【漫画】性被害をはじめ自分を守るため「NO(嫌)を言える」大人に 幼児期からの練習が重要
まいどなニュース / 2024年11月28日 19時40分
「NO(嫌)を言える、受け入れられる人間に育つために」
漫画家・イラストレーターのフクチマミさん(@fukuchi_mami)がX(旧Twitter)にて紹介された漫画の内容に、多くの方からの共感の声が集まっています。
漫画はとある母親の話からはじまります。散らかっている息子さんの部屋を掃除したお母さん。洗濯物やゴミを回収し、机に散らばっていたプリント類も整理してあげたのに、後で息子さんから「勝手にやらないで」と怒られてしまいました。
子どものためを思ってしたことなのに――と不満を漏らす母親。
ですが、息子さんが「NO」を示すこと。それ自体は決して悪いことではないといいます。
今回投稿された漫画は、教育者である村瀬幸浩氏とフクチさんの共著『おうち性教育はじめます 思春期と家族編』のなかの一項、「人との距離を学ぶ/『NO』を伝え、受け入れる」から引用されたもの。
そのタイトルの通り、子育てのなかで子どもが「NO」を伝え合うことの大切さについて書かれています。
日本では、嫌だといったり反対意見を言いづらい風潮があります。ですが、NOの感情を出さずに抱え込んだままにしていると、自分を守るセンサーがはたらかなくなってしまうといいます。
そもそも、「NO(嫌)」は、自分がされたくないことや不快なことに対する意思表示。さらに性犯罪やハラスメントの被害者にならないようにするためにも、とても重要なことです。特に、これからの社会では重要なスキルといえるでしょう。
逆に、相手から「NO」と言われた時に、それを受け入れることも同じく大切なことです。
そのため、子どものうちから、家庭などで「NO」を伝えたり受け入れたりする、「練習」が必要になるといいます。
ただし、親側も子どもの「NO」をただすべて聞くだけになってしまうのはよくありません。漫画では、子どもが「NO」を示してきた時の親側の対応のポイントについても解説されていました。
漫画が注目されるきっかけにもなった“嫌知らず”の投稿
「NO」を伝えることの大切さについて解説したフクチさんの漫画。
フクチさんによると、今回のエピソードを投稿されたきっかけは、似たような体験を綴ったとある方のポストを見たことだったといいます。
それは、11月初めに公開された三好さん(@miyoshiiii)の投稿。三好さんは投稿のなかで、「本人が嫌がっていることを伝えていても、相手がそのことを認識できていない状況がある」と指摘。その状態を“嫌知らず”という言葉で表現し、注目を浴びました。
実はフクチさんは、以前にも今回の漫画をXに公開していました。ですが、三好さんのポストの内容に共感し、自身の漫画とも共通しているものがあると感じたフクチさん。「“(相手の嫌という思いに)慣れていない”というのも相手の嫌を受け取れない要因の一つにあるのかも…」と考え、再び投稿をされたそうです。
三好さんの投稿と同様、フクチさんの漫画も多くの方から関心をもたれ、共感の声が集まりました。
「自分を大切にするうえでは大事なことなのに」
「これ…日本でも絶対に大事。適切はヘルプ出しの仕方を学ぶこと。学校に提案しようかな」
「子どもの時は『我慢しなさい』で反論された。大人が受け入れるもしくは一緒に解決することが大事なんだと思いました」
「日本では『そんなわがまま言わないの!ほら、他の子はやってるでしょ!』と、周りに合わせる事を教えられる」
「NOを“受け入れる”もかなり重要。慣れてないと『自分の行為を否定された』→『自分を否定された』→『自分の存在を否定する相手は悪人だ』とどんどん認知の歪みと被害妄想が加速する。あくまで自分の一部の行為が否定されたと捉えなきゃいけない」
子どもが被害に遭わないために、親側も試行錯誤しながら…
近年、セクハラやパワハラ、モラハラといったハラスメント(嫌がらせ)は大きな社会問題となっています。また、令和5年の内閣府男女共同参画局の報告によると、16歳~24歳の若年層のうち、4人に1人が何らかの性被害に遭っているといいます。
そのなかには、突然そのような被害に遭われた方ばかりではなく、互いの関わりのなかで、相手の言動に嫌だという気持ちを表すことができず、ずるずるとそのような関係性になってしまった――というケースもあり得るかもしれません。
そのようなリスクを避けるためにも、きちんと事前に「嫌」という意思を相手に示したり、逆に示された時に適切な対応ができるよう、訓練をしておくことは大切なことでしょう。
フクチさんにお話をうかがいました。
――今回の投稿は、『おうち性教育はじめます 思春期と家族編』のなかの内容を引用されていますが、本書が出版に至った経緯について教えてください。また、この「NOを伝え合うこと」の項目を設けた理由は?
フクチさん:前作の『おうち性教育はじめます 一番やさしい!防犯・SEX・命の伝え方』が好評で、第2作として思春期の子を持つ親向けに出版しました。「NOを伝えること」は性教育の大事なテーマなので1作目でも触れていたのですが、第2作では思春期以降大切になる「性的同意」につながる切り口で描きました。
――三好さんの“嫌知らず”に関する投稿からも、今回の内容は注目されました。
フクチさん:(三好さんの投稿をきっかけに)たくさんの方が同様の体験を投稿するムーブが生まれました。それによって、これまで多くの人が不快だと感じてきた出来事の曖昧な輪郭がハッキリしてきたのだと思います。そこに三好さんが“嫌知らず”と名前をつけたことで、この概念が確立したと感じました。
――本書でも触れられている通り、「NO」を自分で言うこと、それを相手が受け入れること、コミュニケーションにおいてとても大切なことです。なのに現代社会で、それがなかなかうまくいかないのには、どのような理由があるのでしょうか?
フクチさん:NOは言うのも受け止めるのも幼児期からの「練習」が必要ですし、相手を尊重する“バウンダリー”(自身と他者とを区別する線引きのこと。“境界線”とも)の概念も必要なのですが、今の日本の社会の中で、それができづらい状況だからではないかと思います。
――フクチさん自身は、「NO」と言える子どもでしたか?
フクチさん:言えない子どもでした。「嫌」というのはワガママ、という空気が強い時代だったので。あとは「嫌」は相手を否定することになるのではないかという不安もありました。逆に「嫌」と言われると自分を否定された気持ちにもなりました。
――ご自身の過去ことも踏まえて現在は?子育てなどで気をつけていることなどもありましたら教えてください。
フクチさん:性教育で「NO」のことを学んでからはかなり意識が変わりました。子育ての場面では、子どもの「NO」を受け入れることは意識しています。ただこちらの願いもあるのでどういう着地点を見つけるかを毎回試行錯誤です。これまで身についていなかったことをするのは大変ですが、いくつになっても変われると思っています。
◇ ◇
「NO」を伝えたり、受け入れたりすることは、健全な人間関係を形成したりより良い社会生活を送り合ったりするために、とても重要なスキルといえるでしょう。
重要な概念について伝えてくれている『おうち性教育はじめます』シリーズ。
「性教育は、誤ったイメージを持っている方も多いですが『自分と他者を大切にするための方法が具体的にわかる学問』なので、ぜひ読んでみていただければと思います」
そんな本書について、フクチさんはこのようなメッセージを語られました。
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・竹中 友一(RinToris))
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