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「真犯人は別」荒唐無稽な主張繰り返した被告 大分・宇佐親子強殺

毎日新聞 / 2024年7月2日 15時52分

山名さん親子が殺害された現場=大分県宇佐市安心院町で2021年10月22日午後3時13分、辻本知大撮影

 「白いプロレスマスクをかぶった男の案内で(現場近くまで)車で行っただけ」「真犯人は別にいる」――。大分県宇佐市の住宅で2020年2月に親子2人が殺害された事件で強盗殺人などの罪に問われ、2日の大分地裁判決で死刑を言い渡された佐藤翔一被告(39)=大分市。公判では無罪を訴え続けたが、その主張は荒唐無稽(むけい)とも言える内容が目立った。

 事件は20年2月2日夜、宇佐市安心院町荘(あじむまちしょう)の農業、山名高子さん(当時79歳)方で起きた。山名さんと、長男で郵便配達員の博之さん(同51歳)が殺害され、カーテンが血に染まっているのを翌日、近隣住民が見つけた。

 検察側は公判で、遺体の詳しい状況を説明。凶器として菜切り包丁や千枚通し、はさみなどが使われ、2人にはそれぞれ50カ所以上の傷が残されていたことを明らかにした。死因は、山名さんが首、博之さんは肩を刺されたことによる失血死で、博之さんは発見当時、後頭部に木製のはしが刺さったままだったという。

 司法解剖した法医学者は法廷で「千枚通しの傷は死後のもの」と証言。担当検事は、その常軌を逸した行動を「2人をめった切り、めった刺しにし、既に息絶えるか、その直前の2人に繰り返し攻撃し、とどめを刺した」と述べ、凄惨(せいさん)な現場だったことを伝えた。

 博之さんの妻は、葬儀で見た博之さんの顔が「眉間(みけん)にしわが寄り、口はへの字。この世に未練があるようだった」と話し声を震わせた。山名さんの次男は、遺体と対面した際のことを「思い出すと今でも感情が壊れそうになる」と吐露した。

 一方、佐藤被告は事件の詳細が明らかにされたり、遺族が率直な思いを語ったりしても全く表情を変えず、無罪を主張してきた。

 佐藤被告によると、ユーチューバーを名乗る覆面姿の男性3人組と事前に約束し、事件当日の夜に合流。うち1人を佐藤被告の車に乗せて現場近くまで送ったという。佐藤被告は到着後、車に1人で残ったが、同乗した男性が戻ってきてトランクに血の付いた服や靴など複数の荷物を積み込み、処分するように依頼されたと主張。佐藤被告は「犯人は3人組だ」と訴えた。

 これに対し検察側は「3人など存在せず、被告はうそのストーリーを創作し続けてきた」などと指摘。佐藤被告が3人の名前や動画の投稿先などを覚えておらず、連絡先も交換していなかったことなども不合理だと主張していた。

 山名さんの次男は意見陳述で「佐藤被告が犯人だと確信している」と発言した後、法廷に響き渡るほどの声で「母と兄のことを思うと胸が張り裂けそうになる。真実を語り、心から謝ってほしい」と訴えた。佐藤被告は次男の姿をじっと見つめるだけだった。【神山恵】

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