落としたiPad、火災保険で補償されるって聞いたのに…「俺の場合は何でダメなんだ！」注意しておきたい理由、専門家が解説

スマホやタブレットの故障に火災保険は使うことができるのか　※画像はイメージです（HandmadePictures/stock.adobe.com）

何気なくスマホでニュースを見ていたBさんは「火災保険を使ってiPadを修理したら得をした」という記事に目を止めました。というのもBさんは数日前にiPadを落として故障させてしまっており、途方に暮れていたのです。

「火災保険で修理ができて、さらに得するのであれば使わない理由はない」と考えたBさんは、自分が入っている火災保険の担当者に連絡。事情を説明したのですが、担当者からの返事は「補償されない」というものでした。

加入している保険の内容や、保険会社によって補償内容が異なるのは当然ではあるものの、「同じ家財を対象にした保険なのに、なぜ補償されないのか」とBさんは納得できません。なぜBさんのiPadの故障修理は補償適用外だったのでしょうか。損害保険に詳しい株式会社スタイリッシュエージェンシーの米谷武氏に話を聞きました。

ーそもそも私物のiPadが壊れてしまった場合、保険が適用されるのでしょうか。

火災保険が補償する対象には「火災、落雷、破裂・爆発の補償」「水災の補償」などがあります。今回のBさんのケースであるiPadの故障は、火災保険のなかの「破損・汚損などの補償」の枠組みになります。この補償は、建物・家財の思わぬ破損・汚損など不測かつ突発的に生じた損害が対象です。

もしこのような補償サービスが含まれた火災保険であれば、私物のiPadも家財にあたると考えられるので、補償の対象になると考える人もいるでしょう。しかし、各保険会社は、重要事項について記した書面（重要事項説明書）の中で「保険金をお支払いできない条件」を明記しています。

この部分をよく読んでみると、タブレットやノートパソコンはそもそも火災保険自体の補償対象外にしている会社もあります。Bさんが加入している保険には、恐らくそのような記述があったのではないかと思われます。

ータブレットやノートパソコンはなぜ補償されないのですか

過去には、タブレットやノートパソコンの故障も保障範囲とした商品や特約が多く発表されていました。同様にスマートフォンも補償対象としていた商品や特約はあったのですが、損害率が高くなったことなどの理由により、現在ではほとんどの会社で対象外になってしまったのです。

そのため、今はタブレットやノートパソコンを補償されている保険会社でも、いずれは補償されなくなる可能性は十分にありえるでしょう。

ーでは家財に対する火災保険の補償対象とは、どのようなものなのですか

建物に収容されている動産（動かすことのできる財産）が補償対象です。おおむねテレビ、冷蔵庫、洗濯機などの家電、タンス、机や椅子、衣類などが当てはまります。

タブレットやノートパソコンについては、書面（重要事項説明書）内の「保険金をお支払いできない主な場合」にて、「移動電話等の携帯式通信機器、ノート型パソコン・タブレット端末等に発生した損害」と記載されていれば対象外です。ただ同じパソコンでも持ち運ぶことのないデスクトップパソコンであれば、補償されることが多いでしょう。

ーiPadやノートパソコンといったものの破損を補償してもらうにはどうしたらいいのでしょうか

購入した店舗や製造したメーカーが用意している保証を活用するしかないでしょう。火災保険の「破損・汚損などの補償」の場合、落とした時の故障や水没といった不測かつ突発的な事故の対応しかできません。しかしメーカーや店舗の保証であれば、通常使用時の故障でも対応可能で、火災保険よりも手厚い補償を受けられる場合もあります。

◆米谷武（よねたに・たけし）／損害保険代理業　大卒後、損害保険会社で22年間勤務した後、2020年より損害保険代理店へ転職。地域の中小企業経営者向けに、安定した経営ができるように【損害保険】を活用したサポートを行っている。保険会社勤務の経験を活かした「わかりやすい」提案が評価されている。プライベートでは5人の子を持つ父親で、地域の少年野球チームの代表者としても活動中。

（まいどなニュース特約・八幡 康二）