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「慈善でなく自立を」 パレスチナで26年、伝統刺しゅうで女性支援

毎日新聞 / 2024年6月21日 10時0分

パレスチナ・イドナ村の女性による伝統刺しゅうをあしらったブックカバーを持つ水本敏子さん=広島市中区のカトリック幟町教会で2024年6月8日午後0時10分、武市智菜実撮影

 パレスチナのヨルダン川西岸地区にあるイドナ村の女性たちを、伝統刺しゅうを生かした小物作りで支える日本人が広島にいる。水本敏子さん(65)。現地で26年間、製作指導に取り組み、帰国後は県内を中心に女性らが縫った作品を販売している。

 交流は1995年にさかのぼる。子供の頃から通っている教会の縁で東京のNGOに派遣され、パレスチナに渡った。服飾の仕事経験を生かし自立支援をしようと計画したが、現地の生活環境が想像以上に劣悪だった。

 洋裁教室を開き、生地を買うお金がない女性らに何ができるかを考えていると、母から娘に代々受け継がれる伝統のクロスステッチをしたいという声が上がった。花や木など生活の中から生まれた伝統模様をそのまま生かし、色合いを工夫することで、新鮮なデザインのかばんやブックカバーを生み出した。

 本格的な収入創出につなげるため、協同組合も立ち上げた。当初は家事の合間に縫われた作品に米粒や母乳がついていて、働いたことがない女性たちに買い手を想像した「売り物」と意識してもらうのに腐心した。慣れない英語で伝票に品名を書き込む練習を繰り返し、図案のアイデアが出るまでつきあった。ようやくエルサレムの街角で実現したバザーで女性たちは作品を手に取り、木につるし、胸を張って売っていた。

 けんかもしたが「何もない村で明るく生きる姿に刺激をもらった」。収入を得た女性らは家を修繕し、子供に教育を受けさせた。苦楽を共にしたメンバーの娘が会計士学校を首席で卒業した時、自分のことのように誇らしかった。

 女性たちが自力で仕事を回せるようになり、3年前に帰国。県内の友人らが国内販売のため結成していた会で支援を続けている。5月のイベントも「使いやすいからまた来た」という常連客でにぎわった。会の名前はアラビア語で「平和」を意味する「サラーム」。広島から彼女らの人生を応援し続ける。【武市智菜実】

 ■人物略歴

水本敏子(みずもと・としこ)さん

 広島市在住。服飾会社を経て独立。36歳でパレスチナに赴き、「慈善ではなく、自立」をモットーに活動。

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