150万円の衝撃 30代の家庭が持つ金融資産の中央値 老後に備え20代をどう過ごす?【FPが解説】
まいどなニュース / 2024年8月10日 11時45分
金融広報中央委員会がこのほど公表した2023年の「家計の金融行動に関する世論調査」では、二人以上世帯における、世帯主の年齢別にまとめた金融資産保有額が紹介されています。
金融資産を保有している世帯のみの平均値と中央値は以下の通りです。
20歳代 平均値:403万円、中央値171万円
30歳代 平均値:856万円、中央値337万円
40歳代 平均値:1236万円、中央値500万円
さらに、金融資産を保有していない世帯も含めた場合のデータは以下の通りです。
20歳代 平均値:249万円、中央値30万円
30歳代 平均値:601万円、中央値150万円
40歳代 平均値:889万円、中央値220万円
そもそも中央値とは、金融資産保有額が全体の中間に位置する金額を指します。つまり、その世代の半数が保有する金融資産は、中央値以下の金額であると言えます。
中央値と平均値が大きく異なるのは、3000万円以上の高額な金融資産を保有する世帯が存在し、その影響で平均値が押し上げられているためです。
よく老後の生活のためには2000万円が必要であると耳にしますが、この統計データを見ると「果たして自分は大丈夫なのだろうか」と心配になる人もいるでしょう。そこで各世代での備えについて、ファイナンシャルプランナーの篠田彰輝さんに話を聞きました。
ー各世代の金融資産保有額についてどのように感じられますか
とくに金融資産を保有していない世帯も含んだ場合のデータは、実際に各世代のお客様と接している感覚と一致しているように思います。20代の世帯では、老後資金というのはまだまだ実感がなく、今から準備しなければならないと考えている人は少ないです。貯めるよりも、旅行や趣味など、自分たちの経験のためにお金を使おうとする人が多い印象です。
30代になると、子どもが生まれたりするなどして、将来を考え資産形成を考える人が増えてきます。ただ、老後資金を見据えてというよりは、子どもや家族のためにお金を貯めようという話が多いです。20代と比べると保有額は増加していますが、どちらかといえば教育費など、近い将来に備えた資産なのではないでしょうか。
40代になると、自分たちの親世代が老後の資金を使用する場面に直面します。そこで自分たちも老後資金を考えなければならないと考え、相談を受けることが増えます。子どもの教育費なども益々必要になる世代ではありますが、自分たちの老後も考え、貯蓄志向は高まる印象を持っています。
この調査結果の金額をみると、そのような背景があるのではないかと考えています。
ー老後資金を見据えて、各世代はどのようにすればいいのでしょうか
大前提として、老後資金を考えるのは少しでも早い方がいいです。ただし、老後資金ばかりを求めて、目の前の生活をないがしろにするのはよくないでしょう。
そこで、貯蓄の目的を短期(10年以内)中期(10年〜20年)長期(20年以上)に分けて考えることをおすすめしています。世代にもよりますが、短期で車や家の購入を想定した貯蓄、中期で子どもの教育費を考えます。長期でその先の老後資金を想定するということになるでしょう。
20代の方が相談に来られた場合、老後のことをリアルに考えている人とはほとんど出会いません。それよりも短期や中期に関する相談が大半です。なので、20代の方には老後のことは一旦脇におき、短期と中期について考えることを提案しています。
30代になって老後資金について考えはじめる人が増え始めるので、そこで老後資金についての積み立てを提案することもでてきます。40代はリアルに親世代の老後を見ているので、具体的な老後資金の作り方を考える人が増加します。
老後資金について各世代で考えるべきことをまとめると、20代は老後資金が必要であることを認識すること、30代は実際に積み立てを検討すること、40代になって具体的に老後資金を準備し始めればいいと考えています。もちろん早く準備できるなら、そのほうがいいです。
ー老後資金を重視すると、住宅費や教育費を抑えることにならないのでしょうか
そのために短期・中期・長期に分けて貯蓄を考えるわけです。例えば、住宅購入を考える際、以前は頭金が必要だったため、まとまったお金を用意する必要がありましたが、現在は全てをローンで賄う「フルローン」を選ぶことも可能です。フルローンを選べば、賃貸で家賃を払う感覚に近くなるので、貯蓄の対象から外して考えることもできます。
教育費についても、子どもが何歳になればどれくらい費用がかかるかを理解して、そのタイミングに合わせたプランニングを考えます。貯める以外にも、教育ローンや奨学金という選択肢もあります。国が進める教育無償化も合わせて考えると、もしかしたら教育費のための貯蓄はそこまでいらないというケースもありえます。
一旦、老後資金として積み立てておいて、必要に応じて取り崩すというのもひとつの方法です。基本路線として老後資金を確保するための長期を確保したうえで、中期、短期を考えるのがおすすめです。
◆篠田 彰輝(しのだ・あきてる)2級ファイナンシャル・プランニング技能士 小・中学生3人息子を持ち、自身の体験も踏まえたライフプランニングが好評。また趣味である落語をビジネスに活用するセミナーも実施している。
(まいどなニュース特約・八幡 康二)
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