社名は「六甲バター」ですが「バターを作ったことも、売ったこともありません」 年に9億個販売「Q・B・Bチーズ」誕生を支えた挑戦と成功の秘密
まいどなニュース / 2024年11月23日 11時30分
50年以上にわたって愛されるロングセラー「Q・B・Bチーズ」。学校給食の名脇役として記憶している人も多いのではないでしょうか? 給食だけでなく家庭のおやつ、おつまみまで…幅広い世代に愛される関西人には定番のプロセスチーズ。現在では定番シリーズの他に期間限定のフレーバーも人気があり、年間約9億個を売り上げています。
そんな「Q・B・Bチーズ」を生み出したのは、神戸市中央区にあり六甲山のふもとに本社を置く「六甲バター株式会社」です。
話を伺ったのは4代目社長・塚本浩康さん。実は「六甲バター」という社名にも関わらずバターを作ったことも売ったこともないという驚きの事実が判明!
なぜ「六甲バター」という社名になったのか。気になる社名の由来には、子どもたちの健康を願う創業者の熱い物語がありました。数々のひらめきで戦後の混乱期を乗り越えてきた、その波乱万丈の開発秘話に迫ります。
「六甲バター」なのにバターを作ったことがない!? 気になる社名の由来とは
戦後からおよそ2年経った1947年。日常の暮らしを取り戻しつつも、食料はまだ満足に手に入れることができません。戦争から復員して仕事を探していた創業者・塚本信男は、今後食生活が豊かになっていく時代に求められる食品は何だろうと考え、かつて大阪の専門商社で働いていた経験から海外の食品に目を向けていました。そんな中、神戸でも学校給食が再開されましたが、「補食給食」と呼ばれたその内容はコッペパンと脱脂粉乳という簡素なもの。それを見た信男はどう見ても栄養が足りないことに危機感を感じます。
子ども達に栄養豊富でカロリーの高いものを提供しなければと考えた時、知人からバターの代用品として開発された「人造バター」が欧米で流行していることを聞かされます。主原料は牛乳ではなく動植物性の油脂。この人造バターは海外で「マーガリン」と呼ばれていました。
本物のバターよりもコストが低く、かつ高カロリーという食品に可能性を見出した信男は、友人らとともにマーガリンメーカーを設立し、開発に着手します。
当時は高級品だった本物のバターの味を知る社員が少ない中、別メーカーからノウハウを教えてもらうなど試行錯誤の末、1950年、「マーガリン 六甲バター」が誕生しました。
これが予想以上にヒットした結果、商品名をそのまま社名とすることが決定。当時はバターとマーガリンの区別が厳格ではなかったため、問題視されることもなくその名は定着したと、4代目社長は笑います。
「六甲バター」とは「人造バター」に由来する社名だったのです。
日持ちしないバターが売れない…〇〇をヒントに小分けで販売!
「安く手に入るバター」として業務用のものは売れていたのですが…家庭用は鳴かず飛ばず。理由の一つはパン食が一般的でなかったこと、そしてもう一つは冷蔵庫が普及していなかった当時、バターの大きなサイズが場所を取り、一度開封すると日持ちさせられないということでした。
そんな窮地の中にもターニングポイントが訪れます。信男は、子どもたちの憧れ「キャラメル」をヒントにマーガリンを個包装にすることを思いつきます。9分の1のサイズに切り分けた小分けのマーガリンは見事大ヒット!学校給食にも導入され、「高カロリーの食品を子どもたちに届ける」という当初の願いが叶うこととなります。
逆風に見舞われるも努力を続け、人造バターの次は人造○○に挑戦!
その後マーガリン業界で順調に実績を築いた六甲バターですが、 大口の取引先の廃業や火事で工場と倉庫が全焼するなど度重なる逆風に見舞われます。それにも負けず、新工場を4カ月で再建。さらには大きな投資をして性能の良い機械を導入し、会社を順調に成長させます。しかし信男は「いつ何が起こるかわからない」という危機感から、マーガリンに並ぶ事業の柱として「人造チーズ」の開発に目をつけました。もちろん今回も牛乳ではなく、密かに研究を進めていた大豆たんぱくを使ったチーズ作りを模索することに。
いざ本格的に試作をスタートするも、その強い酸味や水っぽさなど本物のチーズとは程遠い品質のものしか作ることができず、苦戦します。
そんな中、取引先から「オーストラリアからナチュラルチーズを輸入しないか」という話を持ち掛けられます。それを承諾した信男。こうして、チーズ大国・オーストラリアからの輸出先として六甲バターが日本で唯一指定されることに。苦戦の中でも努力し続けた結果、チャンスが訪れたのです。
輸入されたナチュラルチーズの加工に苦戦すること約半年…消費期限を長く保ち、日本人の口にも合うプロセスチーズ「Q・B・B」チーズが誕生しました。
ちなみに…この「Q・B・B」とは、チーズの輸入元となったオーストラリアの団体名「Q・B・B」(Quality’s Best & Beautiful=美味しさと品質へのこだわり)を継承し、そのまま商品名に採用したものです。
しかし、チーズというものに馴染みがなかった当時の市場には受け入れられませんでした。そこで信男は、どうすればみんながチーズを食べやすいようにできるか考え、当時流行し初めていた食品である「魚肉ソーセージ」の形にすることを思いつきます。1960年に発売した世界初のスティックチーズは見事、爆発的ヒットを記録します。
その後もアイデアは止まりません!1971年には日本初となるフィルム個包装のスライスチーズ、そして1972年には「Q・B・Bベビーチーズ」を発売!
そして 一度もバターを扱うことがないまま現在に至る「六甲バター」。売り上げの95%はチーズ製品で占められているといいます。看板商品・ベビーチーズは誕生から50年余りたった現在も、鉄分入り、神戸牛入り、ホタテ入りなどなど…年間20種類以上の新商品を展開しています!
さらに、2009年には女性社員のアイデアから「Q・B・Bチーズデザート」を発売!6Pチーズをベースに味や食感をチーズケーキに近づけたものです。ブルーベリーをはじめ、瀬戸内レモンやオレンジショコラなど、多様なフレーバー展開で売り上げ2000万個を突破!新たなジャンルを開拓し、今や六甲バターの柱となっています。
そんな六甲バターの「もしマネポイント」は…「運と縁を生かす」。この結果、アイデアをくれる人々、熱意ある社員といった出会いを得ることができたといいます。
今後も六甲バターは人との繋がりを大切にしながら、日本中の食卓に欠かせない商品を生み出し続けることでしょう。
番組情報
〇番組名
日経スペシャル もしものマネー道もしマネ
〇内容
『もしもの時』に備えるマネー道!マネー活用バラエティ!
〇放送日時
テレビ大阪 第1~3日曜日 午後2時放送!放送終了後はYouTubeチャンネル、TVerで無料見逃し配信中。
(まいどなニュース/クラブTVO編集部)
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