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平家物語、江戸の大和絵とアニメが共演 アニメ制作プロデューサーが語る絵巻とアニメの魅力「大画面でバンッ」「メリハリのあるコマ割り」

まいどなニュース / 2024年7月12日 16時0分

「江戸時代の平家物語絵巻がこれほど精緻で色鮮やかだとは思わなかった」と語った有田さん

 武家として初めて政治の頂点に上り詰めた平家一門の興亡を哀切に描き、今も日本人の心を魅了する「平家物語」。その世界を優美な大和絵で表現した江戸前期の「平家物語絵巻」を現代のテレビアニメと共演させる展覧会が、絵巻を所蔵する林原美術館(岡山市北区丸の内)で開かれている。源平の戦乱を背景に紡がれる「諸行無常」の物語を、古今のクリエーターはいかに“ビジュアル化”したのか。アニメ「平家物語」のプロデューサーで、展示にも協力した有田真代さん(39)と会場を巡った。

 冒頭を飾るのは「祇園精舎の鐘の声…」で始まるおなじみの文章。絵巻の上質な料紙にみやびやかな線が舞い、勢力を拡大する平家を倒そうと、後白河法皇や近臣らが京都・鹿ケ谷で謀議する場面へと続いていく。越前松平家の婚礼調度品として土佐派の絵師が手がけた品で、わが国に現存する唯一の完本。初めて見たという“実物”に「精緻で色鮮やか。着物や牛車の模様まで、現代のアニメーターも卒倒するほどの細かな仕事」と有田さんが目を見張った。

 アニメ「平家物語」は、2022年にフジテレビ系で放映。作家古川日出男さんの現代語訳を基に、歴史家の最新研究を踏まえて製作された。「戦に向かう男たちだけでなく、その家族の心情にも寄り添った」と話す有田さん。「表現技法こそ違うが、人間ドラマを意識させる点は絵巻もアニメも同じ。一人一人の表情や所作から、清盛という圧倒的な存在に翻弄(ほんろう)される人々の心情が伝わってくる」

 展示で物語を追う中で「やっぱり“サビ”はここ」と足を止めたのは、平家打倒に立ち上がった以仁王(もちひとおう)の兵が宇治川を隔てて平家側と向かい合う「橋合戦」のシーン。「橋から川へと戦いの場が移っていく様子を複数のカットで描き、臨場感がある」という。押し寄せる軍勢、荒々しい波の描写も戦いの熱気を感じさせる。

 平家軍が水鳥の羽音を源氏の襲来と勘違いして逃げ出す「富士川の事」にも着目。平家の没落につながる重要な場面だけに、2枚の料紙を継いだ絵のスケール感が際立つ。「限られた縦幅に飛び立つ鳥や逃げる人々、富士山まで入れたカメラワークの自在さが面白い」と有田さん。「一つの絵を分割して時間の経過を表現したり、富士川の戦いのように大画面でバンッと見せたり、メリハリのあるコマ割りは漫画を思わせる」と見入っていた。

 会場を巡りながら、有田さんは、長さが計940メートルにも及ぶ絵巻のボリュームをしきりに口にした。「30分のアニメを11話作るだけでも途方もない作業。きっと『まだ2巻かー』とか言いながら作っていたんでしょうね」と江戸時代の制作現場に思いをはせ、保管用の黒漆塗りのたんすにも「私たちが頑張って作っている豪華ブルーレイボックスの源流を見たよう」と感嘆。「絵巻が特別なもので、大切に受け継がれてきたことが実感できました」とほほ笑んだ。

 同展のPARTIは8月4日までで、平家の栄華を中心とした前半部分を絵巻やアニメ映像、パネルで紹介している。PARTII「源氏の躍進」は同10日~9月16日。月曜(祝日の場合は翌日)休館。

 アニメ「平家物語」は、フジテレビの公式動画配信サービス「FOD」などで配信中。

(まいどなニュース/山陽新聞)

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