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娘の入学式で心肺停止 「助けなければ」 バトンつなぎ、母親救う

毎日新聞 / 2024年6月26日 19時23分

感謝状の贈呈式を終え、山内由起子さん(手前中央)と夫健史さん(同右から2人目)を囲んで記念撮影に応じる保護者と教職員=大阪府岸和田市で2024年6月26日午前10時29分、中村宰和撮影

 大阪府岸和田市の小学校で4月、娘の入学式に出席していた母親が倒れた。心肺停止となったこの母親を、周りの保護者と教職員が協力して胸骨圧迫やAED(自動体外式除細動器)を使って助けた。救命のバトンをつないで尊い命を助けたとして、同市消防本部は26日、保護者と教職員計7人に感謝状を贈った。元気になった母親はこの日、「命を大切に日々を過ごしていく」と手紙を読み上げた。

 同市立大芝小の体育館で4月4日午前、次女(7)の入学式に出席していた山内由起子さん(44)は椅子に座っていて突然目の前が真っ暗になり、前に倒れた。「バタン」という大きな音がして、周りの保護者や教職員が異変に気付いた。保護者の中に萩原未夢さん(37)ら看護師が4人いて、すぐに駆け寄り、交代で胸骨圧迫を始めた。会社員の原陽介さん(38)は「AEDを持ってきて」と大きな声で叫び、119番した。隣にいた山内さんの夫健史さん(49)は名前を呼び続けた。

 教職員がAEDを取りに行き、ほかの保護者は救命処置をしやすいように椅子を移動させた。山内さんは心肺停止状態で、看護師でもある保護者がAEDを操作し、2回目の電気ショックで心拍が再開した。救急隊が到着した際には自発呼吸が認められ、同市内の病院に搬送された。次女は保健室で「お母さんが倒れた」と泣いていたという。

 診断の結果、山内さんに自覚症状はなかったものの不整脈があり、心臓から全身に血液を送り出せない心室細動のため心肺停止になったという。処置が早かったこともあり翌日には集中治療室から一般病棟に移ることができ、テレビ電話で家族と会話した。娘2人が「大丈夫?」「早く帰ってきて」と話すと、山内さんは「お母さんも頑張って早く退院するから、学校や家のお手伝い頑張ってね」と答えた。山内さんは手術を2度受け、不整脈による心臓突然死を予防する治療を受け1カ月後に退院し、医師から「奇跡です。後遺症もない」と言われた。

 この日の感謝状贈呈式で、雪本貴司消防長が「的確な状況判断と迅速な救命処置、連携活動で救命した」と7人の行動をたたえた。山内さんは「あの時、皆様がいらっしゃらなければ、今こうして生きている事は出来なかったと思います。助けていただいた命を大切に、これからも毎日笑顔で、子供たちの成長を見守って行ける様、日々を大切に過ごしてまいります」と感謝の手紙を読み上げた。

 感謝状を受け取った萩原さんは取材に、「看護師であっても、医師がいて医療機器がそろう病院とは違う場所での出来事だったので動揺した。同じ年齢の子どもを持つ親でもあり、『助けなければいけない』と必死で、体がすぐに動いて救命措置を始めた。元気になった姿を見て感動した」と思いを語った。原さんは「1人ではできなかった。みんなが協力したおかげ」と振り返った。

 この日、初めて7人と会った山内さんは「命の恩人の顔を一生忘れない。娘たちには、自分の母親が助けられたことを忘れないで、人を助けることができるような大人に成長してほしい」と話した。【中村宰和】

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