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別府ひき逃げ2年 ネット用チラシ無償で作製 地元デザイナーの思い

毎日新聞 / 2024年6月29日 20時37分

YUKIさんが作製した名刺サイズのカード=YUKIさん提供

 大分県別府市で2022年6月に男子大学生2人が死傷したひき逃げ事件は、29日で発生から2年が過ぎた。道路交通法違反(ひき逃げ)容疑で全国に指名手配された八田與一(よいち)容疑者(27)=同県日出町=に関するものなど情報提供は5月末までに計5444件が県警に寄せられたが、逮捕には至っていない。同市のグラフィックデザイナー、YUKIさん(39)は一日も早い解決につなげようと独自のネット用チラシを無償で作製し、さらなる情報提供を呼びかけている。

 事件は22年6月29日午後7時45分ごろ、同市の県道交差点で起きた。軽乗用車が、信号待ちをしていた2台のバイクに追突。バイクに乗っていた2人がはね飛ばされ、当時19歳の男子大学生が死亡し、別の男子大学生(22)も軽傷を負った。県警は、軽乗用車を運転し、現場から逃走したとして八田容疑者を22年7月に指名手配し、警察庁も23年9月に重要指名手配に指定した。

 県警が指名手配した当時、印刷会社に勤務していたYUKIさんは、県警の依頼に基づいて情報提供を呼びかけるチラシの作製に携わった。だが、その後も未解決であることが気になっていた。

 23年5月、インターネットでツイッター(現X)を閲覧していた際、亡くなった大学生の遺族とその友人らが結成した「早期解決を願う会」の投稿が目に留まった。街頭での広報活動を通じて八田容疑者に迫ろうとする内容で「事件を風化させたくない」と情報提供を懸命に呼びかけていた。

 「放っておけない」。YUKIさんは、同会にボランティアで協力したいと申し出た。指名手配の際に作製したチラシのデザインをネット用に刷新することを発案。完成したネット用チラシは、八田容疑者の顔写真に「隠れてないで出てこい」などの文言を大きな文字で付けて目立たせた。文言は「これは、道交法違反ではない 殺人事件だ!」「捕まる準備は出来ているか?」など毎月、変更する度にXに投稿し、拡散を呼びかけている。

 さらに八田容疑者の顔の部位を拡大した写真を複数掲載した名刺サイズのカードも23年5月から毎月約1000部作製。これまで計1万4000部を別府市内の交番や企業で配布した。持ち運びできるサイズにしたことで、受け取った人が容疑者らしき人物を見かけた場合にすぐに見比べられるようにした。

 YUKIさんが協力する背景には、自身の闘病生活と家族らに支えてもらった経験がある。印刷会社にいた20年春、難病の「潰瘍性大腸炎」と診断された。現在も治療中だが、当時は血便と腹痛に悩まされ、出勤ができなくなるほどだった。子供も小さく、将来に不安を感じたが、妻から「私が働けばよい」と励まされ、会社の社長らも親身になって支えてくれた。当時を思い出し「自分も誰かの支えとなる行動をしたい」と一歩踏み出したという。

 その後、治療と仕事を両立させるため、時間の融通が利きやすいフリーランスになった。病気で遠方に行けないため、遺族らと活動を共にすることはなかなかできないが「デザイナーとしてできることはある」と信じている。その気持ちに対し、遺族の友人は「感謝している」と語る。

 YUKIさんは「やることは変わらない。遺族らにずっと寄り添っていく」と話す。【山口泰輝】

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