「鈴鹿山系の天然水」をレインボーデザインに 100円自販機のチェリオ 性的少数者への理解浸透に取り組む理由
まいどなニュース / 2024年9月1日 7時0分
100円の自動販売機でおなじみの「チェリオコーポレーション」(京都市南区)が、LGBTなど性的少数者への理解促進に力を入れている。啓発イベントの協賛からスタートした取り組みは社内に浸透し、就業規則の見直しや商品を通じた発信へとつながった。「CHANGE WITH CHEERIO」をコーポレートスローガンに掲げる同社の活動を取材した。
「ライフガード」や「スィートキッス」などの清涼飲料で知られる同社は、1961年に大阪府高槻市で創業した。2015年に工場を東近江市に、19年に本社を京都市南区に移転。現在は東海、関西、沖縄エリアに自販機計3万台(府内は1700台)を置くほか、全国の小売店でオリジナル飲料を販売している。
同社が性的少数者と関わることになったきっかけは2013年、菅大介社長(43)とトランスジェンダーの友人との再会だった。ちょうど友人が性的少数者の権利向上を目指すイベント「東京レインボープライド」の共同代表に就任したタイミングと重なり、同社も協賛企業として参加。今でこそ協賛には多くの企業が名を連ねるが、当時は海外企業ばかりで国内は同社だけだったという。
人口の10%弱を占めるともされる性的少数者の存在を身近に感じてもらうため、社員にも各地のプライドパレードへの参加を呼びかけた。19年には全体の4割にあたる約200人が参加。性的少数者について学ぶ社内研修も定期的に行い、正しい知識を持ち外部へ向けて説明ができる社員には、虹色に輝く特別な名刺を配るようになった。
変化の波は就業規則にも及んだ。家族手当などの福利厚生は異性の配偶者が対象だったが、18年からは同性のパートナーにも拡大。さらに人事の基本理念として、性別や性的指向、性自認、性表現による差別を禁止する文言を書き加えた。
一連の改定を担った座間隆史・経営支援本部長(42)は「対外的な取り組みを進めるうち、社内にあるギャップを埋めなければと考えるようになった」と振り返る。パレードへの参加や研修を続けていたことが下地となり、改定はスムーズに進んだ。南区の本社には、移転を機に性別に関わらず使える「誰でもトイレ」も複数設置。「社内に困っている人がいるなら声を拾い、会社が変わらないといけない」と語る。
幅広い年代が手に取る清涼飲料と、住宅街や学校など地域のあらゆる場所にある自販機。そんな商品特性を生かした発信にも取り組む。飲料のパッケージを性的少数者への連帯や多様性を象徴する虹色にする「レインボープロダクト」の販売や、自販機を虹色に染めるプロジェクト「のんでチェンジ!」だ。
23年には「鈴鹿山系の天然水」を完全リニューアル。「多様性の価値観が水のように普遍的になるように」との願いを込め、パッケージにレインボーフラッグとメッセージを加えた。
オーナーの賛同を得て設置する虹色の自販機は、売り上げの一部を性的少数者の関連団体の支援に充てている。20年に最初の1台を設置し、現在は各地に約30台を置く。
久御山町のクリーニング・清掃会社「アグティ」は趣旨に賛同、事務所に1台を設置した。従業員の購入を促そうと会社が半額を負担し、1本50円に価格を抑えている。齋藤徹代表(46)は「飲み物の購入を通して自然にLGBTQに関心を持ち、支援ができる。会社としても置くだけで貢献ができありがたい」と話す。
なぜここまで力を入れるのか。菅社長は「一緒に働く人が“その人”のままで働けることが大事。一企業として互いを尊重できる居場所でありたい」と力を込める。「メインストリームは目指していない」という独自路線を行く飲料メーカーとしても、多様性は欠かせない視点という。
企業の社会的責任が問われる近年、その企業姿勢に引かれて入社を希望する若者も増えてきた。同社は企業のモデルケースとしても注目が集まる。菅社長は「うちも含め日本の7割は中小企業。各社がそれぞれで物語を伝えていけば、社会は変わっていくのではないでしょうか」と問いかける。
(まいどなニュース/京都新聞)
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