声だけで買い物できる「ボイスコマース」が描く未来 2030年には市場1.5兆ドル…新たに生まれる仕事・キャリアは
まいどなニュース / 2024年12月19日 20時30分
近年、スマホにも搭載されている音声アシスタント機能の技術が発達し、スマートスピーカーなどが広く家庭にも普及し始めています。この機能を活用して、音声のみで顧客が購買行動を行う「ボイスコマース」が新たな購買方法として注目を集めています。
今回は、「ボイスコマース」の市場規模や活用事例から、「ボイスコマース」によって生まれる新たな仕事・キャリアについて一挙にご紹介します。
(1)ボイスコマースプラットフォームとは?
「ボイスコマース」とは「声だけで通信販売を利用し商品を購入する」という購売方法のことをいいます。声だけで商品を購入するという体験を提供するために「消費者の声を、コンピュータが認識し、注文を受け付ける」仕組みが、ボイスコマースプラットフォームです。ボイスコマースは、eコマースやMコマース(モバイルコマース)に続く新たな購入方法として活用が進んでいます。
(2)注目される背景と市場規模
注目される背景の1つには、アメリカの大手IT企業が、ボイスコマース事業に参入していることが挙げられます。
ボイスコマースプラットフォームは、2017年にアメリカのIT大手Amazon(アマゾン)が、スマートスピーカー「Echo」の販売を開始したことで注目を浴びました。スマートスピーカーの音声認識サービスを活用することで、消費者の声による情報だけで注文を受け付ける仕組みをつくっています。
それに続くようにGoogle(グーグル)でもボイスコマースプラットフォーム事業に参入。Walmart をはじめ、Costco Wholesale、Targetといった大手小売業者などがグーグルのボイスコマースプラットフォームを利用し商品販売を開始しました。日本においてもボイスコマースが影響を与える市場は大きいと期待され、新たなプラットフォームも登場しています。
グローバル・インフォメーション社が発表した市場調査レポート「ボイスコマースの世界市場」(出版日2024年9月27日)によると、2023年のボイスコマースの世界市場は推定405億米ドル、2030年には1479億米ドルに達すると予測されています。
このような市場規模の拡大と急成長から、ボイスコマースプラットフォームを利用し、商品を販売する事業者が世界的に増加しています。
(3)ボイスコマースプラットフォームの活用事例
日本国内でもボイスコマースの活用は進んでいます。例えば、アマゾンのボイスコマースプラットフォームを活用することで、消費者が一度オンラインで購入した商品を、スマートスピーカーに「もう一度購入して」と伝えれば再購入できる仕組みを作る小売業者や、音声アシスタントによる商品の説明を受けながら、購入も音声で行うボイスコマース体験ができる実店舗など、さまざまな取り組みがあります。
最近では、音声認識と電話を活用したボイスコマースプラットフォーム「テレAI」も登場し、商品に付随した電話番号に電話をかけ、「住所」「名前」「個数」を伝えるだけで通販が完了する仕組みをつくっています。
(4)ボイスコマースプラットフォームで、私たちの生活はどう変わる?
さまざまな活用がされているボイスコマースプラットフォームですが、今後どのような取り組みが期待されているか、特に変化の大きい業界についてご紹介します。
・通信販売
ボイスコマースが最も影響力を持つのがオンラインショップをはじめとする通信販売です。通常、音声で注文をする際は、注文を受け付ける事業者側もオペレーターを配置する必要がありますが、ボイスコマースプラットフォームは「自動音声が対応し、消費者の声だけで注文が確定」します。そのため、事業者側も新たにコールセンターなどを設置する必要がなく、人の手を介さずに注文を受け付けることが可能になります。ボイスコマースプラットフォームにより、多くの事業者が通信販売事業に参入することが予測されます。
スマートスピーカーを活用したボイスコマースプラットフォームでは、過去に購入した履歴や嗜好から、ユーザーが好むだろう商品をレコメンドしてくれます。自分では見つけられなかった好みの商品を発見できるかもしれません。
電話を活用したボイスコマースプラットフォームでは、使い慣れた電話で商品購入が可能なため、ITリテラシーに関係なく、全世代が問題なく利用できます。そのため、スマートフォンやPCの操作に慣れない高齢者などの、今までECを利用できなかった人も、ECサイトから電話で注文が可能になります。EC利用の裾野を拡大することで、買い物難民を救える仕組みとしても期待されています。
・商品の受発注
ボイスコマースプラットフォームを活用すれば、過去に仕入れたものを再発注する手間が省けます。現在でもFAXで注文したり、仕入れ先が営業時間内のうちに電話で注文したりする小売店もあると思いますが、ボイスコマースを活用すれば24時間365日いつでも手軽に注文できます。
・無人店舗
最近増えつつある無人店舗でもボイスコマースを活用できます。消費者は、陳列されている商品の具体的な説明を音声で聞きながら、購入もそのまま音声で行えて、後日指定した住所に商品が届きます。店舗側は在庫を置くスペースを確保する必要がないため、駅の構内やショッピングモールの一角、オフィスといった空間が限られた場所でも商品を販売することが可能です。
・エンタメ業界
ボイスコマースは自動音声が対応するため、エンタメ業界との相性が良いです。自動音声を芸能人やインフルエンサー、キャラクターの声に変えられるサービスも登場しており、ボイスコマースを通じて「推しの声で接客してもらいながら商品を購入する」という特別な体験が可能になります。今後は音声による販売限定のグッズが登場してくることも予測されます。
(5)ボイスコマースプラットフォームに関わる業界・仕事
ボイスコマースプラットフォームに関わる業界・仕事として、ボイスコマースプラットフォームの開発側と、活用し商品を販売する側に分けて紹介します。
ボイスコマースプラットフォームの開発側
ボイスコマースプラットフォームを構築する上で、自動音声認識は必須のシステムになります。そのためAI開発や、システムの構築などを得意とするIT業界は関わりが深いです。また、既存のボイスコマースプラットフォームを社会実装していくためには、多くの小売業が活用し、商品を販売していくことが必要となります。小売業者にサービスを伝え導入をサポートする代理店業も必要な仕事です。
電話を用いたボイスコマースプラットフォームでは、音声の確認でコールセンターから、ユーザーへのコールバックが生じることがあります。「受注はボイスコマースプラットフィームで行い、確認のためのコールバックは人が行う」という運用により、新たに通信販売を開始した小売業者からのコールバック需要が増え、結果的にコールセンター事業の総需要の増加が見込まれます。
ボイスコマースプラットフォームを活用し商品を販売する側
小売業は密接に関わります。ボイスコマース担当者という仕事が生まれ、ボイスコマースを通じた売上拡大がミッションとなります。スマートスピーカーを利用したボイスコマースプラットフォームが浸透すれば、SEO対策のように、スマートスピーカーからレコメンドしてもらうためのアルゴリズムの研究が必要かもしれません。また、自動音声を芸能人やインフルエンサー、キャラクターの声に変えられるプラットフォームを活用する場合は、著名人とのタイアップ商品企画といった仕事も必要になるでしょう。
(6)ボイスコマースプラットフォームの分野で築くキャリアパス
ボイスコマースプラットフォームに関わる分野において、様々な職種が増えることが予想されています。それぞれのプラットフォームの構築・運営に携わる仕事はもちろんのこと、企業における活用が進んでいくことで、これまでなかったようなキャリアパスが生まれてくることが予想されます。
<今後増えると予想されている仕事>
・プラットフォームの構築・運営
・既存のECサイトとボイスコマースプラットフォームの連結
・ボイスコマースを活用した消費体験のプランナー
・声と連動した商品開発
・人とボイスコマースプラットフォームとのハイブリッド形式のコールセンター
日本国内ではまだ成長過程にあるボイスコマースプラットフォーム。今後消費の中心となり声だけで商品を購入する世の中になるのか、利便性だけでなくエンタメと掛け合わせワクワクするような消費体験が生まれていくのか、各種サービスの共存や新たなサービスが登場するのかによってもキャリアの選択肢は変わってくるかと思います。ぜひボイスコマースプラットフォームの動向について注目してみてください。
この記事を監修
▽テレ株式会社
“さあ行こう!次のワクワクする世界へ”をスローガンに掲げ、AI技術と電話を組み合わせた音声通販プラットフォーム「テレAI」「eショップボード」を展開するボイスコマーススタートアップです。電話で自動音声に従って「名前」「住所」「個数」を伝えるだけで注文が完了できる仕組み、好きなタレントやキャラクターなどの「推しの声」で商品購入できる機能により、声による「消費の体験化・エンターテイメント化」を実現します。また、一般消費者向けに商品を販売する企業の新たな販売チャネルの構築を助け、既存通販事業の「コスト削減・売上増加」に貢献しています。
(まいどなニュース・20代の働き方研究所/Re就活)
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