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近隣トラブル招く野良猫への餌やり 京都市の「まちねこ活動」が解決のヒントに【弁護士が解説】

まいどなニュース / 2024年12月2日 17時30分

空腹だろうからかわいそう。でも動物が嫌いな人もいます。野良猫へのエサやりは社会問題になっています※画像はイメージです(Haru Works/stock.adobe.com)

マンションの敷地内に猫たちが迷い込んできました。お腹をすかせていたのでご飯をあげたら、すっかり懐いてしまい、それから時々ご飯をあげるようになりました。ところが管理人から、餌やりは禁止だからすぐに餌やりを止めるようにと注意されてしまいました。私の行為は法律的に問題になるようなことなのでしょうか?

そんな相談にどんな法的助言ができるでしょうか。

まずマンションの敷地は、マンション住民の共用部分となります。管理規約には通常共用部分の管理方法が定められていますが、そこでは、ほかの組合員に迷惑や損害を及ぼす行為を禁じる、といった定めがあることがほとんどです。マンション敷地内での猫への餌やりは、この禁止事項に該当する可能性が高いと言えます。

餌をやるだけで誰にも迷惑をかけていない、と思われるかもしれませんが、食べ残しや食べ散らかしが野鳥や害虫などを呼び寄せますし、猫自身の糞尿による汚れや悪臭も発生します。猫が戯れることで何らかの物品が荒らされてしまうこともあるかもしれません。

そもそも、マンション住民には猫が嫌いな人も混じっているわけで、その人たちからすれば、わざわざ自分の嫌いなものを呼び寄せてくる行為は迷惑以外の何ものでもないわけです。犬や猫などの動物が苦手という人の割合についてはいくつか調査がされていますが、ほぼ20~30%位の割合で動物嫌いの人がいるという結果が出ています。ペット好きからすると想像以上に高い数字かもしれませんが、ペットを飼う場合、特に公共の場や共用部分でペットを行動させるときには、苦手とする人が3割くらいはいるのだという事実を忘れて行動してはいけません。

賠償命じられた判例も

このようなことでマンション共用部や、居住者の私物に汚損などの損害を与えてしまった場合や、汚損や悪臭が周囲の人達の受忍限度を超えた場合は、餌やりをしていた人が原因を招いたとして、不法行為が成立し、損害賠償を求められる可能性があります。破損・汚損した物品の賠償のみならず、被害を受けた人の精神的ストレスに対する慰謝料も認められることもありえます。

また、エサやりだけではなく、野良猫に住みかを提供していたような場合に、野良猫の飼い主と認められて野良猫が起こした被害の賠償を命じられたケースもあります(東京地方裁判所立川支部平成22年5月13日事件)。

餌やり問題は社会問題化しており、近年では多くの自治体で、不適切な給餌を禁止する罰則付きの条例が制定されています。私の執務する京都市では、全国に先駆けて「京都市動物との共生に向けたマナー等に関する条例」が制定され、一部報道では「野良猫餌やり条例」として話題になりました。

その中では、「所有者等のない動物に対して給餌を行うときは、適切な方法により行うこととし、周辺の住民の生活環境に悪影響を及ぼすような給餌を行ってはならない。」と定められています。違反者には必要な措置を取るよう勧告・命令が発せられ、それでも従わなければ過料の制裁を科すものとされています。このような罰則が定められるのは、それだけ、餌やりに関するトラブルが多発しているということでもあります。

京都市が支援する「ねこまち活動」

その一方で「野良猫に対する適切な給餌に係る活動」については支援が進んでおり、避妊去勢手術(TNR)の助成制度によるまちねこ活動が各地で進められています。京都市でも、前述の禁止令と同時に、京都市まちねこ活動支援事業を開始し、市が助言その他の支援を行うものとされています。

相談者の方も、一人で餌やりをするのではなく、マンション住民や行政、地域猫活動を行っている個人団体など、周囲の理解と助けを求め、連携して、地域猫として猫たちに関わっていくことが求められていると言えます。

◆石井 一旭(いしい・かずあき)弁護士法人SACI・四条烏丸法律事務所パートナー弁護士。近畿一円においてペットに関する法律相談を受け付けている。京都大学法学部卒業・京都大学法科大学院修了。「動物の法と政策研究会」「ペット法学会」会員。

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