「スマホがあればいつでもどこでもギャンブルできる」 公営競技の売り上げ増加、でも「行政の依存症対策進んでいない」
まいどなニュース / 2024年7月17日 8時0分
新型コロナウイルス禍の巣ごもり需要でギャンブルのオンライン化が浸透し、依存症になる人の低年齢化が進んでいる。競馬やボートレースなど公営のギャンブル(公営競技)の売り上げは右肩上がりで、行政はさらなる収益向上を目指す。大阪府でカジノを中心とする総合型リゾート施設(IR)の計画も進む中、依存症の支援団体は「行政の依存症対策が全く進んでおらず、苦しむ人が増えるばかりだ」と危機感を強めている。
依存症の当事者や支援者でつくる「ギャンブル依存症問題を考える会」(東京都)の調査によると、家族からの相談件数は、2019年は188件だったが、23年は479件とコロナ禍以降、2・5倍に増えている。当事者の年齢も、19年は20代~30代が54%だったが、23年には78%にまで増えた。特に20代が増えており、低年齢化が顕著だ。
スマホで手軽に
同会は「スマホ1台あれば24時間365日いつでもどこでもギャンブルができる環境になり、若者があっという間に依存症になってしまっている」と指摘する。借金の平均額も、19年は550万円だったが、23年は855万円と増加しており、重症化が進む。
スポーツ賭博を含むオンラインカジノの相談も19年の8件から23年は97件と10倍以上に増加。同会は22年6月に、オンラインカジノ対策の新法成立を求める要望書を国に提出している。
公営競技が増収
日本特有の課題に、公営競技の多さがある。地方自治体などが運営する競馬、競艇、競輪、オートレースが全国で100カ所近くあり、オンラインで簡単に賭けることができる。コロナ禍で開催会場の入場者数は減ったにもにもかかわらず、売上高は右肩上がりだ。考える会は「ギャンブル依存症というとかつては、パチンコ・スロットの問題だったが、今はオンライン化の影響で公営競技の存在感が増している。ほとんどなかった競輪やオートレースの相談も増えている」と明かす。
一方、各自治体にとって収益向上はそのまま税収につながるため、集客アップに余念がない。県営競艇場「ボートレースびわこ」がある滋賀県は、23年度に競艇を担当する部署を課から局に格上げし、マーケティングを強化している。
23年度の売り上げは735億円で、前年から約40億円増えて過去最高を更新。県は独自に動画サイトの公式チャンネルで全レースを中継するなど、利用者拡大を図った。県予算の一般会計への繰り出し金も増えており、乳幼児の医療費助成や県立高校舎の改修費などに充てている。
一方で、県立精神保健センターなどに寄せられるギャンブル依存症の相談も急増。21年度は537件と17年度から3倍超になった。県は売上金の一部を予算に充て、対策に乗り出す。
京都府内でも、廃止を含めて検討されていた京都向日町競輪場(向日市)が、コロナ禍以降の売り上げが好調として、存続が決定。大阪府でもIRの30年の開業に向け、計画が進む。
「考える会」の田中紀子代表は「行政の依存症対策は口先だけで全く進んでおらず、そもそも、国や自治体の財政をギャンブルでまかなおうとする姿勢自体、問い直すべきだ。水原一平さんの違法カジノ問題は対岸の火事ではなく、国内でも依存症は深刻さを増している」と警鐘を鳴らす。
コロナ禍で時間と退屈埋めたかった
京都市内の自助グループに通うケンさん(25)=仮名=も、コロナ禍で公営競技やオンラインカジノにはまった一人だ。大学時代、パチンコやパチスロに通っていたが、コロナで行けなくなった。大学の授業もリモート、バイトもなくなり、あり余る時間と退屈を埋めるために、スマートフォンを使って競馬を始めた。
ところが競馬は頭数が多くて当てるのが難しく、選んだのが6艇で競うボートレースだった。ボートは毎日午前8時半から約13時間、切れ目なくレースが行われていた。授業をリモートで受けながらも、一日中ボートレースに明け暮れた。すぐに金に困り、消費者金融や友人から借金した。
就職すると、賭ける金は一気に増え、仕事中も、トイレや移動する車の中で賭け続けた。ボートが終わると、午後11時ごろまでやっている競輪。競輪も終わるとオンラインカジノ。寝る間も惜しんだ。消費者金融やクレジットカード、後払いのアプリ、友人…。借り先がなくなるとヤミ金にも手を出した。
昨年6月。給料日の夜に全額をオンラインカジノに使い果たし、「自分の力ではどうにも止めることができない」と自覚せざるを得なくなった。すべてを家族に打ち明けると、かえって心は楽になり、自助グループにもつながることができた。
ケンさんは「食事もできず、夜も眠れず、借金をどうごまかそうかと常に頭がいっぱいだった。ギャンブルが楽しくないのにやめられなかった。今はやらずに正直に生きようと思える」と固い決意を語った。
(まいどなニュース/京都新聞)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
29歳息子の70万円を肩代わり…あとから800万円以上もの借金が判明 「ギャンブルは二度としない」に裏切られた母の行動、その結末は?
まいどなニュース / 2024年7月16日 8時0分
-
「すべての優先順位が金だった」ギャンブル依存症から借金、犯罪に結びつきやすく
まいどなニュース / 2024年7月14日 10時30分
-
六角精児 学生時代からギャンブルで借金生活 一時は落ち着くも…MAX借金額に川島明驚き
スポニチアネックス / 2024年7月13日 19時1分
-
血が沸騰したエリザベス女王杯 奨学金を競馬に突っ込み就職後も膨らむ借金 「今すぐ金」追い詰められた男性は特殊詐欺に受け子になった
まいどなニュース / 2024年7月13日 8時0分
-
長男が私立高校に合格したら夫が泣き出した!? ギャンブル依存が判明して「入学金が払えない」
オールアバウト / 2024年7月12日 22時5分
ランキング
-
1ドラマ「西園寺さん」ヒットの予感しかない3理由 「逃げ恥」「家政夫ナギサさん」に続く良作となるか
東洋経済オンライン / 2024年7月16日 20時0分
-
2「これは奇跡...」破格の1人前"550円"寿司ランチ。もうこれ毎日通いたい美味しさ...。《編集部レポ》
東京バーゲンマニア / 2024年7月16日 7時2分
-
3月々のスマホ代を「高いと感じる」…「2000円もすることに驚いた」「安いプランなのに高い」格安プランに乗り換える?
まいどなニュース / 2024年7月16日 19時45分
-
4丁寧な言葉遣いで一見おとなしい人ほど陰湿攻撃がエグい…「目に見えない攻撃」を繰り出す人「6パターン」
プレジデントオンライン / 2024年7月16日 15時15分
-
5夏本番となり職場や電車内などで発生する「ニオイ問題」 揉めるぐらいなら我慢したほうがいいのか、解決策は「ない」という現実
NEWSポストセブン / 2024年7月16日 16時15分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)