「名札」を変えた「ローソン」、その反応は? カスハラおそれて本名を知られたくない傾向に…名札が大事な理由とは
まいどなニュース / 2024年7月16日 7時5分
近年問題になっている、顧客による迷惑行為「カスタマーハラスメント」。厚生労働省も「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を策定するなど、企業側の対応も急がれています。
そのなかで注目を集めているのが、スタッフ・社員の実名表記。今年6月から導入したコンビニ大手の「株式会社ローソン(本社:東京都品川区)」も名札についての規定を変化。その経緯と反応を取材しました。
名札を通じて名前を公表することはカスタマーハラスメントだけでなく、実名登録を条件としたFacebookをはじめとするSNSで個人情報を探られるなど、ストーカー行為につながる危険性もはらんでいます。フリーランス、作家、芸術家であれば、自身の活動名を選ぶことができますが、企業や店で従事する場合はそうはいきません。
2023年8月1日に、旅客自動車運送事業運輸規則の一部が改正され、バス・タクシー・自家用有償旅客運送において、車内での乗務員等の氏名などの掲示義務は廃止に。これを踏まえ「京王バス」では、4月1日から現在の「本名」表示に加え、乗務員自身考案の「ビジネスネーム」を導入し、乗務員自身の任意に。乗務員のプライバシー確保とともに、顧客側から企業グループへより愛着を持ってもらうためとしています。 そして、大手コーヒーチェーン「タリーズコーヒー」も2023年5月から、実名だった名札の表記をイニシャル表記へ変更するなど、「実名表記」についての変化が増えてきました。
今年初頭に、あるローソンの店舗で偽名とわかる名札をつけているのがSNSで話題となり、本社に問い合わせた際は店長の裁量で行っていたため、本社としてのコメントが難しいとのことでした。が、6月4日から、店舗スタッフが着用する名札の表示内容の見直しが行われ、それまでの実名表記に加え、アルファベットによる任意の文字やイニシャルでの表記が可能に。広報担当者にその理由などを聞きました。
「安心して働くことができる環境を…」
――どのような意図で名札表示の見直しが行われたのでしょうか
「昨今急増しているカスタマーハラスメントから、店舗従業員を守り、安心して働くことができる環境を整備するためです。プライバシー保護などの観点を鑑みて総合的に判断しました」
――どのような表記が可能になったのでしょうか
「今までは原則として実名(苗字)表記を基本としていましたが、今後は「役職+任意のアルファベットまたはイニシャル」表記を可とします」
――実名かアルファベット表記かは、従業員の方が選択できるのでしょうか
「従業員個人の意向を確認し、最終的には店舗判断による選択となります」
――名札そのものの廃止は考えられなかったのでしょうか。
「もともと名札は、お客様に店舗従業員を認識していただくツールとしてつけています。認識していただくことでお客様と店との間に接点が生まれる、との考えから、名札の廃止は考えませんでした」
――導入後の反応を教えてください。
「店舗側からは、賛同の声を多数いただきました。また、お客様からもSNSを通じて、「素晴らしい」「スタッフの安心につながる」など多くの肯定的なご意見をいただいております」
――カスタマーハラスメント対策として、ほかの取り組み等などあればお教えください
「悪質なカスタマーハラスメントなど店舗での解決が難しい事案は、本部も共に対応する仕組みとなっています。また、お客様コンタクトセンターの電話対応においてはガイドラインを設け対応者を守る仕組みを作っています。今後も店舗で働く方々が働きやすい環境整備を推進してまいります」
◇ ◇
こういった実名表記への変化に対して、SNSでは、「身バレしなくていい」「私の会社もそうしてほしい」と多くの賛同に加えて、「「クルーB」って書いてある店員の名札を見て、名前じゃなくなったという変化が嬉しい」という声もありました。
カスハラの実態についての調査によると(※1)実名を出さない取り組みに向け、賛成派・どちらかというと賛成派はあわせると約7割。その理由として、「本名を覚えられると、仕事以外の場面でも厄介なことになりそう」「看護師をしているが、実名フルネーム+顔写真の名札をつけている。患者さんにその気がなくても、こちらの個人情報が出る危険もあるので不快」といった意見も。
逆に反対派は、「名前がわからないとクレーム入れることが出来ない」「名前を示すことで責任を持って職に当たってもらいたい。カスハラではなく、純粋な苦情や褒めたい投書等もある」のようにクレーム・賛辞どちらであっても実名表記が欲しいという意見もありました。しかし、その場合は店舗名・時間・名札表記で十分と言えるのではないでしょうか。
また、名札をつけての接客でカスハラ被害にあった人は2割。「クレーマーに名前を覚えたからな、と言われた」(40代・男性)「休暇の日に探されて、近所で後をつけられた」(30代・女性)「名指しで接客の指名をされ、執拗に責められた。また、何度もデートに誘われて連絡先を渡された」(30代・女性)と本名を知られる怖さがうがえます。
社会問題にまで発展しているカスタマーハラスメント。自分自身の行動も、店舗やスタッフに対して過剰な要求をしていないか、一度立ち止まって考える必要がありそうです。
(※1)接客スタッフの名札に実名を出さない取り組みやカスハラの実態について調査
調査機関:弁護士ドットコム一般会員を対象
調査方法:弁護士ドットコム一般会員を対象にウェブアンケートを実施
調査対象:弁護士ドットコムの一般会員で回答が得られた717名
調査期間:2023年8月10日~29日
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・福尾 こずえ)
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