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クローン人間が出てくる近未来社会が舞台の映画「徒花―ADABANA―」 癒やしや瞑想を誘い、無常観に通じる音の正体は

まいどなニュース / 2024年12月28日 15時0分

自分のクローン(左)と対面する新次(井浦新)=©2024「徒花-ADABANA-」製作委員会 / DISSIDENZ

クローン人間を使った延命治療を国家が推進する近未来社会を舞台に、生きる意味を問う映画「徒花―ADABANA―」(甲斐さやか監督)が、岡山市のシネマ・クレール丸の内など全国各地で公開されている。井浦新さんや水原希子さん、三浦透子さん、永瀬正敏さんら豪華キャストが話題だが、もう一つの話題は音。臨済宗妙心寺派の禅寺・蔭凉寺(同中央町)にある、読経のときに鳴らす仏具・大鏧(だいけい)の音が使われているのだ。

物語の舞台は…。未知のウイルスで人口が減少した世界、上流階級の人間は、病に冒された際に身代わりとして自分のクローン人間が提供される。クローン人間は「それ」と呼ばれ、病を「移される」という設定。主人公の新次(井浦新)は、裕福な家庭に育ち、妻との間に娘もいるが、重い病に侵されて病院で療養中。クローン人間を使った延命手術を決断できず心が揺れる。臨床心理士まほろ(水原希子)の勧めで自分の過去の記憶をたどり始め、海辺で出会った不思議な女性(三浦透子)や、母(斉藤由貴)のことなど思い出す。これで一層不安が高じて、自分の「それ」に会いたいという思いが強まり…というストーリーだ。

篠原真祐さん(59)が住職を務める蔭凉寺は、築300年を超える本堂で25年にわたり、音楽ライブや、多彩な催しの場として提供してきた「音楽寺」。2001年、米国の名門ジャズレーベル「ヴァーヴ」初の日本人女性シンガーとしてデビュー、今回の「徒花」の音楽プロデューサーを務めたakikoさんも毎年のようにライブを開催してきた。甲斐監督からakikoさんを通じて「もっと低い大鏧の音が欲しい」という要望が伝えられ、篠原住職が、本堂で録音して送ったという。

この音を使ってメロディーを奏でるというより、音の響きを聞かせる使われ方だ。映画を見た篠原住職は、「『グゥオオ~ン‥』とうねるように音が響く。縁を叩いたりこすったりすることで生み出す癒やしや瞑想を誘うシンギングボウルの音のような使われ方をされていて、この作品の無常観とよく合っていました」と話す。

甲斐監督は「『徒花』は今の映画には珍しく静かな映画になっていると思うのですが、役者の息遣い、その場の気配を感じていただきたかったので、音楽を敷き過ぎないように気をつけました。蔭凉寺で録音された音は、まるでその場に元々あった音のように、さりげなく使用させていただいています。狙い通りにいったと感じます」と手ごたえを話す。

(まいどなニュース/山陽新聞)

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