出産費用自己負担なしへ 無痛分娩は対象外も 厚労省議論スタート
毎日新聞 / 2024年6月26日 18時0分
厚生労働省は、2026年度にも正常分娩(ぶんべん)での出産に自己負担をなくす検討を始めた。公的医療保険を適用し、経済的な負担をなくして少子化対策につなげたい考えだ。26日に始まった有識者検討会で保険適用の具体的な対象範囲を詰めるが、近年注目が集まる無痛分娩は対象外とし、保険と併用する案が浮上している。
出産費用の全国平均額は22年度で約48万2000円。施設ごとに料金を設定できるため都道府県で異なる。一番高い東京都は約60万円で、最も低い熊本県は約36万円と地域間格差は大きい。
政府は昨年4月から出産育児一時金を42万円から50万円に引き上げたものの、東京などの一部地域では自己負担が残る。物価高騰などの影響で人件費が上昇し、値上げする医療機関が相次いでおり、厚労省によると、出産費用は毎年1%前後上がっている。出産費用の上昇に対応するため、出産育児一時金は引き上げられたが、厚労省幹部は「保険適用することで一時金の増額と出産費用の値上げといういたちごっこを終わらせたい」と思惑を語る。
こうした状況を受け、政府は23年末に閣議決定した「こども未来戦略」で出産費用の保険適用を検討する方針を明記。全国一律の公定価格を設け、標準的な出産費用については1~3割の自己負担を求めない方向で検討している。
一方、無痛分娩は選定療養として標準的な出産費用に含めず、保険適用される治療などと併用できるが、自己負担で賄う案が検討されている。公定価格が50万円未満で設定される場合には出産育児一時金との差額分について給付する案もある。
少子化による妊産婦の減少で産科の経営は悪化の一途をたどっている。公定価格が現状よりも低く設定されれば、分娩から撤退する産院が出る可能性もあるため、制度化に際して慎重な議論も求められる。
26日に開かれた有識者検討会は産婦人科医や市町村長、子育て支援団体関係者らで構成。厚労省は、分娩施設を対象にサービス内容や費用の内訳などを把握するため、夏ごろにも実態調査に乗り出す方針を明らかにした。こうした調査の結果も踏まえ、年度内にも結論を得る方針だ。【松本光樹、神足俊輔】
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