トランプ氏再選…米外交はどう変わる? 誰が喜び、誰が戦々恐々としているのか
まいどなニュース / 2024年11月9日 10時30分
世界の注目が集まる米大統領選挙が実施された結果、共和党候補のトランプ氏が勝利した。これまでの世論調査結果では、女性初の大統領を目指す民主党のハリス副大統領が支持率でリードする、もしくは支持率が拮抗するというケースが多かったが、蓋を開けてみればトランプ氏の圧勝だった。ハリス氏は選挙人の獲得票数でトランプ氏に60以上の差を付けられたが、ジョージアやノースカロライナ、ペンシルベニアやウィスコンシン、ジョージアやノースカロライナなど激戦7州で全敗したことが決定的な敗因となった。トランプ氏の再来となったが、この結果に各国の指導者はどう思っているのだろうか。
まず、トランプ再来を好意的に受け止めるのが北朝鮮とイスラエルだろう。バイデン政権はこの4年間、北朝鮮が核やミサイルの問題で改善策を自ら示さないと交渉のテーブルには付かないという戦略的忍耐を維持してきたことで、米朝関係はこの4年間全く動きが見られず、北朝鮮は軍事的な挑発を続けてきた。しかし、トランプ氏は政権1期目の時、金正恩総書記とベトナム、シンガポール、板門店と3回も対面で首脳会談を行い、会談が双方の満足する結果になったかは別として、両国の間では緊張緩和が生じた。今回の大統領選の期間中にも、トランプ氏は自らがホワイトハウスに返り咲くことを金正恩氏も望んでいるだろうと主張するなど、第2次トランプ政権は北朝鮮との間で再び交渉外交を積極的に進めていくことが考えられる。米国との国交正常化を従来から追求する北朝鮮にとって、トランプ再来は貴重な機会となる。一方、それによってバイデン政権下で固めされた日米韓の結束は揺らいでいくことになろう。
また、今日の中東紛争の当事者であるイスラエルのネタニヤフ首相もトランプ再来を強く待ち望んでいた。バイデン政権だろうがハリス政権だろうが、イスラエル支持の米国の姿勢に変わりはないが、トランプ氏は極度とも言える親イスラエル、反イランの姿勢に徹しており、政権1期目の時はネタニヤフ氏と良好な関係を築き、イラン核合意からの離脱やイラン産原油の全面禁輸など行なってきた。トランプ氏による勝利宣言後、真っ先に祝福のメッセージを送ったのはネタニヤフ首相であり、信頼できるパートナーを得たとして、ネタニヤフ政権による軍事行動がさらにエスカレートする可能性が懸念される。
一方、台湾はハリス氏の勝利を望んでいたことは間違いない。バイデン政権は台湾やウクライナを民主主義と権威主義の戦いの最前線と位置付け、台湾への軍事支援を惜しまないというスタンスに徹してきたが、トランプ氏は台湾は米国に防衛費を払うべきだ、台湾は米国から半導体産業を奪ったなどと発言しており、台湾軽視の姿勢に転じる可能性は排除できない。台湾では5月に頼清徳政権が誕生したが、中国はそれ以上2回も台湾を包囲するような大規模な軍事演習を行なっており、中台関係は冷え込んでいる。このような状況でトランプ氏が台湾軽視の姿勢を鮮明にすれば、中国がその隙をついてこれまで以上の軍事的圧力を台湾に示してくる可能性がある。
また、ウクライナも似たような感情を抱いていよう。トランプ氏はウクライナ戦争を24時間以内に終わらせる、ウクライナ支援を最優先で停止するなどと発言しており、実際にトランプ政権が再来しないと分からない問題ではあるが、これまでのように米国から軍事支援を得ることは難しくなる可能性が高い。米国は主要な軍事支援国であり、それが縮小、停止などとなれば、ロシアにとっては大きなメリットとなる。ゼレンスキー大統領はそれを強く懸念している。
◆治安太郎(ちあん・たろう) 国際情勢専門家。各国の政治や経済、社会事情に詳しい。各国の防衛、治安当局者と強いパイプを持ち、日々情報交換や情報共有を行い、対外発信として執筆活動を行う。
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