10〜20代が韓国語を学ぶ理由は…「楽しそうだから」!? 英語と異なる“やる気”「学生のレベルが上がってきている」
まいどなニュース / 2025年1月21日 7時5分
アイドルのコンサート、ファンミーティング、ドラマやSNSでの発信を翻訳・通訳なしで「分かりたい」という声は高まるばかり。若い世代に人気と言われる韓国語ですが、実際はどうなのでしょうか? 大学での韓国語学習について専門家、関西外国語大学の担当者と学生に取材しました。
韓国語に興味がある10代は、約2人に1人?
無料語学アプリDuolingoの調査(※1)によると、語学学習を行っていないものの、何か言語を学んでみたいと思っている人のうち、10代の44.8%、20代の35.3%、30代の27.7%が「韓国語に興味がある」と回答。そして、語学学習をしている人のうち、10代の27.9%、20代の31.1%が韓国語を学んでいることが明らかになっています。
しかも、韓国語を「楽しそうだから」という娯楽目的で学習(※2)。英語を学び始める動機が、「学力アップ・試験対策」「人々との交流」「キャリアアップ」といった学業や職業的な機会の向上のためである理由と比べると、モチベーションが全く異なるようです。
大学で、第2外国語といえばフランス語、中国語、ドイツ語が主流でしたが、2021年12月に発表された『韓国語教育実情調査』(※3)によると、2020年度4年制大学795校中、教養科目や専攻での韓国語教育の実施校は453校。かなり多くの大学で韓国語を学べる環境に。
この調査の実施代表であり、90年代前半から大学での韓国語教育に携わってきた長谷川由起子さん(元・九州産業大学教授、元・朝鮮語教育学会会長)に大学での韓国語学習者の様子を伺いました。
大学入学前に韓国語学習に触れている学生が増加
――韓国語を学ぶ大学生の増減や傾向は?
初級(ハングルの読み書きができ、日常的な会話ができる)の学生に韓国語学習の動機を尋ねると、多くはK-POPや韓国ドラマをきっかけの一つに上げますが、それを第一の動機として挙げる学生は半数ぐらいで、この15年ぐらい学習者の数は大きく増減せず安定しているように思います。
ただ、中・上級と上がるにつれK-POP、韓ドラのファンが多くを占め、かつ学生のレベルが格段に上がってきています。SNSやネット環境の充実で韓国語とのカジュアルな触れ合いが増えたことや、語学アプリや韓国在住の韓国人にSNSで直接韓国語を学ぶシステムが利用しやすくなってきたことで、それらを利用する学習者の実力が突出しているように思います。
――レベルの高い人が、増えているのですね。
今でも初級学習者の多くは「韓国旅行で使える程度に学びたい」という動機を挙げますが、「韓国人とため口でしゃべりたい」という動機が少数派とはいえ確実に増えています。
なお、韓国語受講者数の増減については客観的なデータはありませんが「韓国で政権が交代して日韓関係が改善されたことで受講者数が増えたようだ」という話は聞いたことがあります。
――語学を学ぶ目的も変わってきているのですね。
ここ10年ぐらいで小中学校の頃からK-POP、韓ドラ、K-ファッションに浸っているという人が目立つようになっており、大学で初めて習う人との格差が広がっています。
コロナ前には一部にK-POPダンスにはまっているという学生がいましたが、ここ最近は韓国のコスメに興味を持つ学生が目立ちます。韓国で就職したいという人も、以前は極たまにしかいなかったのが、最近はちょくちょく見かけます。
――音楽やコスメといった韓国カルチャーが若年層世代に大きく影響を与えているのだなと感じます。
韓国語はいまや“大学の授業でほぼ全員が初めて学ぶ”という時代ではなくなりました。韓国語学習に強い動機づけがある学生ほど、授業の内容は既に知っていることである場合が多いのです。
一方で、おそらくクラスの半数以上は初学者であり、受講目的は単位を取ることにあると思います。単位取得が目的であることは悪いことでもなんでもなく、学びを得ることで単位を取得するのが大学での外国語教育の本来の姿です。
ーー初心者クラス内で、差が開いているのですね。
レベル別、目的別クラスが準備されていればいいのですが、そうではない大学(或いは高校)が大半ではないかと思います。独学で多くを知り、韓国語に頻繁に触れている学生にとっては、授業がさほど面白いと感じられないかもしれません。けれども、知っていると思っている事柄も、別の角度から眺められる、もしかしたら知らなかった事柄が含まれているかもしれないと観察するように受講することをお勧めしたいです。
教師の側も、初習者と既習者の両方に対応する必要があるので大変なのですが、いろいろと工夫している先生も多いので、学習者の皆さんも些細なことでも自分から積極的に学び取りにいってほしいと思います。
新しい学科を開設、韓国語のイベントも人気に
関西外国語大学(大阪府枚方市)では、これまで英語が中心の学科を展開していましたが、2025年4月に「アジア共創学科」を開設予定。英語運用能力はもちろん、韓国語をはじめとするアジアの言語から選択して修得し、それぞれの国の文化や社会を学べる環境を整える動きにあります。
また、韓国語専攻の学科が無いなか、今年の7月から『集まれ!韓国語を勉強している学生』というイベントがスタート。学内で「韓国語」に興味を持っている学生たちが交流する場として開催。どういった背景から企画されたのか、同大学アジアセンターにお話を聞きました。
独自で勉強している人の韓国語力が高く…
――集まりを呼びかけたきっかけは?
韓国語学修は学生からの需要があり、学生たちの韓国語の語学力がかなり高いことを知り、韓国語を使える環境を提供できればという思いで始めることになりました。
――どういった学生さんたちが?
本学には韓国語専攻が無いため、開講科目の[ハングルI/II]を受講したり、独自で勉強している学生など誰でも参加できる形で実施しています。毎イベントに20~40名が参加し、秋学期からは10名の学生(韓国人5名、日本人5名)がイベント企画運営を行っています。
韓国を好きになったきっかけを聞くと、「韓流」「文化が好き」「アイドルが好き」「韓ドラが面白い」「あの俳優が好き」などのキーワードをよく耳にします。そのため、文化を発端とした興味を示す学生が多くみられます。
――独学の方もいらっしゃるのですね。開講科目の履修者の推移などはいかがですか?
2020年度1575人、2021年度1757人、2022年度1169人、2023年度1082人、2024年度1684人とそこまで大きな変化は見られませんでした。
一方で、オープンキャンパスで行われた、2025年4月開設予定の英語国際学部アジア共創学科の学科説明会のアンケート結果を見ると、高校生たちの韓国語に対する関心が高いことがわかりました。受講する科目に韓国語があり、アジアに重点を置く学科として留学プログラムに韓国のラインアップが増えることが、既に韓国に興味を持っている高校生に魅力的に見えているようです。
――高校生からの関心も高いのですね。貴学から韓国への留学希望者は?
2021年度~2024年度までの留学派遣者数を見てみると、留学者数の増減は見られず、年度によってばらつきがあるように伺えます。2024年度の韓国への留学は、夏季語学留学(20日前後)11名、秋学期留学(1学期間)7名です。2025年度から新設される春季語学留学と春学期語学留学へは、計7人を派遣予定です。
◇ ◇
続いて、イベントの運営に携わっている外国語学部 英米語学科4年の久徳 怜莉さんにもお話を聞きました。
YouTubeで「モッパン」を見たことがきっかけ
――なぜ『集まれ!韓国語を勉強している学生』のイベントに参加を?
ネイティブの方と話ができて、スピーキングの練習ができる機会が提供されていたからです。
――参加されて、いかがでしたか?
学校ではネイティブの方と話せるイベントなどが今まであまりありませんでした。このイベントを知り、「もっとこの活動が活発になれば韓国語を勉強している多くの人が楽しんで学べるだろうな」と思いました。
「こういった勉強の場を増やしていくために、私もイベントの一員になって盛り上げていきたい!」と考え、メンバーとして活動していくことに決めました。
――イベントではどのような活動を?
秋学期から学生主体のイベントとなり、イベント名を「우리가치(ウリカチ)」としています。ウリカチには、「①我々一緒に」と、「②我々の価値」の2つの意味があるため、「我々と一緒に韓国の価値を学び・体験しよう」という意味を込めて名付けられました。
ウリカチでは、原則、月曜日と木曜日にイベントを開催しています。秋学期は6回開催しました。イベントでは、交流・スピーキングの場を提供し、曜日ごとにゲームの内容が異なり、韓国語のレベルに関係なく楽しめるゲームを企画しています。
イベントの初めはアイスブレイクで、自己紹介などを韓国語で話してもらいます。スピーキングに対するハードルを下げ、気軽に韓国語を話せる雰囲気作りを心がけています。
――元々韓国語に興味をもったきっかけは?
中学生の頃にYouTubeで먹방(モッパン:食事している様子を撮影した動画)を見たのをきっかけに、韓国文化に興味を持ちました。韓国の文化を知るにつれて、K-popやドラマが好きになり、言葉を理解したいと思うようになり学習を始めました。
――学習を続けるモチベーションは?
韓国語学習では、テキストを用いた勉強ばかりだけではなく、YouTubeなどに掲載されているK-pop和訳の動画などを見て勉強をしています。勉強へのモチベーションが下がった時は、歌詞を見て新しい表現に触れています。
そうすることで「韓国語は素敵だな」と再確認できます。他にも、K-popアイドルのライブに行き、生の韓国語を聞くことでリスニングの力試しができ、よりモチベーションが上がります。
――開講科目では韓国語の選択を?
はい。全学共通教育科目で履修しました。授業には、K-popが好きでハングル・韓国語を理解できるようになりたいという人から、TOPIK(韓国語能力試験)の高級(5・6級)を目指している人まで、色々な人が履修していました。韓国語だけでなく文化についても教えてくださり、とても楽しかった記憶があります。
――TOPIKやハングル能力検定などの資格取得は?
TOPIKを4級まで持っています。来年高級にチャレンジする予定です。
――将来的に韓国への留学や多言語を使う職業をお考えですか?
英語-日本語の通訳者を目指しているので、普段は英語の勉強をしています。キャリアを広げるために、韓国語-日本語の通訳もできるようになりたいと思っているため、韓国語のレベルも高めていきたいです。
◇ ◇
若い世代はアプリ、動画よりもChatGPT!?
無料語学アプリDuolingoが発表した語学学習の動向を調査した年次レポート『Duolingo Language Report 2024』(※2)によると、国内での人気度ランキングにおいて韓国語は英語に次いで2位。日本語話者向けの韓国語コースがはじまった2021年からこの国内順位をキープし続けています。
Duolingo年次調査(※1)では、語学の学習方法として、「アプリ」が根強い人気(58.3%)を誇り、次いで「YouTubeやNetflixなどの動画サービス」(37%)、「教本」(35.6%)と続くなか、最も伸び幅が大きかったのが「ChatGPT」(10.9%)で、昨年の6.1%からかなり活用度がUPしていることが伺えます。特に20代、30代では「対面レッスン」や「ラジオ」よりも利用者が多い結果も出ているそう。
さらに、「ChatGPTやBingなどの会話型AIツールを語学学習に活用したことがありますか?」の質問には13.3%が「はい」と回答。特に10代では27.8%、20代では15.0%が活用経験があると回答。10代の約4人に1人が活用経験があり、会話型AIツールが語学学習の新たな選択肢の一つとなりつつあることが浮き彫りになっていました。
取材を通して、想像以上に大学入学前の時点で韓国の文化に親しみを持ち、韓国語の学習に取り組み、大学生が明確な動機の下、様々な方法を試みながら韓国語を学んでいることが伝わってきました。みなさんインターネットデバイスを駆使しつつ、フェイストゥフェイス(対面)での会話や生の韓国語を耳にできる機会を自ら求めている姿も、顕著になってきています。
“語学は翼”という言葉のとおり、韓国語を学ぶ学生たちの将来への希望や選択肢が拡がっていく可能性を感じました。
(※1)Duolingoによる日本国内における語学学習に関する調査概要
調査対象:Duolingoユーザーに限らない日本語を母国語とする各都道府県男女100名 調査期間:2024年11月8日~11月11日 調査方法:インターネット調査 有効回答人数:4700名
(※2)Duolingo Language Report2024調査概要
2023年10月1日から2024年9月30日までの間にDuolingoで言語を学習した学習者の情報が含まれています。データは、学習者のプライバシーを守るため、国または言語ごとに集計されています。国ごとの集計は、国際的に認められた独立した自治体に基づいています。年齢と学習の動機に関するデータは自己申告であり、13歳未満の学習者はすべての分析対象から除外されています。また、学習者のプライバシー保護の観点から、Duolingo学習者数が5,000人未満の国はランキングより除外しています。
(※3)「日本における韓国語教育実情調査最終報告書(日本語版)」朝鮮語教育学会(2021年12月)
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・太田 真弓)
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