リアル大学生は「103万円の壁」見直しをどう受け止めている? 「今は食費や生活費で厳しい」「上限が上がればもっと働くかも」
まいどなニュース / 2024年12月18日 11時50分
「103万円の壁」の見直しが注目を集める中、学生に立ちはだかるもう一つの「103万円の壁」も見直されることが決まりました。
もう一つの「103万円の壁」とは、19〜22歳の扶養親族を持つ親に適用される「特定扶養控除」です。主に、大学生を子に持つ親などの所得税を軽減する制度です。ただしこの制度を利用するには、学生の年収が103万円以下である必要があります。
今の学生生活を知るために、現役の大学生へインタビューを実施しました。「アルバイトの収入がなければ、生活が苦しくなる」という学生の声。そして、学業とバイトの両立に悩む大学生にとって、「壁」の見直しが大学生活を変える可能性が見えてきました。
特定扶養控除と大学生のアルバイト
学生の多くが直面してきた「103万円の壁」。この金額を意識しながらアルバイトのシフトを調整する姿は、今や当たり前の光景となっています。
「今月はシフトを減らしたよ」
「12月にバイトしなきゃいけないから、シフトを調整してた」
年末になると、こんな会話が大学のキャンパス内でも聞こえてきます。年収が103万円を超えないように、細心の注意を払いながら働く学生たちの声です。
この「年収の壁」の正体は、特定扶養控除という所得税に関する制度です。19〜22歳の親族を扶養している親は、年間で最大63万円まで所得控除を受けられます。
たとえば、額面で500万円の給与をもらったとしましょう。このとき、
・特定扶養控除がないと、所得税額は366,500円
・特定扶養控除が1人分あると、所得税額は240,500円
となります。19〜22歳の子が1人いると、年間12万円以上も所得税が減るのです。所得税に加えて住民税も控除されるので、実際に支払う税金の額はより小さくなります。
ただし、この恩恵を受けるには、扶養されている子の給与収入が103万円以下でなければなりません。年収の上限を超えると特定扶養控除が外れてしまい、親の税負担が一気に増えてしまいます。
大学などでの学びを進めながら、自身の生活費を工面するために働く学生たち。しかし、働き方を考える際には、この「103万円の壁」を意識せざるを得ません。もう少し収入が必要なのに働けない。そんなジレンマを抱える学生も少なくありません。
今年12月に政府は、特定扶養控除における所得要件を見直すと発表しました。12月17日時点では、年収の上限を150万円に引き上げる見込みと報じられています。この税制改革は、学生たちの働き方に新たな選択肢をもたらすかもしれません。
インタビューから考える大学生活の今とこれから
いまの学生は、どのような生活を送っているのでしょうか。関西圏に住む大学生3人にインタビューをし、普段の生活の様子を聞いてみました。
3人に、まずは「どれくらいアルバイトで働いているの?」と質問してみました。
3人はそれぞれコンビニや飲食店、ファストフードの店舗で働いています。2人の学生は「週2~4日ほど働いて時給が1,000〜1,100円くらい、月に5万~8万円くらい稼いでいます」と話しました。もう1人の学生は、シフトマネージャーという立場を担っており「時給はもう少し高め」だと語ります。
アルバイト代の使い方を尋ねてみると、3人それぞれに異なりました。一人暮らしをしている学生からは「食費や生活費で厳しい」と語り、アルバイトがないとお金が十分でない様子が伝わります。一方で、自分の趣味や自動車の維持費に収入をあてていると話す学生もいました。
「103万円の壁」を話題に出すと、3人とも声を揃えて「年収が103万円を超えないよう気をつけている」と語りました。シフトを調整して、103万円を意識しながら働いているそうです。親から「103万円を超えないように」と言われている学生もいました。
一方で、特定扶養控除の見直しについては、学生の間で温度差が見られました。1人は「上限額が150万円くらいまで上がれば、もっと働くかもしれない」とのこと。一方で、「制度が変わる頃には卒業してしまうので、自分とは関係なさそうで興味がない」と率直に話す場面もありました。
大学生に直接インタビューしてみた印象では、特定扶養控除の見直しは、学生たちの働き方に大きな変化をもたらすかもしれません。学業と課外活動のバランスを考える上で、大学生により多くの選択肢を提供してくれる。そんな「103万円の壁」の見直しになることを期待します。
◆新居 理有(あらい・りある)龍谷大学経済学部准教授 1982年生まれ。京都大学にて博士(経済学)を修得。2011年から複数の大学に勤め、2023年から現職。主な専門分野はマクロ経済学や財政政策。大学教員として経済学の研究・教育に携わる一方で、ライターとして経済分野を中心に記事を執筆している。
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