車にひかれた母猫のそばで鳴いていた子猫 カナブンで飢えしのぎ、目の癒着治った姿に感動「保護猫から過保護猫に」
まいどなニュース / 2024年10月18日 11時40分
車にひかれて絶命した猫のそばで、必死に鳴き叫んでいた子猫たち。そのうちの一匹、ガリガリに痩せ、目が癒着してしまった「しらす」くんとX(旧Twitter)ユーザー・古谷あつみ(@railway_atsumin)さんとの出会いは、まさに運命的なものでした……。
2024年6月、元保護猫の「しらす」くん(取材時、1歳)は、古谷さんのおうちに迎えられて1年の記念日を迎えました。
古谷さんは自身のXで、「カナブン食べて生きていた野良猫が我が家に来て1年。ビフォーアフターを見てほしい。今はカナブンどころか、安いカリカリは食べません。保護猫から過保護猫に。幸せだとうれしい」と、しらすくんの成長を振り返るコメントを投稿。
リプライには「良かった。壮絶な野良時代でしたね。今は絶対幸せです」「『幸せだよ!』そう言っている表情に見えます」「とてもかわいい猫です。末永く幸せに暮らしていけますように」など、祝福する声が寄せられました。
一時は、命の危機に瀕し、緊張が続く日々を送っていたと言います。“ふたり”はどのように過酷な状況を乗り越えたのでしょうか。詳しいお話を伺いました。
痩せ細っていたしらすくん…知人の力をかりて子猫たちを緊急保護
しらすくんとの出会いは、夏の始まりを感じさせる6月の蒸し暑い日でした。古谷さんが自転車で帰宅途中、路上で車にひかれて絶命した猫のそばで、ミャーミャーと鳴いている4匹の子猫を発見。急いでコンビニで食べ物を買い、子猫たちに与えましたが、しらすくんだけは他の子に押しのけられて食べられない状態でした。
「しらすだけが取り残されたように見えたのです。放っておけませんでした」と古谷さんは振り返ります。
やむなく3匹の子猫は保護猫団体に託し、しらすくんを連れて動物病院へ向かいました。病院での診察の結果、しらすくんは猫風邪を患っており、体重もわずか700グラム。「医師には、生後1カ月半ほどに見えると言われましたが、実際には2カ月半くらいだったんです。それほど痩せていたんですよ」と古谷さん。
また、保護団体に託された3匹の子猫の排泄物からはカナブンのような昆虫の羽が確認され、食べるものがなかったために、昆虫を口にして飢えをしのいでいたことがわかりました。
古谷さんと知人の懸命なケアを受け、しらすくんと3匹の子猫は少しずつ体調を回復。しらすくんは古谷さんのおうちへ、3匹の子猫もそれぞれ里親さんのもとへ、“きょうだい”そろって新たな猫生を歩み始めたのです。
それから4カ月後、しらすくんの体調はすっかり安定し、去勢と目の手術を受けました。「手術後も、癒着がひどくて左目しか見えるようになりませんでした。一度は、右目の手術はあきらめようと思ったのですが……。術後の経過がとても良く、信頼できる医師と出会えたこともあって、再手術を決断しました」と古谷さん。
古谷さんの思いと医師の力が合わさり、2度目の手術は成功。しらすくんはついに両目の視界を取り戻しました。
先住のウサギと仲良しに…直後、訪れた悲しい別れ
古谷さんは、過去に実家で猫と一緒に暮らしたことがありました。その猫はとても長生きをしてくれましたが、最期を看取ることができなかったため、ずっと心残りがあったそう。「しらすと出会ったあの日、今にも消えてしまいそうな命に背を向けることはできませんでした」と語っています。
当時、古谷さんはネザーランド・ドワーフというウサギの「まるこ」くんと一緒に暮らしていました。どうぶつのお世話をしながら日々を過ごすことに慣れていたため、しらすくんをお迎えしたあと大変だと思うことは無かったといいます。
唯一、気を遣ったことは、しらすくんとまるこくんの上下関係をはっきりとさせることでした。まるこくんは、ウサギの中で最も小柄な品種。そのため、しらすくんが成長し体が大きくなったとき、まるこくんが傷つくようなトラブルが起こらないようにしなければいけないと考えたのです。
ところが、古谷さんの心配は、杞憂に終わりました。猫とウサギという種族を超えて、しらすくんとまるこくんは仲良くなったのです。
そうして夏の盛りが過ぎ、秋が始まるころ、悲しい出来事が起こりました。まるこくんが、8歳6カ月で虹の橋を渡ったのです。古谷さんはペットロスに苦しみ、しらすくんもまた、まるこくんの姿を探して鳴き続け、体調を崩してしまいました。胃腸の動きが弱まってしまったのです。
当初は、何らかを誤飲した可能性を探りましたが、のちに、まるこくんを亡くしたストレスによる症状であることがわかりました。「しばらくして復調しましたが、あのときのしらすの辛そうな姿は今も目に焼き付いて離れません」と古谷さんは振り返ります。
「しらすのほうがよほど悲しいのかもしれない」と思うようになった古谷さん。「しらす、ウサギさん、私。また、以前のような“家族関係”を築けたら……」と願うようになります。
そうして縁あって出会ったのが、まるこくんと同じネザーランド・ドワーフの「てん」ちゃんでした。
しらすくんとてんちゃんは、すぐ仲良しに。まるこくんとの楽しい思い出を胸に、古谷さんたちは、再び、前を向いて歩み始めました。
立派な“イケニャン”になったしらすくん…ウサギさんを守る頼もしい存在に!
古谷さんによると、しらすくんは、おとなしく甘えん坊。とても臆病なところがあるそうです。一方、「ウサギに飛びかかろうとすると、急にハッとして止まるんです。優しい子なんですよ」とも教えてくれました。
しらすくんは、さながらボディガードのように、てんちゃんのことを見守っているそうです。
「今では“デカデカモフモフ美ニャン”になりました。ごはんをきれいに食べてくれて、とてもお利口さんです」と、古谷さん。
厳しい状況を乗り越え、しらすくんは今、古谷さんに見守られながら幸せな穏やかな日々を送っています。そんな古谷さん“家族”のことを、まるこくんもまた、お空の上からずっと見守ってくれていることでしょう。
(まいどなニュース特約・梨木 香奈)
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