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昇進は損なのか…「夫が部長になったのに、給料が減っていました」 管理職の給与のカラクリ、社労士が解説

まいどなニュース / 2024年11月30日 9時2分

夫が昇進したのに手取り給料が下がった! ※画像はイメージです(buritora/stock.adobe.com)

Aさんの夫は通信関係の会社に勤める40代後半の会社員です。これまでの業績が評価され、先日の辞令で部長への昇進を果たしました。しばらくして、夫が部長になって初めての給料日がやってきます。Aさんはどれくらい手取りの金額が増えているか楽しみにしていたのです。増えた分で服を買うのもいいし、旅行にいくのもいいしと、Aさんの期待は膨らみます。

いざ夫が帰宅し給与明細を確認すると、なんと先月よりも給料が減っていたのです。仕事量が増え責任感も増し、さらには帰宅時間は遅くなったというのに、支給金額は変わらないどころか減っていたのです。せっかく部長に昇進したのに、これでは損した気分です。なぜこんなことになるのでしょうか。社会保険労務士法人こころ社労士事務所の香川昌彦さんに詳しく聞きました。

ー部長になると給料が減ることがあると聞きますが本当ですか

今回のケースは、残業代がポイントになるのだろうと考えます。労働基準法では管理監督者に対して、労働時間の制限や休憩・休日に関する規制等を受けないと定めています。つまり、Aさんの夫の会社では、部長職は管理監督者であると定義しているのでしょう。

そのため部長になる前は残業代が支給されていたものの、部長になったことで残業代が支払われなくなり、手取り金額が減ってしまったということです。一部の企業では管理監督者になると手取りが減るとして、管理職のなり手がいないという問題が生じるケースもあります。

ー管理監督者とはどのような存在なのでしょうか

労働基準法41条2号で管理監督者は「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」であると示されています。経営者と一体的な立場となると、役員クラスを思い浮かべる人もいるでしょう。一般的な部長職は管理監督者と呼べるのか、判断が難しいところです。

過去に ファーストフード店の店長が管理監督者ではないと判断され、裁判所から残業代を支払うよう判決が下されたケースもあります。店の運営は任されていても企業全体の経営という面では、一体的な立場とはいえないという判断がなされました。

Aさんの夫も部長職とはいえ業務内容を詳しく確認すると、ファーストフードの店長と同じような結論が下されるかもしれません。

ー部長への昇進はボーナスへの影響はありますか

賃金規程でボーナスの金額が基本給の〇倍と定められていれば、部長に昇進することで基本給が増えるため、その分支給金額も増えるでしょう。ただしボーナスの金額が一律でいくらとか、ボーナスは無しでその分月々の支給が多いとなっていれば話は別です。

いずれにせよ、Aさんの夫のように昇進したのに手取り金額が減るというのは、賃金規程の設定ミスとしかいいようがありません。仕事量も責任も増えているのに、年収が下がっていてはモチベーションを保つことは難しいでしょう。ネットやスマホが普及した現在であれば、従業員は自分で調べて「うちの会社の規程はおかしいのでは?」と気付くこともあり得ます。企業側には時代に合った賃金規程の策定を期待したいところです。

◆香川昌彦(かがわ・まさひこ)社会保険労務士 大阪府茨木市を拠点に「良い職場環境作りの専門家」として活動。ラーメン愛好家としても知られ、「#ラーメン社労士」での投稿が人気。

(まいどなニュース特約・長澤 芳子)

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