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質問に答えるだけ、AI提案のオリジナルカクテルは粋な一杯 人と話しているような気遣いにも驚き 岡山のバーで記者が体験

まいどなニュース / 2024年6月19日 16時0分

AIでカクテルを提案するサービスを導入した柿木さん

 バーテンダーと会話しながら、その時の気分にぴったりのカクテルを味わうのはバーの醍醐味(だいごみ)の一つだ。その役割を対話型人工知能(AI)「チャットGPT」が担う全国的にも珍しい店が岡山市にあるという。満足いく一杯を本当に提供してくれるのか。記者(30)が体験してみた。

 夕焼けを閉じ込めたような色合いにくぎ付けになった。爽やかな香りに胸が高鳴る。口に含むと、酸味と甘みのバランスが絶妙だ。

 「おいしい」―。

 訪れたのは奉還町商店街にある「KAKKY’S(カッキーズ) BAR」。経営するバーテンダー柿木将志さん(37)が「AIカッキー、おいしいカクテル作ってね」とタブレットに話しかけると、すぐさまAIによる接客が始まった。

 「お帰りなさい。きょうはどんなことがあったのか教えてください」。映画俳優のようなダンディーな男声で流ちょうに話しかけてくる。まごつく記者に、柿木さんが「何でも答えてみてください」と教えてくれた。

 記者がJR岡山駅近辺での取材を終えてから訪れたことを伝えると「取材、お疲れさまでした! 大変だったでしょう」とねぎらいの言葉。人間と話しているような気遣いに驚いたが、素直にうれしい。

 次の質問は今の気分や言いたいこと。「6月から担当紙面が変わって慣れないことが多く大変」とこぼすと「新しい職場に慣れるのは時間がかかりますよね。でも、きっと徐々になじんでいけますよ」と励ましてくれた。

 その後も誕生日や最近ハマっている映画といった質問に答えると「あなたにぴったりのオリジナルカクテルを作ってみましょう!」。ものの20秒ほどで「ロハンの夕暮れ」という名の一杯を提案し、作り方や配合を読み上げた。

 今度は柿木さんがレシピに従って腕を振るい、黄色と赤色の2層が美しいグラスが目の前に。ウイスキーとレモンジュースを合わせ、グラスの底にザクロシロップがたまっている。すっきりした飲み口が続き、最後に濃厚な甘みが広がる。飲み干した時には、AIの実力を疑う気持ちはすっかり消えていた。

 AIにはジン、クラフトビール、ウイスキー、日本酒など約700種類に上る店のメニューと、インターネット上にある膨大なカクテルのレシピがインプットされている。質問は、きょうの出来事▽今の気分や言いたいこと▽誕生日▽最近ハマっている映画やドラマ―の四つ。客とのやりとりの中から、気分や誕生日の季節に応じた味や色のカクテルを導き出すという。何とも不思議だ。

 記者と同じく初めてAIを使って注文したという公務員女性(57)=倉敷市=は「これほどおいしいとは思わなかった。会話も楽しいし、仕事の疲れが吹き飛んだ」と笑顔を見せた。

 ちなみに記者のカクテル名は、最近ハマっているドラマ「岸辺露伴(ろはん)は動かない」から取ったよう。粋な名前にも味わいにも大満足だ。近い将来、バーテンダーとAIが手を携えるのが当たり前になるかも。未来が注がれた一杯だった。

話題性、接客の補助役にも

 「新しいことに挑戦し続けないと自分の店もなくなってしまう」

 柿木さんがAIでカクテルを提案するサービスを導入した背景には、新型コロナウイルス禍で多くの同業者が閉店に追い込まれた危機感があった。

 デジタル技術を使った飲食業の効率化に元々関心があり、客に興味を持ってもらえる話題性も兼ね備えたAIカクテルに着目。IT企業を経営する知人と共同でサービスを開発した。1月の導入後はAIとのやりとりを目当てに来店する人も徐々に増えてきたという。

 客が多い日は接客の補助役としても力を発揮していて「忙しくても人を増やせる規模ではない店にとって、AIは大きな可能性を秘めている」。今後もバージョンアップを加えて質問や会話の幅を広げ、機能を強化する考えだ。

(まいどなニュース/山陽新聞)

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