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ブリーダーからペット購入 「血統書が送られてこない」「記載内容に誤りがある」 売買契約は解除できる?

まいどなニュース / 2024年12月28日 11時0分

ブリティッシュショートヘアの子猫(buritora/stock.adobe.com)

「血統書つきの猫だということで購入したのに、血統書がいつまで待っても送られてこない」「血統書に書かれているとおりならば、こんな大きさや毛並に成長するはずがない。この血統書の内容はウソなのではないか」ーこのような血統書にまつわるトラブルについてお話します。

血統書とは

血統書とは「血統証明書」の略語で、3世代~4世代前までの犬猫の性別・種類が系図のように記載されている、人間でいえば戸籍のようなものです。ただし、戸籍とは異なり、血統書は民間の任意団体が発行しているものです。血統書を発行している任意団体として、一般社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)が有名です。

血統書を渡してもらえないトラブル

「血統書付き」という約束でペットの売買契約をした場合、血統書は従物(民法87条)として主物のペット本体に付随してきますから、売主は買主に対してペットとともに血統書も合わせて渡さなければならない義務を負担します。

買主は当然の権利として「血統書を渡してください」と要求することができますし、渡さない場合は売主の契約違反となります。余談ですが、「ケージといっしょにお譲りします」という約束だったのにケージの譲り渡しがない場合も、同じ話になります。

この契約違反については、具体的には損害賠償を請求することになるでしょう。目安としては、血統書付きの純血種と血統書付きではない同じ種との市場価格の差が参考になるかと思います。

また、売買契約自体を解除してペットを返却すると同時に代金を返してもらう、という選択肢もあります。ただし、契約の解除は、契約や社会通念に照らして軽微な違反に過ぎないときは認められないとされています(民法541条但書参照)。ですので、一般家庭でペットとして飼う場合に血統書の交付がないからといって解除できるかは微妙なところです。実際、血統書がないからといってペットを返還することに抵抗を覚える方も多いと思います。

しかし、事情によっては血統書こそが重要なこともあります。

例えば動物取扱業者がブリーディング目的で購入する場合や、一般の方でも品評会に出場させる目的でペットを購入することもあるでしょう。そのような目的でペットを購入することを売主も知っていた場合であれば、血統書の不交付は軽微な違反とは言えないとして、契約自体の解除が認められる可能性があるでしょう。

血統書の記載に誤りがある場合のトラブル

血統書は、その子が純血種であることや、想定したとおりのミックスがされているかを確認するための証明です。特にブリーディングをする場合には必ず確認する必要があるものと言えます。

ですから、その内容に誤りがある場合、買主としては、売主に対し、購入したペットが契約内容に適合しないものとして、売主に契約不適合責任を問うことが考えられます。この場合、代わりのペットの引き渡しや代金減額請求、契約の解除、損害賠償請求といった選択肢が考えられます。

ほかに売主の詐欺(民法96条、刑法246条)を問うことも考えられますが、いずれも買主を騙そうとする故意が必要になります。売主が買主を騙そうとして、偽の血統を告げて血統書を作らせたことの証明は困難です。もしかしたら売主も別のブリーダーの説明や、既存の血統書の内容を信じていただけなのかもしれません。このような事情から、詐欺に問うことは難しいでしょう。

◆石井 一旭(いしい・かずあき)弁護士法人SACI・四条烏丸法律事務所パートナー弁護士。近畿一円においてペットに関する法律相談を受け付けている。京都大学法学部卒業・京都大学法科大学院修了。「動物の法と政策研究会」「ペット法学会」会員。

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