90分で8910円…だと…!? 京都の町家風ブルーボトルコーヒーで超プレミアムな体験をしてみた
まいどなニュース / 2024年11月1日 7時0分
米国発祥のコーヒー専門店「ブルーボトルコーヒー」が10月から南禅寺(京都市左京区)近くの京都カフェで、秋季限定の予約制コースを展開している。
京都カフェは築100年以上の京町家を改装した店舗。その2階に2023年3月、リノベーションした特別な「スタジオ」をしつらえた。コースは春と秋の季節限定で、コーヒーのさまざまな側面を楽しみながら「最高のコーヒー体験」ができる、とうたう。
時間は90分、料金は8910円となかなかプレミアムな設定だ。しかも、世界中にあるブルーボトルコーヒーの店舗で定期的に営業するのは京都カフェだけという。いったいどういうものなのか、体験してみた。
ブルーボトルコーヒーは2002年に米国のカリフォルニア州・オークランドで創業した。高品質のコーヒー豆を自社で焙煎(ばいせん)し、注文を受けてからドリップする「サードウェーブ」コーヒーの代表格で、2015年に日本に進出し、ブームを巻き起こした。
京都カフェ限定のコースは1日3回で、各回最大5人まで。10月3日午後1時からの回は、記者を含め3人が参加した。
まず1階で靴を脱ぎ、2階へ上がる。スタジオにはバーカウンターのような長いテーブルがあり、前方のガラス窓からはカフェ別棟の町家、少し色づき始めた中庭のモミジを見渡せる。新旧が融合したぜいたくな空間には、雨模様の天気にぴったりなジャズのレコードが流れていた。
バリスタの小倉なつきさん(26)がカウンターに立ち、ドリンク6点、スイーツ2点が提供されるコーヒーコースについて説明する。
「ここはブルーボトルコーヒー創業者のジェームス・フリーマンが空間、音楽にまでこだわってゼロから作ったスタジオです。ぜひ五感で楽しんでください」と笑顔を向けた。
まず、最初に出てきたのはコーヒーの葉、花、果実を余すことなく使った3種のティー。産地はそれぞれマラウイ、ボリビア、パナマとバラエティーに富む。香り、味わいともに違いがあり、植物であるコーヒーの多様な魅力を知ることができた。
2番目は「ソリュブル」。粉末にした、いわばインスタントコーヒーだが、極めて希少なコーヒー豆を使用し、ロースト、抽出、結晶化の工程をブルーボトルが独自に行っているという。
目の前でお湯が注がれ、グラスを口元に近づけると芳醇(ほうじゅん)な香りが鼻をくすぐる。記者の隣に座っていたホテル従業員の利田(かがた)悠さん=大津市=は「インスタントコーヒーの概念がくつがえされる」と驚いた様子。
バリスタの小倉さんは「インスタントでもクオリティーを落とさずにおいしいコーヒーを提供できるか。ブルーボトルなりのチャレンジです」と気さくに応じた。
次は「ロングカップ」で、希少な米国カリフォルニア産、コロンビア産、イエメン産の3種類を飲み比べ。精製方法も異なり、特に2度豆を発酵させているというイエメン産のコーヒーはこれまで体験したことのない、ウイスキーのような深い味わいが感じられた。
お口直しで、りんごの「紅玉」を煮詰めたコース限定のパートドフリュイ(ゼリー)を挟む。酸味が強く、さっぱりとリセットされた気分になった。
4番目は「ショートカップ」。小倉さんは80グラム以上もあるたっぷりのコーヒー豆をネルドリップでじっくりと抽出する。
「創業者のフリーマンは日本の喫茶文化に刺激を受けて、このスタジオの構想を練っています。喫茶店のようにネルドリップでいれているのもそのためです」
カップに注がれたのは超濃厚なエスプレッソ。慣れない濃さだけに慎重に口に含む。ずっしりとした口当たり。その中に果実感が潜んでいる。これは、奥が深い。
次に小倉さんは高いところから別のカップにミルクを注ぎ、エスプレッソを「オーレ」にして差し出した。表面が泡立ってミルクの甘さが引き出され、ほっと一息つけた。
二つめのスイーツは、ゴマを使ったフィナンシェ。表面はこんがりと焼け、中はしっとり。ゴマの風味が口いっぱいに広がる。こちらも紅玉のパートドフリュイと同様、人気パティシエユニット「Tangentes(タンジェント)」の後藤裕一氏と仲村和浩氏が監修したもので、今回のコースのために開発されたものだという。
ラストを飾るのはコーヒーの「食後酒」。エチオピア産のコーヒー豆を使い、鹿児島県産の黒糖で作ったホワイトラム、カルダモンなどを加えている。甘くてデザート感覚。ノンアルコールでも対応してもらえる。
コースはこれで終了。参加した利田さんは「町家の中で世界のいろいろなコーヒー豆や飲み方を1時間半かけて体験でき、とてもぜいたくな時間でした」と満足そう。友人でフランス人のセリン・ピエロンさんは「スコットランドで体験したウイスキーのテイスティングを思い出した。窓から見える景色も素晴らしく、すごく楽しかった」と喜んでいた。
ブルーボトルコーヒージャパン(東京都)によると、コースの参加者は年代や国籍などさまざま。このスタジオのバリスタになるには、コンセプトの落とし込みやコーヒーのいれ方から所作まで、特別なトレーニングを積む必要があるという。
担当したバリスタの小倉さんは京都府亀岡市出身。「コーヒーは嗜好(しこう)品なので好みもいろいろだと思いますが、このコースに参加すれば新しい発見があるはず。コーヒーを好きな方もそうでない方も楽しめるような場をつくっていきたい」と意欲を語った。
今季の営業は12月2日までで、毎週金、土、日、月曜日に実施する。各日午前10時、午後1時、午後3時半からの回がある。予約はブルーボトルコーヒージャパンのホームページから受け付ける。
(まいどなニュース/京都新聞・国貞 仁志)
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