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「事故ではなく“事件”」知床観光船沈没、提訴した遺族らの怒り

毎日新聞 / 2024年7月3日 19時40分

知床観光船沈没事故で集団提訴のため札幌地裁に向かう乗客家族らの弁護団=札幌市中央区で2024年7月3日午前10時1分、貝塚太一撮影

 北海道・知床半島沖で乗員乗客全26人が死亡・行方不明となった観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」の沈没事故で、乗客14人の遺族ら29人は3日、運航会社「知床遊覧船」と桂田精一社長(61)に計約15億円の損害賠償を求める集団訴訟を札幌地裁に起こした。原告側は、同社で法令・規定違反が常態化しており、安全管理体制の欠如が事故を発生させたと訴えている。

 事故を巡り、乗客の遺族らが会社側を提訴するのは初めてとみられる。

 訴状などによると、カズワンは2022年4月23日午前10時ごろ、北海道斜里町のウトロ港を出航。同社が海上運送法に基づき作成した運航基準では、風速8メートル以上、波高1メートル以上の場合に出航中止と定めていたが、当日の気象庁予報は風速15メートル、波高2~2・5メートルだった。さらに船首付近のハッチに不具合があり、ふたが固定されない状態だったのに悪天候で航行したため、海水がハッチから入り、同日午後1時25分ごろ、船が沈没したとされる。

 原告側は、運航管理者・安全統括管理者だった桂田社長には、法令や安全管理規定・運航基準を順守すべき極めて高度な注意義務があったのに、安全確保の意識が著しく希薄なまま漫然と営業を継続し、ハッチを修理したり出航を中止させたりすることなく、事故を発生させたとしている。

 出航判断について「桂田社長は、船長が運航基準違反の出航を提案したかのように供述している」と指摘した上で「船長が出航したのは、桂田社長が出航を示唆したか、それまでの経験から船長が社長の意向をそんたくしたと推測される」と主張した。

 提訴後に札幌市内で記者会見した弁護団は「不幸な偶然によって起こった事故ではなく、組織の中でやるべきことをしなかったために必然的に起きた“事件”。ご家族はいまだに怒りに打ち震えているが、せめて損害賠償の問題だけでも早期に解決し、一歩でも進みたいと考えて提訴を決断した」と説明した。

 事故を巡っては昨年9月、国の運輸安全委員会がハッチからの浸水や、同社の安全管理体制の欠如が発生の要因だとする最終報告書を公表。第1管区海上保安本部などが桂田社長らを業務上過失致死の疑いで捜査している。桂田社長は事故直後に開いた記者会見を最後に、公の場に姿を現していない。【伊藤遥、後藤佳怜】

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