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少子化影響、ルールを変えて伝統継承 三重・伊雑宮の神事

毎日新聞 / 2024年6月23日 8時15分

本番に備えて田んぼで練習する子どもたち=三重県志摩市磯部町上之郷で2024年6月2日午後3時33分、下村恵美撮影

 伊勢神宮別宮の伊雑宮(いぞうぐう)=三重県志摩市磯部町上之郷=に伝わる国重要無形民俗文化財「磯部の御神田(おみた)」が24日に執り行われる。笛や謡(うたい)など田楽に合わせて早乙女らが御料田(ごりょうでん)に早苗を植える神事で、地元の「磯部9郷」が輪番で担ってきた。しかし、少子化の影響で今回は初めて当番ではない地区の子どもが奉仕に加わる。

どんな行事?

 神事は800年以上前から継承されてきたとされ、千葉・香取神宮、大阪・住吉大社とともに日本3大御田植祭の一つに数えられている。当番の地区では神事に参加する「役人(やくびと)」として小学生から大人までの28人を選んで奉仕する習わしだった。

 今年は上之郷と五知の両地区が合同で当番を務め、4月28日には実施に向けた役人らの顔合わせがあった。ここに恵利原地区と迫間地区の小中学生計4人も加わった。子どもの数が当番だけでは足りないからだ。上之郷地区の谷隆志区長(68)は役人たちに「神事を継承するために磯部9郷で助け合って奉仕していくことになった」と説明した。

 9郷の区長で作る「磯部の御神田奉仕会」は少子化も見据えて以前から対策を相談。当番だけで役人を賄えない場合「当番の地区にゆかりのある人」に加わってもらうと取り決めたが、それも見当たらず、他地区が応援することになった。

 奉仕会の山路正明会長(66)は「何とかして伝統をつなげたいと9郷が合意して決めた」と説明。谷区長は「当番以外から4人が出てもらえると聞いてうれしかった。9郷で助け合って何とか受け継ぐことができた」と喜ぶ。

悩んだけど「人がいないなら…」

 役人たちの練習は5月中旬にスタート。当番以外の地区の中学生3人は上之郷公民館である午後5時すぎからの練習にタクシーで駆け付けた。迫間地区に住む磯部中1年の小森雄斗さん(12)と畑颯さん(12)はともに謡の担当。小4で太鼓を経験した小森さんは「謡は歌詞が難しい」、今回が初奉仕となる畑さんは「役人をやってみたかった。ワクワクする」と意気込んだ。

 昨年の当番だった恵利原地区の磯部中2年、南海成さん(13)は今年も出てほしいと言われて悩んだが「人がいないのなら出よう」と決意。打楽器の大鼓(おど)を担当する。昨年は謡を担った同じ地区の磯部小5年、小山修弥さん(10)は古くから伝わる楽器「簓(ささら)」を演奏することになり、練習に力が入る。

 地区の垣根を越えて継承される神事。役人に所作を教える谷崎豊さん(75)は「輪番制なので、かつては適齢がある子役は一生に1回限り。今も選ばれるのは名誉なことなので、役人たちの誉れな姿を多くの人に見てもらいたい」と話した。【下村恵美】

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