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もし宇宙で歯が痛くなったら? 地球外での「QOL」高める研究進む

毎日新聞 / 2024年7月7日 9時0分

宇宙歯学の研究を進めている愛知学院大=名古屋市千種区で2024年6月26日午前10時28分、川瀬慎一朗撮影

 もし宇宙で歯が痛くなったらどうするか――。そんな問いに答える宇宙空間での歯学研究が、愛知学院大大学院(名古屋市千種区)で進んでいる。有人月面探査「アルテミス計画」など長期の宇宙滞在や、一部の民間人宇宙旅行者が増えつつある中、宇宙におけるQOL(クオリティー・オブ・ライフ=生活の質)を追求する。

 アルテミス計画は、2030年代に月面基地で人間が長期間暮らす計画だ。今後さらに、資産家など民間人による宇宙旅行も増えることが想定され、宇宙でも快適に飲食したり、しゃべったりできることが重要となってくる。

 宇宙環境における歯の研究に取り組むのは、2023年12月に同大大学院歯学研究科の未来口腔(こうくう)医療研究センターに設置された「宇宙歯学研究部門」だ。同部門長の前田初彦教授=口腔病理学=は「宇宙で歯科トラブルが発生しても歯科医院はない。虫歯の進行やかむ力の変化など、宇宙環境のもたらす影響の研究は進んでいない」と研究意義を語る。

 同部門では、宇宙空間が口腔細菌に及ぼす影響や、低重力が口腔周辺の筋肉に与える影響などの研究を進めている。地球上の歯科治療では水を使った器具を使用するが、宇宙では水は貴重でスペースも限られるため、宇宙環境に適した治療法や器具の開発を目指す。

 愛知学院大では、既に月の重力を再現できる「微小重力環境細胞培養装置」を導入。歯周病菌などを培養し、電子顕微鏡などで重力の影響を調べている。

 さらに、民間人が宇宙旅行に行く際、口腔環境がどの程度なら搭乗可能かなどを定める「歯科ガイドライン」も作成し、文部科学省に提出予定だ。水を使わず歯磨きできる手法の開発も目指しており、水がいらない口腔ケアなどは在宅医療や被災地での活用も期待できるという。

 宇宙歯学研究部門設置に先立つ23年9月には「日本宇宙歯学研究会」を学内に立ち上げた。広島大や岡山大など歯学部を持つ全国の13大学や、京都大の宇宙研究部門などが参加。研究会ではJAXA(宇宙航空研究開発機構)やNASA(米航空宇宙局)などとも協力して研究を進める。

 前田教授は「日本から宇宙歯学のスタンダードを作りたい。宇宙環境での生活をより快適にし、地球上の歯科医療技術にも還元したい」と意気込む。

 13日には研究会の初総会を同大で開き、JAXAの宇宙飛行士健康管理主任が講演する。【川瀬慎一朗】

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