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母の愛情とかけた手間 数々のお手製の洋服に感動の声 そして娘は和裁職人の道へ 「母から学んだものづくりの姿勢を貫いていきたい」

まいどなニュース / 2024年9月15日 20時0分

「レトロ感があって素敵」「手作りとは思えない縫製」と話題になったワンピース(提供:宮西千晴(@KimonoNuibito)さん)

「来年80歳を迎える母が、私に作ってくれた服を数えたら何枚になるんだろう…」とコメントを添えてXに投稿された、手作りの洋服の写真が話題になっています。まるで既製品のような見事な出来栄えもさることながら、「心を込めて作ったのが伝わる丁寧な縫製」「ひとつひとつに思い出がこもっているんだろうな」と母から子への愛情に感動したとの声も多く寄せられました。

 投稿したのは、和裁技能士の宮西千晴さん(@KimonoNuibito)。Xの投稿が思わぬ反響を呼び、「驚くとともに、母の技術ってすごいんだ〜貴重なんだということに改めて気付かされました。母には、趣味のものづくりを、ずっと楽しんでいてほしいと思っています」と話してくれました。宮西さん自身は、洋裁ではなく、和裁の道へ進んでいます。

 来年80歳を迎える宮西さんの母は、現在も楽しくものづくりを続けており、今はリュック作りがブームとのこと。

 販売できるのでは?と思うほどの出来栄えに、宮西さんが「売ってあげようか?」と尋ねると、母からは「売れるほどのものは作れていないし、プロの人の迷惑になるから売らない」と返ってきたそうです。そんな母の姿勢から学び、「プロの和裁技能士として、生半可な仕事はできない」と自身の仕事に向き合う宮西さんに、詳しく話を聞きました。

母が作ってくれる服は、すべてが胸踊る”ときめき”服

 Xでの反響を受けて、「写真を撮ってあるもの大放出!」と宮西さんの母がこれまでに仕立てた大量の洋服を追投稿した宮西さん。和裁学校の入学式のために作ってもらった服や、シルエットが美しい鮮やかなワンピースなど、どれも素敵な1点ものです。

「その中でも、特に宮西さんのお気に入りの洋服はありますか?」と尋ねると、「難しい質問ですね…」と返ってきました。

「母が服を作るというのは日常的なことで、私がレディブティック(ブティック社出版の型紙を掲載している雑誌)を見て、この生地はこの服にしてね、と好みの服を作ってもらっていたので、嫌いな服はないのです。それでも、捨ててしまった服もあるので、写真に撮った服はどれもお気に入りで、よく着ていた服です。”ときめき”だったり、”キュンキュン”という言葉があっているかもしれないですね」

 服選びは既製品から選ぶことが一般的ですが、物心ついたころから、服選びといえば、まず好きな生地を選び、好きな服を本から選んで母親に作ってもらっていたという宮西さん。「今思えば、すごく贅沢だったんですね」とコメントを添えたXのポストには、「懐かしい!ウチの田舎にも、近所に仕立てもしてくれる生地屋さんがありました」「私の母も洋裁好きでたくさん縫ってくれました」との共感する声も寄せられました。

洋裁ではなく和裁の道へ「洋裁より厳しい世界だった(笑)」

 そんな洋裁好きの母のもとで育った宮西さんですが、洋裁ではなく、和裁の道に進みます。和裁とは、着物や浴衣などの和服を仕立てる裁縫で、洋裁とは仕立て方が大きく異なりますが、その違いの一つとして、型紙を使わないという点があります。

 洋裁ではなく、和裁を選んだきっかけについて宮西さんに尋ねました。

「和裁の道に進んだきっかけは、母が『洋裁は服によって型を取る必要があるため大変だから、和裁をやってみたら』と口にしたことです。そこで和裁の道に入ったのですが、洋裁より厳しい世界だったと思います(笑)」

「プロになれるかどうか、という厳しさではなく、なってから食べていけるかどうか、最低賃金にすらなっていない工料についてが主なことですが、どの道も、歩いてみないとわからないので、どちらが大変かについては比べてはいけませんね」と話してくれました。

 国家資格である1級和裁技能士の資格をもち、個人向けの和服の仕立てや和裁講師として活動している宮西さんですが、和裁職人の今後については危機感を覚えているとのこと。特に職人の収入源である『お仕立て代(工料)』の下げ止まりについては課題だと考えており、いち職人としてできることを模索しているそうです。

和裁職人の今後について、思いを聞いた

「若い頃は和裁の技術を高めるために必死でした。本当に自分には高度な技術があるかわからないので、東京キモノショーの職人大賞に応募したり、40歳を過ぎてから技能検定を受けたりしました。(※筆者追記:宮西さんは東京キモノショー2018で三つ星大賞を受賞、2024開催で一つ星大賞を受賞しています。)

 でも、結果を出せたとしても、それはただの自己満足で、「技術あるよ、すごいね」と褒められて自信がつくのみ。それが工料に反映されることは少ないのです。

 当たり前ですが、呉服屋さんはお客様の方を向いて商売をするので、たやすく工賃をあげてはくれません。お客様は安い方が嬉しいですよね。一方、職人は仕事をもらっている立場から、なかなか交渉できないんです。

 工料アップについては、三方(売る人、着る人、仕立てる人)の意識改革が不可欠だと強く思います。これがなかなか難しいのですが、皆さんに、和裁職人の現状を知ってもらうためにXで時々呟いています。

 今後、何ができるかわからないけれど、こうして取材してもらえただけでも、Xをやっていた甲斐がありました!母の服のおかげですね!あれ、また母に感謝しないといけない(笑)」

 和裁職人の未来のためにと奮起し、東京キモノショー2024(主催:一般社団法人きものの未来協議会)のガイドブックに職人の賛同者を募って広告を出したり、自身のnoteに職人紹介のページを作ったりと、活動の輪を広げている宮西さん。

「これからの和裁職人が食べていけるよう、少し先をいく私はお仕立て代を上げる努力をしていこうと思っています。お客様には着物を気軽に楽しめる価格でなくなってしまうため、大変心苦しい…。それでも、依頼してよかったと思っていただける仕事をするしかないです。和裁の技術を、途絶えさせないように、細々と。これが、和裁の未来のために、私ができること。」と締めくくりました。

(まいどなニュース/ラジオ関西・五ヶ瀬 あお)

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