直島のようなナマズタに 廃墟丸ごとアート再生 芸術家が計画
毎日新聞 / 2024年6月22日 9時30分
福岡県飯塚市鯰田(なまずた)にアトリエを構える芸術家、そのだ正治さん(64)=同市在住=が、アトリエ近くの空き家をアートで再生させる取り組みを進めている。その名も「築90年の廃墟(はいきょ)を丸ごとアートに再生するプロジェクト」。目指すのは、県内外から多くの人を呼び込む“映(ば)える”観光スポットだ。
そのださんは庄内町(現飯塚市)生まれ。アトリエ「マサジアートギャラリー」を拠点に約20年前から鉄製のオブジェを制作し、飯塚や嘉麻、田川の各市に設置してきた。代表作に、飯塚本町商店街のそばに設置されている「大きなイス」がある。
同プロジェクト構想のきっかけは2019年、香川県直島町で開かれたアート関連イベントに携わったこと。小さな町なのに国内外から多くの人が来場したことに驚き、「アートで飯塚に人を呼び込みたい」と思った。
だが、新型コロナウイルスの感染拡大で飯塚市でもイベントが相次いで中止され、計画を一時延期せざるを得なくなった。昨年、コロナ禍が落ち着いたことから空き家探しを開始。アトリエから徒歩数分の場所にある古民家を譲渡してくれる人に出会い、6月上旬に取得した。
構想では、古民家の形状や置物を生かしつつ、一軒を丸ごとアート空間によみがえらせる計画で、新たに誕生する空間を地名にちなみ「ナマズタハウス」と命名。「見て、触って、中に入って楽しめる」体験型の作品を展示し、玄関に鉄で創ったナマズのオブジェを置くなど、耐久性に優れ加工しやすい鉄をふんだんに使う予定だという。
建物は10年以上誰も住んでおらず、当初は全体がツタで覆われ、床が抜け落ちたり天井が落ちたりしていたため、改修・補修費や家具などの撤去費をクラウドファンディング(CF)で募ることにした。1000万円を目標に5月下旬にCFを開始。19日現在で70万円超が集まっており、6月末まで受け付ける。
ナマズタハウスは、そのださんの誕生日の11月3日完成を目指しており、いずれは地域を回遊して楽しんでもらうための拠点にしたい考えだ。他にもアートで数軒の空き家の再生を考えているといい、「アートは、ほっとしたり、わくわくしたりするもの。この地域を回って楽しんでもらうきっかけとなれば」と話す。【岡村崇】
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