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全盲の元野犬 希望のリードに結ばれ保健所を巣立った 「どうかうちの子に」 やっとみつけた安息の場所

まいどなニュース / 2024年7月17日 17時30分

赤城山付近で暮らしていた「全盲の野犬」ノア

2024年初め、群馬県前橋市の保健所に収容された元野犬、推定10歳のオス犬・ノア。ノアは数年前から地域で見かけられ、畜産農家の方々がエサをあげるなどしてなんとか生き延びてきました。

それだけでも過酷な犬生ですが、ノアは全盲。何が原因なのかは分かりませんが、保健所に収容されてからのノアは全てに無反応で無表情。まるで「自らの犬生を諦めた」かのように見えました。

初めてリードの音を聞き、笑顔を浮かべた

新しい環境で絶望しているノアを見た保護団体・Delacroix Dog Ranch(以下、DDランチ)のボランティアさんは心を痛めました。そして、地域の人たちが守った命を救うため、ノアを保健所から連れ出すことを決意しました。

目の見えないノアは、ボランティアさんが手にしたリードの「カチャカチャ」という音を聞き、「外に出られるんだ」と初めて笑顔を浮かべました。その笑顔を見たボランティアさんは目頭が熱くなりました。「人間と生きる未来を見せてあげたい」「幸せな犬生を繋いであげたい」と強く感じました。

岩手県の保護シェルターが手を挙げた

ノアは全盲であるため、世話ができる預かりボランティアさんは限られています。DDランチはノアの預かり先を広く募集し、岩手県にある小規模の保護シェルターが「うちで世話します」と手を挙げてくれました。

保護シェルターの人たちの思いに心から感謝し、そして同じ気持ちを持つ人との出会いを喜びました。

「生きていてくれてありがとう」

ノアはDDランチがある茨城県から岩手県まで移ることになりました。しかし、ここでのノアは保健所にいた頃の暗い表情を見せず、希望に満ちた表情を浮かべていました。

岩手県の保護シェルターに到着したノアはうれしそうな表情を浮かべ、先住犬たちともすぐに意気投合。シェルターの人たちの世話を受けながら第二の犬生を始めました。

長年エサを求め彷徨っていたためでしょうか、ノアは食べ物への執着が強いですが、声をかけられるとうれしそうな表情を浮かべ、人間に体を寄せてゴロンと寝てしまうこともありました。

シェルターのメンバーは「そんなノアの寝顔を見ていると、『生きていてくれてありがとう』という気持ちでいっぱいになる」と言い、ノアの余生が優しさと愛情に包まれることを願いました。

10歳にして「生まれて初めてのお家」

シェルターで過ごしていたノアに、2024年春、ついに吉報が舞い込みました。「ノアを迎え入れたい」という里親希望者の申し出があったのです。ノアの全盲やその背景、性格をすべて理解した上での申し出でした。

一方、ノアは「全盲」「元野犬」「10歳というシニア犬」であるため、世話がかかることも予想されました。そこで、他のワンコ以上に長めのトライアルを実施することに決めました。一定期間を共に過ごした里親希望者は「大丈夫です。ノアをどうかうちの子にさせてください」「ノアの余生をうちで世話させてください」と決意を伝えました。

こうして、ノアは10歳にして「生まれて初めてのお家」を手に入れ、穏やかな余生を過ごすことになりました。多くの心ある人たちによる「命のバトン」がノアを次のステージへと導きました。ノアの穏やかな余生が1日も長く続くことを願うばかりです。

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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