ふつうは寿命2~3年なのに、なんと5歳半! ご長寿ジャンガリアンハムスターが教えてくれた「健康で長生きする秘訣」
まいどなニュース / 2025年1月29日 11時50分
ジャンガリアンハムスターの寿命はどのくらいかご存知ですか?大体2年くらいといわれていますが…。
私はある日、5歳半のジャンガリアンハムスターを診察しました。そのハムスターは森の妖精のような風貌でした(妖精とはスイス出身の16世紀の医師パラケルススが定義したところによると、霊でも人間でもなく、そのどちらにも似た生きた存在のこと)。
一般的なハムスターは被毛がフワフワで愛くるしいのですが、この高齢ハムスターの被毛はところどころ薄くなり、逆に一部分は長くなり、お爺さんの長くカールした顎髭のような状態でした。オーラがあるのですが、それは眩しい光ではなくいぶし銀のような...。お口の中の歯は黄ばんでいてクラグラで、腕は骨と皮だけのような...でもシャンとして動いていました。
私は感動して「どうやって育てたらこんなに長生きできるのですか?」と飼い主さんにお聞きしました。
すると「人間の食べるもの、ありとあらゆる食べものを与えています。野菜、果物、チーズ、ナッツ…うちのハムスターの寿命は代々5歳くらいですよ」と答えてくださいました。以前から薄々思っていたことが、やっぱりそうなんだ…と思った瞬間でした。
やっぱりそうなんだ…とは、つまり、人間やその他の動物では、食材の種類を増やすと、おかずの種類を増やすと、寿命が延びるのではないかと思っていたのですが、まさにそういうことなのではないでしょうか? 論文を探すと、多くの報告が見つかりました。ヒトで、おかずの種類を増やすと、食材の種類を増やすと、心筋梗塞や脳梗塞などによる死亡率が下がり、寿命が伸び、認知症のリスクが低下することがわかっています。
ヒトでは厚生労働省が日本人の食事摂取基準というものを発表していて、食べものの中に入っている栄養素を分類して1日にこれだけ摂りましょうという指針が示されています。でも、じゃあその栄養素を決まった量摂れば健康になりますか?長寿になりますか?明確な理由は言えなくとも、答えは「NO」だという感じがしますよね。でも、最近ではこの栄養素だけが入ったサプリメントのみを食べて生活しておられる方がいて、驚きます。その方の答えは「YES」なのでしょうね。
栄養は、便宜的に分類されて食事摂取基準として示されていますが、ヒトや動物にとって食べるべきものはそれだけではないはずです。実際の野菜や果物、肉などにはまだ役割のよくわかっていない物質も含まれています。それに、いろいろな栄養素が生命の中で複雑に絡み合ってはぐくまれて、野菜・果物・肉が出来ているのです。それ全体を食べると、よく「命をいただく」という表現がありますが、まさにそういうことなのではないでしょうか? 逆に、たとえばある野菜を成分分析して分かった成分をどこかから持ってきてシェーカーで混ぜてもその野菜にはなりませんね。東洋医学では、加工されていない新鮮な食材を食べるということは、「氣」もいただくことになると言います、氣とは、元気とか生命力とか、そういったものです。
ですから、食品成分分析表に載っていない様々なものを摂取するために、いろいろな食材を食べるべきだと私は考えています。また、楽しんで味わって食べる、しっかり咬んで食べる、ということはメンタルや脳の健康にも良いはずです。
当院では、犬猫にも「手づくりごはん」を推奨しております。それは、私たちが入手できる食材を簡単な調理をして犬猫に与えることですが、ときに「鹿肉が良いと聞いたので、毎日鹿肉を与えています」とか、「タンパク質を与えるのが良いと聞いたので、毎日ささみをトッピングしています」という方がおられます。「〇〇が犬(猫)の体に良い!」という情報だけで毎日、何年もそればかりを与えることは、お勧めできません。先に紹介したヒトの論文のように、食材の種類を増やすことが健康につながります。
ですから、手づくりごはんをされている犬猫の飼い主さん、食材はずっと同じものでは栄養が偏ってしまいます。ぜひ旬のもの季節のものを取り混ぜて、あれこれ与えてみてください。毎日違うものにする必要はありません。週替わりでも、その食材が無くなったら次に買うのは別のもの、といった感じで良いと思います。
ちなみに、ヒトの長寿研究で長寿に良いとされている食材は、以下の通りです。
緑黄色野菜、果物、魚介類、海藻、豆類、精製されていない穀物(白米ではなく玄米など)、発酵食品、一物全体(食材をまるごといただくという意味で、丸ごといただくことでバランスがとれており、穀物であれば精白していない玄米、野菜なら皮ごと、ついている葉ごといただくこと)
◆小宮 みぎわ 獣医師/滋賀県近江八幡市「キャットクリニック ~犬も診ます~」代表。2003年より動物病院勤務。治療が困難な病気、慢性の病気などに対して、漢方治療や分子栄養学を取り入れた治療が有効な症例を経験し、これらの治療を積極的に行うため2019年4月に開院。慢性病のひとつである循環器病に関して、学会認定医を取得。
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