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認知症の高齢女性と暮らす犬を保護 ご飯を分け合って食べていた…ガスも止められ蒸し暑い室内で保護団体が目にしたのは

まいどなニュース / 2024年7月29日 11時45分

認知症によりお世話が困難な高齢女性の愛犬(「おっぽの会」さん提供、Instagramよりキャプチャ撮影)

「全国で驚異的な猛暑
熱中症で人もたくさん運ばれた日
行政からひっ迫した電話がありました

身寄りのない高齢女性
認知症により、
一人で暮らすことが困難な状態 

ヘルパーさんが毎日
お弁当を届けているそうですが
エアコンは故障中
扇風機なし
そして驚くべきは
同じく高齢と見られる犬がいて
とてもじゃないが
お世話も厳しい状態だと。」

7月初旬、静岡県伊東市の社会福祉課から「身寄りのない高齢女性を施設へ入れたいが、飼っている高齢の犬の行き先がない」と、地元の動物保護団体「おっぽの会」に相談がありました。高齢の犬は、ダックスフンドのラーちゃん(雄)。ラーちゃんをレスキューするため、「おっぽの会」のメンバーたちが現場に足を運ぶと、想像を絶する環境を目の当たりにしたといいます。

部屋にいるだけでめまいの起こる暑さとにおい…少ないご飯を分け合って命をつないでいた

「ガスが止まり、エアコンが壊れた蒸し暑い室内に、認知症の高齢女性と犬1匹の暮らし。部屋にいるだけでめまいの起こる暑さとにおい…ヘルパーさんが掃除してくれているとは聞きましたが、ラーちゃんのトイレは、キッチン床に敷かれた新聞紙の上のようでした。さらに、えさ箱には虫が集まっていて。一緒に寝てると言ったベッドの足元には、小さなお弁当の空箱。届けられる一日一食の少なすぎるご飯を一人と1匹で分け合って命をつないでいました。そんな息をのむような現場だったんです」

「おっぽの会」のメンバーたちが飼い主の高齢女性と言葉を交わしたところ、ラーちゃんの年齢も分からなくなっていたとのこと。ただ「この子がいるだけで幸せなの」と何度も言ったそうです。お世話も厳しい状態でしたが、そこにはラーちゃんへの“愛”がありました。

「飼い主さんにとって、ラーちゃんは十何年支え合ってきたかけがえのない家族です。少ないご飯をふたりで分け合って、寝る時も一緒。『この子がいるから生きている』とおっしゃっていました。愛はあるのだけれども、病気が、貧困が、お世話をままならなくさせている。愛はあるからと言って、このまま誰も何もしなければ飼い主さんにもラーちゃんにも命の危険がすぐそばまで確実に迫っていました」

そんな高齢女性とラーちゃんの深い絆を感じたという「おっぽの会」のメンバーたち。ラーちゃんのレスキューに訪れたものの、ふたりを引き離すことに最後まで心が揺れました。

手放したくない高齢女性 レスキュー時犬は怒り抵抗

「行政と私たちと飼い主さんのやり取りの中、どう声掛けすべきかか分からない瞬間も正直たくさんありました。手放したくて手放すわけじゃないからです。最終的には飼い主さんもラーちゃんも、とにかく今よりも涼しいところできれいにもして、おいしいものも食べられるようになるから…とレスキューに至りました」

レスキューの際、クレートに入れようとするとラーちゃんは怒りかむ仕草をして、逃げました。急に来た知らない人たちに連れて行かれる…心が張り裂けそうになりながらもラーちゃんを無事保護することができました。

「私たちは、良いことをしたようで本当によかったのかは分かりません。助けたようでこれからラーちゃんを大好きなお母さんがいない、という絶望に突き落とすのかもしれない。誰にとって何が正解だったのか、分かりません。ただ飢えるほど自分の生活がままならない状態で他の命を抱えていたという現実…その結末として『最悪』は免れましたが…これが最良でもありません。あらゆる選択肢の中での命を守る苦渋の決断でした」

  ◇  ◇

高齢者のペット問題 動物保護団体「この先起こりうるリスクを考慮、飼育しないという選択も必要」

高齢女性は、ラーちゃんのレスキューの翌日無事に施設に入居したとのこと。現在ラーちゃんは保護したシェルターにて適切な医療をかけられ、生活リズムを整えて環境になれるために頑張っており、里親さんも募集しているそうです。

今回ラーちゃんをレスキューした「おっぽの会」。ラーちゃんの元飼い主である高齢女性のようにペットを飼っている身寄りのない独り暮らしの高齢者が病院や施設に入らないといけない。ペットをどうしたらいいのか…そんな現実に直面する高齢者のペット問題が増えているといい、こう訴えます。

「ラーちゃんのような事例は、まれなケースではありません。だからといって、高齢者はペットを飼育してはいけないのでしょうか?と多くの方が問われます。ラーちゃんの飼い主さんのように飼育して結果的に、愛していても、望んでいないのに引き裂かれることもありますし。また親族も引き取れない、飼ってもらえる人を探してもいつまでも見つからないというケースも。だからこそ、自分たちの体力や経済力、この先起こりうるリスクを考慮して飼育しないという選択も必要だと考えます」

「おっぽの会」は、静岡県伊東市で動物保護シェルターを運営。犬猫の保護活動を取り組んでいるとのこと。ブリーダーからの繁殖引退犬猫や持病・障害のある仔犬・仔猫、保健所からの引き出しの犬猫一般家庭から飼育放棄された犬などを引き取り医療を掛けて里親さま探しをしているそうです。

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)

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