ゴミ屋敷で「物乞い犬」と飼い主に呼ばれていた毛玉だらけの老犬を保護→ガリガリだったがトリミングすると、健気に尻尾を振った
まいどなニュース / 2024年10月24日 16時30分
猫の保護活動を行うjun(@okotamaru)さんがX(旧Twitter)に投稿したポストに多くの人が衝撃を受けた。
「飼い主に『物乞い』と呼ばれ、一昨日までまともに食事も取れず、糞尿にまみれ、分厚い毛玉の鎧をまとって、肉球に刺さった爪で穴が開いていたおじぃワン。犬ボラさんの元でこんなにきゅるんきゅるんの姿に大変身。あとは体重を3キロほど増やすのみ!」
そんな衝撃的な文言と共に投稿された写真に写っていたのは、生き物なのかゴミなのかさえわからないほど、全身を固まった毛玉に覆われたシーズー犬。その後、犬はトリミングを受け、リボンをつけてもらい、すっかり可愛い姿に。
保護されたのは、全身毛玉だらけの痩せこけた老犬
junさんは続けて、「この子の元飼い主は高齢者で、子犬で迎えた時期が遅かった」と投稿。
「60代半ば。子ども、身寄りなし。夫婦のみ。夫に先立たれ、全てに無気力。家はゴミ屋敷。この家から猫も1頭レスキューしています。丸々と太った大きな猫。飼い主に聞いたところ、『犬の餌みんな食っちまう』。この家に猫のフードと思われるものはなかった。狭いサークル、そして大きな毛玉。動きが制限されていたから、猫がドッグフードをほとんど食べていたのでしょう」
「だから(犬は)あんなにガリガリ。猫に犬のフードを与えてはいけない。犬と猫の身体に必要とされる栄養素は違います。それを何年も…。猫のケアも必要に。3歳の未去勢の男の子。先輩ボラが病院へ」(junさんのXの投稿より)
犬が自分でキレイにできるわけないのに!
junさんの投稿に対して、多くの憤りの声が寄せられた。
「『物乞い犬』だなんて…」
「そんな呼び方あり得ます!?よく生きてきたね、本当に頑張ったね」
「なんで物乞い犬なんですか?飼い主が汚くしてるのに!犬が自分でキレイにできるわけないのに」
「ウチの子とうとうオムツ犬になっちゃったけど、必死に生きてる。いてくれるだけで嬉しくて尊い。普通そうでしょ?」
保護されたシーズー犬は、14歳のオス。現在このシーズー犬を預かっているボランティアさんが、保護後の様子をjunさんあてにXで報告。
「この子の面倒みているボラです。3日面倒みてわかったことがあります。叩かれていたのか?頭をなでようとするとすごく怖がって逃げます。マナーバンドを着けようとすると逃げます。3日経ち、頭は一瞬怖がりますが、すぐになでさせてくれるようになりました」「いつから叩かれていたのですかね(涙)。怖い思いから抜け出せるまでには、3ヶ月はかかりそうです…。少しずつ優しさに慣れてくれれば嬉しいですね」
こういったケースは他にもたくさんある
シーズー犬は穏やかで愛情深く、比較的飼いやすい小型犬だ。ただし、皮脂の分泌が多く、被毛が伸び続けるため、定期的なトリミングが欠かせない犬種でもある。
だが、保護されたシーズー犬はブラッシングもシャンプーもしてもらえず、排泄物にまみれてガチガチに固まった毛玉のせいで動けず、ドッグフードは猫が食べてしまうため、ガリガリに痩せていた。
「こういったケースは他にもたくさんあります」と語るjunさんに詳しいお話を聞いた。
「毛玉が取れると…尻尾を振ってくれたんです」
ーーシーズー犬は「いっちゃん」という保護ネームをもらったそうですね。どういった経緯でゴミ屋敷状態の家から保護を…?
「私は猫のTNR(避妊去勢手術をして元の場所に戻す)活動をしている猫ボランティアなのですが、先輩ボランティアさんから、『今度、保護活動でゴミ屋敷に入る』と教えてもらいました。詳細を伺うと、①認知症になった単身の高齢者宅 ②土足で入るのも躊躇する悪臭がするゴミ屋敷 ③世話を放棄された犬種が分からないほど毛むくじゃらな犬がいる ④認知症になる前に友人から預かった未去勢のオス猫がいる、とのことでした。先輩ボラさんは足が悪く、ゴミ屋敷での保護に慣れている私が代わりに行くことになりました」
ーー保護の後、毛玉を取るのに4時間以上かかったとか。
「保護時の状態は本当にひどいものでした。ゴミのようなものと一緒に1メートル四方のサークルに入れられ、とても犬とは思えない、よく分からない塊のようでした。生きているかどうかも分からず、動いた時は『生きていてくれた!』と安堵したのを覚えています。先輩ボラさんがキャリーバッグを用意してくれましたが、毛玉がひどく、手足を地面に下ろせないような状態でした」
ーーかわいそうに。
「シーズーは皮膚の脂分が多い犬種ですが、そのせいでいっちゃんの皮膚は膿皮症なのか、黄色いフケかカサブタのようなもので覆われていました。犬猫のシッターや老犬介護をしているボランティア仲間が毛玉のカットをしてくれたのですが、私がいっちゃんを保定した時のいっちゃんの背骨の感触……今思い出しても涙が出ます。ガリガリでした……」
伸び切った爪が肉球に
ーー本来シーズー犬のオスは筋肉質でムチムチしているはずですよね……。
「取り除いた背中の毛玉の塊の方が、いっちゃんの体重よりも重いのではないかと思うほどでした。耳も本来の長さの倍以上が毛玉。手足の毛はムートンブーツを履いているかのような分厚さで、本来の尻尾の長さも太さもわからないような状態でした。
背中から毛玉を剥がしてもらうと、長い間毛玉で動きを制限されていたいっちゃんは自分の足で歩きました。そして、ボラ仲間さんたちに尻尾の毛玉を取り除いてもらうと、尻尾を振ってくれたんです。その姿があまりにも健気で涙が出ました。翌日、預かりさんが手足のムートンブーツをがんばってはがしてくれたのですが、どうしても足を嫌がる、と。保護の翌々日、動物病院に行くと、伸びきった爪が肉球に突き刺さっていたため、足を触られるのを嫌がっていたことがわかりました」
身近にある「虐待や飼育放棄」、決して他人事ではない
現在、いっちゃんは預かりさんのもとにいる他のシニア犬たちと共に、おいしいものを食べ、荒れた皮膚を保護する可愛い洋服を着せてもらい、今までの分を取り戻すように、たくさん可愛がってもらっているという。
「あの状況でよく生きていてくれたと、皆でいっちゃんをほめました。頑張ったね。偉かったね。もう大丈夫。何度も何度も皆でいっちゃんをほめ続けました。生きてるうちに保護されたいっちゃんは、まだ幸運な方なのだと思います。もっとひどい状況で苦しんでいる子は他にもたくさんいると思います。いっちゃんのようなケースは皆さんの身近でも起きています。決して他人事ではない、ということを多くの人に知ってほしいと思います」(junさん)
junさんによると、元飼い主の女性を支援するセンターからは、今年の夏に夫が亡くなったのを機に女性の認知症が進み、飼育放棄が起きたと言われたそうだ。
「ただ、いっちゃんがすでに数ヶ月以上前から保護時のようなひどい状態だったことは把握していたそうです。支援センターがもっと早く行動を起こしてくれていたら……という悔しい思いがあります」(junさん)
少しでも異変を感じたら通報して
なぜ、保護団体やボランティアはすぐに保護活動に着手出来ないのか?「それは、行政が動かない/動けない、からなんです」と、junさん。
「現在の法律ではペットは飼い主の所有物という扱いです。また、動物愛護法が改正されても、その内容を理解しているのは私たちのように動物に携わっている一部の人だけ。驚くことに、いちばん知っておいてほしい警察官も理解していないことが多いです。動物への暴力もネグレクトも虐待であり、犯罪です。悪臭や鳴き声など、もし皆さんが近所や通りかかった場所で少しでも異変を感じたら、警察や行政に通報してほしいです。
小さな命を救うためには、まずはペット=所有物という扱いを変えてほしいと心から思います。時間がかかるとしても、声を上げ、行動を起こせば変わることは必ずあると思っています。現に私の住む地域では、先輩ボランティアさんたちが長年行政に働きかけてくれたおかげで、少しずつですが変わってきています。言葉を持たないがために苦しんでいる子たちの代わりに、声をあげてくれる方々がたくさんいる世の中になって欲しいと心から思います」(junさん)
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・はやかわ リュウ)
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