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公費解体直前に崩壊の酒蔵、再建目指す若おかみ 能登半島地震

毎日新聞 / 2024年6月27日 20時32分

築100年以上と言われる松波酒造店舗の公費解体=石川県能登町松波の松波酒造2024年6月26日午前10時6分、川原聖史撮影

 公費解体を数日後に控えた老舗酒造店は、1階部分から突然崩れ落ちてしまった。石川県能登町で150年以上の歴史がある「松波酒造」。築100年以上とされる木造2階建ての住宅兼店舗には、若おかみの金七(きんしち)聖子さん(48)の思い出が詰まっている。「潰れたけれど、けが人がいなくてよかった。解体はつらいが、先に進むためには必要なこと」と、酒蔵再建を見据える。

 24日午前11時半ごろ。金七さんや家族は、店舗の裏手にある酒蔵に残った梅酒の搬出作業などをしていた。家の中は床が割れて柱が傾き、全壊判定を受けていた。能登町からは「今週中には公費解体できそうです」と伝えられていた。

 1階部分の屋根が道路に崩れ落ちたのを目の当たりにして、金七さんは「土壁を使った建物なので、前日の大雨が影響したのかもしれない」と話す。

 元日の地震で、金七さんは店と棟続きの建物の3階にいて無事だったが、自宅兼店舗は大きく壊れ、がれきや瓦が道路に散乱した。店舗の奥にある酒蔵も倒壊し、醸造タンクが下敷きになって仕込み中の新酒が取り出せなくなっていた。

 それでも酒造りを諦めなかった。同県白山市の「吉田酒造店」などが音頭を取って始めた「能登の酒を止めるな!」プロジェクトに参加。酒米3トンを蔵から何とか搬出して「土田酒造」(群馬県川場村)などに託し、自らも赴いて酒造りに携わった。完成した酒は6月7日、金沢市でお披露目され、販売されている。

 さらなる倒壊から間もない26日朝、公費解体が始まった。作業員らは店舗前を通る車を誘導しながら、玄関部分の柱や壁が周囲に散乱しないよう取り壊していく。友達が遊びに来たり、酒蔵見学のお客さんでにぎわったり――。金七さんは、愛着のある建物と共にある記憶に思いを巡らせた。

 今回の地震で途方に暮れていた時、全国から届くメールに励まされたという。特に東日本大震災や熊本地震の被災者からの「私も地震で大きな被害を受けた。能登も絶対に復興できるから、頑張れ」といったメッセージには「東北や熊本の人たちに負けないよう、私も頑張ろう」と自身を奮い立たせていた。

 「時間はかかるかもしれないけど、能登が早く元に戻ってほしい。生まれ育った能登で酒造りを続けたい」と酒蔵の復興を模索する。そのためにも、県内外の蔵元などの協力を得ながら、1868(明治元)年の創業以来の伝統を守り続ける覚悟だ。

 石川県によると、地震による公費解体は6月24日時点で2万865棟の申請に対して2601棟で工事が始まり、911棟が完了している。【川原聖史】

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