学生のSNSで「うずら卵」に一筋の光が? 期限間近の在庫が山積み…農協「廃棄だけは避けたい」
まいどなニュース / 2024年10月9日 6時50分
「豊橋のうずら農協さん(西幸)に行ってきたんだけど、ゆでウズラ100個が600円で販売中だった。学校給食での事故以来、在庫が増え続けており、「廃棄だけは防ぎたい」と大変厳しい表情。 うずら卵生産量日本一の豊橋の皆さん、学校給食やカレーうどんで親しんだウズラを今こそご家庭で」
愛知県豊橋市出身の学生のよずさん(@Yorozuno2)が、今夏、豊橋養鶉農業協同組合(以下、うずら農協)の直売所に訪れた時のことをX(旧twitter)で発信すると、「この投稿を見て、スーパーで買った」「めっちゃうずら食べたい」といったコメントが寄せられ、6.1万ものいいねがつき、想像以上の影響が。「皆様からの応援メッセージや問い合わせ、非常に有りがたいです。感謝致します」と、うずら農協も反応しました。
今年2月、学校給食中にうずら卵の水煮を喉に詰まらせたことで児童が亡くなった事故が起き、給食でのうずら卵使用を中止する自治体が拡大。うずら卵の生産者には、山積みになった在庫やそれらの廃棄が続いています。そんななか、ひとつのきっかけを作ったよずさんと、うずら農協に取材しました。
うずら卵の産地・豊橋市民として知ってもらいたかった
取材の際、よずさんは「まず、事故でお亡くなりになった方のご冥福をお祈り申し上げます。このような悲しい事故が二度と起きないことを切に願っています」との思いを伝えてから答えてくれました。
うずら農協を訪れたのは、学生スタッフとして関わる地元の市民活動団体が開催するこども食堂で提供する食事の材料調達のためでした。
「豊橋名産のうずら卵が大変厳しい状況にあることを知っていたので、地域の皆さんにうずら卵の良さを思い出してもらおうと、半分に切ったうずら卵を入れた野菜スープをメニューに加えることに。それで、うずら卵の農家さんを直接支援できたらと思い、直売所へ行きました」。
直売所ではうずら卵1個あたり6円という非常に安い価格で販売、「対応に当たった農協の方が “廃棄だけは防ぎたい”と話していたことも心に残り、特に豊橋市周辺に住むフォロワーさん向けにその状況を共有しようと思ったのです」。
よずさんの投稿は想像以上に拡散され、豊橋市民以外も「近くなら買いに行くのに」「安すぎる、正規の値段で買いたい」「ラーメンに入れたい」「酒のあてにいい」などとコメント。うずら卵や豊橋市が同時期にスタートした「うずLOVE活動」へ深い関心が寄せられたことをよずさんはうれしく思いました。
「うどんや蕎麦の薬味と一緒に生で食べても、スープやラーメンの具材として食べても美味しく万能で、何にでも合う食材」がよずさんのうずら卵評。豊橋で育った子どもたちにとっても、地元で生産されるうずら卵は非常に馴染み深い食材で、15年ほど前にスタートした「豊橋カレーうどん」というご当地グルメにも使用されています。
「うずら卵は鶏卵に比べて黄身の割合が高く、濃厚な味わい。いろいろな味わい方がありますが、その中でも “うずら卵のフライ”がおすすめです。揚げることで、その濃厚さが際立ち、とてもおいしいです。ぜひ試してみてください!!」。
大量の在庫を抱え、「廃棄させるわけにはいかない」
今回注目を集めた、うずら農協のうずら卵は、生でも食べられるのが特長。加工用のうずら卵は殻が薄いのですが、それよりもサイズが大きく、殻が硬く、黄身も濃くなるように、うずらに与える飼料や養鶉場の衛生管理にも厳しい基準を設けています。
学校給食でのうずら卵使用中止という過去に経験したことのない事態に、うずら卵の生産を行う同農協の幡野理事は、「どうなっていくのだろう?」と当時不安な気持ちしかなかったと言います。
しかし、「在庫を捨てるわけにはいかない、うずらの命や生産者を考えると減産もできない」状況。以前から事務所で、細々とうずら卵の水煮などを販売していましたが、出荷停止になったものを売るために今年春に直売所をオープン。マルシェなどでの移動販売もスタートさせ、インスタグラムで積極的に発信することにしました。
直売所やマルシェでは、学校給食のために製造した100個入り600円の水煮(通常価格は950円)のほかに、塩味、めんつゆ、すりおろしにんにく、カレー、ゆずポン酢、すきやき味、みたらし味などの味付けうずら卵(1袋110円〜200円)などを販売しています。目にした人は「こんなに味付けのバリエーションがあるなんて知らなかった!」「地元にあるのに。もっと早く知りたかった」と購入。
キャラ弁にもおすすめのハート型たまごや、複数の味付けうずら卵を収める化粧箱、シール(いずれも別料金)も好評。インスタを見て、東北や関東、九州から求めに来る人もいたそうで、春先に抱えていた在庫10トンはGW明けにはなんとか完売しました。
さらに、よずさんのポスト直後の直売所営業日には台風下にも関わらず、約250組が来店。以前から繰り返し訪れている人に加え、「Xで見た」という人も多かったそう。
春先に生産されたうずらの水煮は、もう間もなく(11月~12月頃)消費期限を迎えます。廃棄を避けるために、とよはしうずら農協のインスタやXでは直売所や移動販売について発信していく予定です。
一時は出荷量が大幅に減りましたが、徐々に回復傾向に。しかし、学校向けの製品は依然として在庫が残り、まだまだ厳しい状況は続いています。
「SNSを見て、訪れてくださるのは本当にありがたいです。その一方で、豊橋市民でも豊橋がうずら卵の名産地だと知らない人も多いことがわかりました。生のうずら卵も、加工されたうずら卵もすべて豊橋市内で生産しています。いわば、オール豊橋。有楽製菓さんのブラックサンダーやヤマサちくわさんのちくわのように、豊橋のうずら卵も豊橋名物として全国に名前を轟かせたい」と、うずら卵水煮加工の製造部門に属する松ヶ迫さん。
現在は、遠方の人でも手軽に購入できるよう、オンラインストアの準備中。日本一の生産地を守っていきます。
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・宮前 晶子)
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