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実感はないけれど… 家計消費が1年ぶりに回復、給与も3%以上増加 最新の4〜6月期GDP速報から見る「私たちの暮らし」

まいどなニュース / 2024年8月28日 20時0分

最新のGDP速報では、経済活動が上向きな様子が見えてきます(Monet/stock.adobe.com)

8月15日に、今年4〜6月におけるGDP(国内総生産)の速報値が発表されました。GDPは日本国内で商品が取引された額を表し、経済の活発さを測る指標として用いられます。「名目GDPが600兆円に達した」と各社の報道でも報じられており、日本の経済活動が少しずつ順調に成長しているように見えます。

GDP統計が教えてくれるのは、商品の取引額だけではありません。家計が消費のためにどれだけ商品を購入したのかや、受け取った給与の大きさも知ることができます。GDP統計を使って日本経済の様子を調べながら、政府の財政運営や日本銀行の利上げ・利下げも議論されているのです。

家計の消費が1年ぶりに増加 実質GDPもプラス成長へ

8月15日に発表されたGDP速報によると、4〜6月の実質GDPは558.6兆円と、1〜3月の3ヶ月間の556.3兆円と比べて0.8%ほど増えました(金額はいずれも年換算)。わずかしか増えていないように見えますが、このペースで取引が増え続けると1年間でGDPが3.1%拡大すると見込まれています。昨年末と比べると、GDPが減少から増加に転じて順調に大きくなっていると言えます。

ちなみに「実質」とは物価が変わる影響を取り除いたという意味です。実質GDPが大きくなっていれば、実際に取引された量そのものが増えていると解釈できます。

経済において商品が活発に取引されたということは、誰かがお金を払ってその商品を購入しているはずです。GDP統計を見ることで、誰がどれだけの商品を購入したのかも調べられます。たとえば、家計が消費のためにどれだけの商品を購入したのか見てみましょう。

家計がどれだけ商品を購入したかは、「家計最終消費支出」の金額を見ると分かります。実質で見た支出額は289.7兆円と、1〜3月期の286.8兆円と比べて1.0%増加しました(金額は年換算)。2023年は家計の消費が落ち込み続けていましたが、そこから増加に転じています。家計がより多くの商品を購入できていると解釈でき、経済活動が活発になりつつあると分かるでしょう。家計が消費のために支出する金額は、GDPの取引全体の半分〜6割を占めており、経済活動に大きな影響を与えます。

また、商品を購入するのは消費者だけではありません。企業が将来のビジネスに向けて商品を買う場合も多々あります。こうした活動は「投資」という形で、GDP統計では扱われています。企業の設備投資は、1〜3月期と比べて0.9%増加しました。企業の投資は景気が良いときに上がりやすく、不況では落ち込みやすいことが知られています。

新築の住宅がどれだけ注文されたかを示す民間の住宅投資も、減少から1.6%の増加に転じました。マイホームを建てると、それに伴ってさまざまな工事や家具・家電などの購入が生じます。住宅投資は経済活動に与える影響が大きく、重視される指標です。

これら投資の増加は経済活動の回復を表していると解釈できます。投資は今後の経済成長の基盤となるため、プラスとなる動きが今後も続くかどうか注視する必要があるでしょう。

家計の所得も高まり続けている

2024年4〜6月期には、実質の雇用者報酬は1〜3月期と比べて0.8%上昇していました。年あたりに直すと3%以上平均的な給与が増えるペースとなり、大きな成長です。雇用者報酬は生産活動を通じて、従業員が受け取る給与がどれだけあったかを表します。GDP統計を通じて、私たちが受け取った所得の大きさも知ることができるのです。

ただし、雇用者報酬が増えているからといって、個々人の給与も必ず増えるとは限らない点には注意が必要です。働く分野や雇用形態、働き方によって、給与の動きは大きく異なります。雇用者報酬は国民が受け取った給与の総額を表しているにすぎません。日本経済全体で所得がきちんと増えて行く方向にあるか、を見るうえで役に立つ指標です。

雇用者報酬は個人が受け取る給与だけでなく、社会保険料の企業負担分も含んだ指標であり、経済活動の動きを把握する上で重要です。雇用者報酬が安定して増えていれば、消費者の購買力が強まり、経済全体の持続的な成長を後押しすると考えられるからです。今後の財政政策や利上げを検討する際に、「きちんと賃上げが進んでいるか」がよく論点になります。賃上げが進んでいるかを判断するうえでも、これからの雇用者報酬の動きに注目です。

【参考】

▽内閣府「四半期別GDP速報 2024年4-6月期・1次速報(2024年8月15日)」

   ◇   ◇

◆新居 理有(あらい・りある)龍谷大学経済学部准教授 1982年生まれ。京都大学にて博士(経済学)を修得。2011年から複数の大学に勤め、2023年から現職。主な専門分野はマクロ経済学や財政政策。大学教員として経済学の研究・教育に携わる一方で、ライターとして経済分野を中心に記事を執筆している。

◆新居 理有(あらい・りある)龍谷大学経済学部准教授 1982年生まれ。京都大学にて博士(経済学)を修得。2011年から複数の大学に勤め、2023年から現職。主な専門分野はマクロ経済学や財政政策。大学教員として経済学の研究・教育に携わる一方で、ライターとして経済分野を中心に記事を執筆している。

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