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「避難所のあり方見直しを」 災害関連死を防ぐ課題は 専門家に聞く

毎日新聞 / 2024年6月30日 8時0分

畑に畳やブルーシートを敷いて避難生活を続ける被災者。災害関連死を増やさないためには、自宅に帰った人や自主避難を続ける人への目配りも欠かせない=石川県輪島市で2024年5月31日、国本ようこ撮影

 能登半島地震による災害関連死の認定者数は27日時点で計70人になる見通しとなっており、建物の倒壊など地震の直接的な影響で亡くなった229人と合わせると死者は300人に迫る。関連死を抑制するために何が求められるのか。被災者支援が専門の兵庫県立大大学院、阪本真由美教授に聞いた。【聞き手・萱原健一】

 ――石川県は地震後広域避難を呼びかけたが、評価は。

 ◆地震直後、能登の避難所はどこも大混雑で、ライフラインも寸断され、病院に行く手段もなく、救急車も通れませんでした。断水し、食事もない状況で、あのまま1次避難所にいると亡くなるのではという人もいました。広域避難はやむを得なかったと思います。

 ――関連死を防ぐための課題は。

 ◆避難所にいる人の状況は分かるが、在宅だとつかめず、巡回して初めて大変な状況を見つけるということがありました。日ごろから行政の福祉サービスにつながっていない人もおり、災害時の特殊な状況で、行政側が情報を持っていない人にどうサービスを提供するかというのが悩ましい問題でした。

 ――夏が近づき猛暑や豪雨が危惧される。

 ◆懸念しているのは、避難所閉鎖の早さです。避難所がどんどん閉鎖され、修繕されていない傾いた自宅に戻り、水も出ない家で暮らす被災者が増えています。トイレも使えず調理もできないのに、そこに支援が届きにくい状況。まさに関連死の予備軍です。大雨が降れば、壊れた屋根から雨漏りがしてさらに被害が拡大する恐れもあります。今こそ避難所のあり方を見直してほしいです。

 ――避難者の疲れはたまっている。

 ◆生活環境が整わない状況の生活が関連死につながるというのは、過去の災害対応の経験があるから分かることです。しかし、被災者は今の自分の生活で精いっぱいで、過去の教訓に思いをはせる余裕はありません。一方、復旧が進むにつれ、仮設住宅にも入れず避難所に残っている人は「取り残されている」という感情に襲われ、精神的な落ち込みが大きくなってきます。

 ――行政はどうすべきか。

 ◆早く避難所を解消したいという被災自治体の気持ちも分かりますが、自宅の安全が確保されるまで避難所は必要でしょう。無理に壊れた自宅に戻すのではなく、自宅が修繕されるまでの間、「ここにいていいんだよ」と被災者が思える場所を確保しないといけないと思います。職員の人手が足りないのなら、民間団体との連携など職員不足を補う方策を考えなければならないでしょう。

「2次」「1・5次」への避難呼びかけ

 災害関連死を少しでも抑えようと、石川県は1月から、生活環境の整った旅館やホテルなどを宿泊施設とする「2次避難所」や、2次避難所へのつなぎとなる「1・5次避難所」への避難を呼びかけた。県によると、多い時には、2次避難所に5200人超、1・5次避難所に360人超がいた。市町が設けた「1次避難所」には1月4日時点で約3万4000人いたが、その後、避難所を利用する人は減り、今月25日時点では2次避難所で1222人、1・5次避難所で28人、1次避難所などで1038人が生活している。【深尾昭寛】

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