更新される「過去最低」と「衝撃」 出生率1.20 「結婚しない若者」それとも「結婚後に子どもを持たない夫婦」のせい?
まいどなニュース / 2024年6月16日 18時0分
6月5日、厚生労働省の人口動態調査において、2023年の日本の出生率が1.20(概算値)であったと発表されました。過去最低の出生率と報道され、多くの人からの関心を集めています。
日本の出生率はなぜ下がり続けているのでしょうか。理由は大きく2つに分けられます。1つめの理由は、結婚に至るカップルが減っていることです。もう一つは、結婚後の夫婦が持つ子どもの数が少なくなっているのが理由です。では、これら2つの理由はどちらが、少子化の原因としてより重要でしょうか。
今までは、結婚するカップルが減っていることが、少子化の大きな原因だと考えられてきました。一方で最近は、結婚後に持つ子どもの数が減る影響も見過ごせないという議論があります。これらの議論を、データや先行研究をもとに紹介します。
出生率を引き上げるには、婚姻数や、結婚後の出生数が減ってしまう原因を整理していく必要があります。そして得られた研究成果を生かして、結婚・出生の行動を妨げない取り組みが求められます。もちろん、「子どもはいらない」「結婚は望まない」といった、多様なあり方を認める社会認識や制度は大前提です。そのうえで、少子化に取り組む方法について議論を進めなければなりません。
少子化の原因は?結婚か出産か
人口動態調査の結果をもとに、出生率に関するデータを見てみましょう。この記事では2つのデータを紹介します。1つめのデータは合計特殊出生率です。未婚者を含む、全ての女性が平均的に持つ子どもの数を表しています。ニュースでよく紹介される出生率はこの数値です。
2つめは有配偶出生率です。有配偶出生率は、配偶者を持つ女性が平均的に持つ子どもの数を示しています。既婚女性のみを対象としている点が、合計特殊出生率との大きな違いです。 2つの出生率の動きを比べやすくするために、配偶者を持つ女性の出生率を年齢ごとに足し合わせた値を、有配偶出生率としてこの記事では紹介します。
合計特殊出生率は1.75(1980年)から1.26(2020年)へと減少していることがわかります。それに対して、有配偶出生率は1.08(1980年)から1.74(2015年)へと上昇しています。データを見る限り、結婚後に持つ子どもの数は減っていません。少子化の主な要因は結婚に至るカップルが少なくなったことだと考えられてきたのです。
ただし直近の有配偶出生率は、1.74(2015年)から1.64(2020年)へと減少に転じているようにも見えます。実際に減り始めているか判断するには最新のデータを待つ必要があります。しかし、結婚後に出生数が減少したことも、少子化の大きな要因として考える方がよいでしょう。
日本の出生率を引き上げるには
日本の出生率を引き上げ、少子化問題が解決に向かうには何が必要なのでしょうか。
まず前提として、出生率を引き上げ若年人口を増やすのは長い時間がかかります。仮に今すぐに出生率が大きくなっても、若い世代の人口が増えていくには10〜20年といった長さの取り組みが必要です。さらに出生率自体が、今すぐ手をうっても急に上がるものではないと考えられます。
そのうえで、婚姻数や結婚後の出生数はなぜ減少するのでしょうか。出生率を向上させる政策を進めるためには、原因を整理しておくことが重要です。こうした課題に対して、数多くの研究が進められています。
たとえば婚姻数が減る要因として、賃金や年収、雇用形態、労働時間、親との同居などが強い影響を持つと多くの研究で示されました。近年では結婚支援の取り組みが、婚姻数の増加につながると示した研究もあります。一方で、結婚後の出生数は、晩婚化や経済負担の大きさに伴って減少すると分析した研究が多いです。保育環境が整備されていると結婚後の子どもの数が増加する傾向にあるとも明らかにされています。
出生数をあげて人口を増やしていく取り組みは、こうした知見を生かしつつ、息長く続ける必要があります。長い時間がかかっても、子どもを持つのを妨げるような制度を見直していくことが、私たちのとり得る解決策でしょう。場当たり的に対策するのではなく、研究成果をもとにしながら、優先順位をつけて制度の見直しや政策を進めることが大切です。
【参考】
▽厚生労働省「人口動態調査」
▽国立社会保障・人口問題研究所「人口資料統計集」
▽内閣府ESRI Research Note「少子化対策と出生率に関する研究のサーベイ」
◇ ◇
◆新居 理有(あらい・りある)龍谷大学経済学部准教授 1982年生まれ。京都大学にて博士(経済学)を修得。2011年から複数の大学に勤め、2023年から現職。主な専門分野はマクロ経済学や財政政策。大学教員として経済学の研究・教育に携わる一方で、ライターとして経済分野を中心に記事を執筆している。
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