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「声上げられない苦しみ」に司法の光 強制不妊、問われる国の覚悟

毎日新聞 / 2024年7月3日 20時50分

最高裁判決を受けた記者会見で笑顔を見せる原告の鈴木由美さん(右)と小林宝二さん=東京都千代田区で2024年7月3日午後、猪飼健史撮影

 戦後最大の人権侵害とされる強制不妊手術被害の闇にようやく司法の光が差し込んだ。最高裁大法廷は旧優生保護法を違憲と認め、被害者の救済を怠ってきた国を断罪するだけでなく、「声を上げられない人々」の尊厳を取り戻す歴史的な判決を言い渡した。

 これまでの訴訟で、国は旧法の違憲性について見解を示さないまま、手術から20年で損害賠償請求権が消滅する「除斥期間」を理由に被害者側と争い続けた。被害者が長く声を上げてこなかったため、国の責任は問われないという論法だ。

 だが、沈黙してきたのは怠慢からではない。手術された被害者の多くに障害があり、被害そのものを認識できなかったケースもあった。たとえ認識できたとしても、障害を「不良」と捉えて差別を助長する旧法の下では訴え出ることが不可能だった。声を上げられないこと自体が苦しみであり、被害そのものだった。

 最高裁は被害の実情を踏まえ、時の経過のみをもって国が賠償責任を免れることを「権利乱用」と断じ、弱者を守る姿勢を貫いた。判決は、手術を受けた全被害者にも救済の可能性を広げており、画期的だ。

 かつて全会一致で旧法を成立させた国会は責任を認め、被害者へ一時金320万円を支給する法律を制定しているが、決して十分とは言えないことは判決も指摘した。国は被害者に速やかに謝罪し、補償しなければならない。過ちを二度と繰り返さない覚悟が問われている。【遠藤大志】

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