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東北農林専門職大、開学3カ月 何を学んでいる? 授業に密着

毎日新聞 / 2024年6月29日 15時30分

「樹木実習」の授業中、真剣な表情でメモを取る学生=山形県新庄市の東北農林専門職大で2024年5月29日午前10時25分、長南里香撮影

 東北で初めて開設された農林業系の専門職大である東北農林専門職大(山形県新庄市)が開学して3カ月を迎える。農林業の中核となる担い手の育成を目指す県立の4年制大学だ。初年度に入学した学生たちはどんなふうに学んでいるのだろうか。授業をのぞいてみた。

 コナラやアカマツ、オニグルミなどの広葉樹やスギなどが茂る約22・7ヘクタールの演習林。100種類の樹木の枝や葉を採取して標本を作る森林業経営学科の「樹木実習」の授業が行われていた。

 「雄と雌がありますか」「これは低木ですか」。9人の学生から次々に質問が飛び、大久保達弘教授と上野満講師が、特徴や地域での用途などを丁寧に説明していった。

 学生たちははさみを使ってノイバラを採取。「果肉を除き種を乾かすと発芽率が上がる」と高校時代の部活動で得たという知識を話す学生もいた。大久保教授は「人数が少ないので対話しながら授業ができる。大人数ではこうはいかない」と少人数制のメリットを強調した。

 キャンパスは、約100ヘクタールの敷地に県が51億円かけて整備し、4階建ての教育・研究棟と2階建ての交流棟などがある。農林業経営学部に農業経営と森林業経営の2学科を設置。初年度は43人(定員40人)が入学し、このうち16人が秋田や埼玉、山口など県外出身だ。

 専門職大は2019年度に始まった新たな大学制度に基づき、職業直結型の教育を行う高等教育機関。卒業時は専門職の学位を取得できる。高い知識や理論とともに実践的なスキルの習得に重きを置くのが特徴で、同大では県内全35市町村と県外に計360カ所の実習先を用意した。2~4年次には、東北6県の農業経営体で各年間30日、計90日間通して地域と関わりながら体系的に学ぶ臨地実務実習に取り組む。世界市場での商談にも対応できるようにビジネス英語が必修科目で、希望すれば海外実習の機会も得られる。

 宮城県南三陸町出身で森林業経営学科で学ぶ工藤遼祐(りょうすけ)さん(19)は、「幅広く森林業について学びたい。山の恵みをうまく生かして地域が豊かに暮らしていけるようにしたい」と夢を語る。4年かけて山の管理技術やキノコの生産、森林環境教育などについて学ぶ予定だ。情報通信技術(ICT)活用や環境への負荷を減らす取り組み、農山村が抱える課題解決策を探る授業もカリキュラムに盛り込まれている。

 政府などによると、今後20年間で、国内で農業で生計を立てる基幹的農業従事者が4分の1に激減すると予想され、食料生産基盤の強化が求められている。一方、世界の人口は100億人を超える中で、新興国を中心に、サクランボや高級ブランド米「つや姫」といった高品質な農産物の商機はさらに拡大している。国内の人口減少と国際情勢の変化に対応できる若手人材の育成が急務となっている。

 元農林水産省農林水産政策研究所長の神山修学長(61)は「学生たちは目的意識を持ってしっかり勉学に励んでおり、順調に滑り出した。若者の力なくして、この国の農業は成り立たない」と今後の成長に期待を寄せている。【長南里香】

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