婚してからはピアニスト1本で活動しています」
──お母さんからの虐待、学校でのいじめ…つらかった人生も終止符を打てました。今後の抱負を教えてください。
「これまでを振り返ると、自殺を毎日考えていた私。いつも駅のホームから飛び込もうと何度も思いました。それでも、唯一20年ほど続けてきたのがピアノ。ストリートピアノを始めてから、私の演奏を聴いて拍手をいただいたり涙を流したりする方々と出会って…生まれて初めて心の底からうれしいと思いました。私と同じように苦しんでいる、悩んでいる人たちに私の演奏を通じて前向きになってもらうため、これからも活動を続けていきたいです」
※【ASD(自閉スペクトラム症)】人とのコミュニケーションが苦手・物事に強いこだわりがある。
【ADHD(注意欠如・多動症)】年齢あるいは発達に比べて注意力が足りない、衝動的で落ち着きがないといった特性を持つ。
現在ゆきさんは、主に都庁南展望室でピアノの演奏活動に取り組んでいます。曲はクラシックがメイン。時間は10時~12時、14時~16時の間だそうです。
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)
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