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創作の桂文枝さん、古典の故ざこばさん 上方落語を全国区に押し上げ

毎日新聞 / 2024年6月17日 15時16分

18年ぶりに東京の寄席興行にトリで出演する桂文枝さん(右)と落語協会副会長で協会100年事業実行委員長の林家正蔵さん=東京都台東区の鈴本演芸場で2024年6月11日、油井雅和撮影

 誰もが知っていて、多くの人に親しまれている上方落語の人気者、2人の名が、続けて全国ニュースに登場した。桂文枝さんと桂ざこばさんだ。

 80歳の文枝さんは、18年ぶりに東京の寄席興行にトリで出演。自ら手掛ける「創作落語」を連日披露している。

 11日から始まった上野・鈴本演芸場の昼席(20日まで)は、平日の初日から長蛇の列ができ、気温の上昇を心配して演芸場側が正午の開場を早める日もあるほどだ。

 鈴々舎馬風さん(85)や林家木久扇さん(86)といった大ベテランから、春風亭小朝さん(69)、笑点メンバーの春風亭一之輔さん(46)ら人気者が脇を固め、豪華な顔ぶれでも木戸銭(入場料金)は普段と同じ3000円。寄席は初めてという人には、行列必至だがおすすめの特別興行だ。

 なぜ文枝さんが東京の寄席のトリを引き受けたのか。今年は「落語協会100年」の記念興行が続いている。実行委員長で協会副会長の林家正蔵さん(61)によると、小朝さんの提案で文枝師匠トリ公演の話が進み、文枝さんも、普段の独演会では出演料が高額なところ、「寄席の割り(出演料)でいいよ」と快諾してくれたという。

 文枝さんは1966年に桂小文枝(五代目文枝)に入門すると、翌67年にはラジオのレギュラーとなり、それからのラジオ、テレビでの活躍はご存じの通り。常に第一線を歩き続けてきた。

 高座では自作を「創作落語」と名付け、作った作品はこれまでに320作。坂本龍馬と近藤勇がゴルフで勝負をする「ゴルフ夜明け前」は、文化庁芸術祭大賞を受賞(83年)。料理店のいけすの様子を擬人化した「鯛(たい)」は、東西の落語家が手掛けるほどだ。

 わかりやすくて笑わせて、ほっこりさせる文枝さんの創作落語を東京で聴ける数少ない機会なので、ぜひ上野で並んで見ていただきたい。

   ◇

 文枝さんの興行2日目、12日の午後、これから高座に上がる寸前に、桂ざこばさんの訃報が伝わった。76歳だった。文枝さんもつらかっただろうが、顔にも出さず創作落語で寄席を沸かせたという。

 ざこばさんも文枝さん同様、「朝丸(ちょうまる)」時代からテレビで全国的におなじみの顔だった。地元・関西では「ざこびっち」と愛称で呼ばれるなど、若手にも慕われ、関西ローカル番組ではなくてはならないキャラクターだった。

 文枝さんとざこばさんといえば、ざこばさんの上方落語協会復帰を思い出す。

 文枝さんは2003年に協会の会長に就任。18年まで会長職を務め、さまざまな課題の解決に努めた。

 一方、ざこばさんは、協会の会長選出などで脱退した兄弟子、桂枝雀さんらを追って94年に協会を脱退していた。文枝さんらは、会長就任後、ざこばさんに協会への復帰を打診し、ざこばさんも願いを受け入れ、04年、10年ぶりに復帰することになった。

 文枝さんらは、半世紀ぶりに大阪に寄席を復活させようと奔走し、06年に定席の天満天神繁昌亭(大阪市)を開場。ざこばさんも出演し、文枝さんの思いに応えた。

 ざこばさんは、師匠の桂米朝さん、兄弟子の枝雀さんらの薫陶を受け、業界では「ニン」と呼ぶ、自分の人柄、キャラクターを生かした上方の古典落語を演じ続けた。

 その成果として、17年には文化庁芸術選奨文部科学大臣賞を受賞し、実に充実した高座ぶりだった。だが、その直後に脳梗塞(こうそく)を発症。最近も体調不良が続いていた。

 4月にあった、弟子のひろばさん(二代目力造)、ちょうばさん(四代目米之助)、そうばさん(二代目惣兵衛)の襲名会見が最後の公式の場となった。来春の襲名披露にざこばさんがいないのは寂しい限りだ。

 上方落語協会の会長選挙では、結果を待つ私たちに「米朝一門は◯人おるのに、わし◯票しか入っとらんやないか」、飲食店でお会いすると「あっ、新聞屋さんや。新聞屋さんの分は出さへんで」などと、いつもリップサービスで笑わせてくれたざこばさん。米朝一門として、米朝さん、枝雀さんの後を、強烈な個性で見事に駆け抜けた落語人生だった。【油井雅和】

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