「Kカルチャー」で日本に熱視線の韓国 狙いは地方都市への誘客
毎日新聞 / 2024年7月7日 12時0分
Kポップやドラマ、映画をはじめとする「Kカルチャー」を前面に打ち出し、韓国が日本に熱い視線を送っている。狙いはインバウンド。オーバーツーリズム(観光公害)が懸念されるソウルではない、地方都市への誘客だ。
世界で人気を集めたドラマ「私の夫と結婚して」のメインキャストで人気俳優のナ・イヌさんがステージに現れると、会場は割れんばかりの歓声に包まれた。「どえりゃー、来とるがや」と名古屋弁を繰り出すと、客席はさらに沸いた。
韓国観光公社大阪支社が6月、名古屋市中区の「Niterra日本特殊陶業市民会館」で開いたPRイベント「KOREA DRAMA旅 2024 韓国への一歩」。ナ・イヌさんはトークショーのゲストとして出演した。
観客は事前の抽選で選ばれた2000人。23~24年に訪韓したか、予定があることを旅券などで証明できる人が優先された。全国から定員の6倍、1万2000人の応募が殺到した。
トークショーでナ・イヌさんは、ドラマやバラエティー番組の撮影で訪れたエピソードを交え、お勧めの観光スポットを紹介。記憶に残る場所として、韓国でも“知る人ぞ知る”景勝地、和順郡の「和順赤壁」などを挙げた。
また地方のグルメに目がないといい、安東市の鶏の甘辛煮込み「安東チムタク」や、丹陽郡の「にんにくトッカルビ」などについても熱く語った。
会場ロビーには映画やドラマの名場面がパネル展示され、それぞれロケ地が表示。「行ったよね」と盛り上がる人たちもいた。
公社によると、23年に訪韓した日本人観光客は231万6000人。コロナ禍の影響を受ける前の19年(327万1000人)に比べ、7割まで回復した。中国やアメリカを抑えて最多で、日本が1位になったのは11年ぶりだ。
背景には、Kカルチャーへの関心の高まりがあるとみられる。過去にも「冬のソナタ」などがブームになり、“聖地巡礼”する旅行者はいた。ただ、最近の広がりの特徴は、ネットフリックスなどのストリーミングサービスの普及だ。
「以前はドラマや映画を視聴できる時期の違いから、韓国と日本でブームにタイムラグがあったが今は同時。現地でまさにホットな場所やレストランを一緒に楽しめます」と広報担当者は説明する。新型コロナ下で家族でドラマを見る機会が増え、ファンの年代層が広がったという。
韓国も日本と同様、観光客はソウルなど一部に集中しがち。公社ではインバウンドを地方に波及させたいとプロモーションに力を入れている。ロケ地は地方の景勝地が多く、うってつけのようだ。「日本で知られていない場所はまだまだたくさんあり、リピーターになってもらえる可能性もある」と期待する。
イベント会場は一見して9割超が女性。会社員の女性(27)は「新型コロナで外出自粛中、ネットフリックスで『愛の不時着』にはまって以来の韓流ファンです」。同行した友人女性(43)も「今年すでに2回、韓国の地方都市を訪れた」。
韓流ファンになったきっかけが「冬のソナタ」と、ボーカルグループ「東方神起」だという74歳女性は「日本にこんなに韓流ファンがいると思うと感慨深い。韓国って、行って帰ってきたらすぐに行きたくなるのよ」と笑った。
公社は「Kカルチャーに対する高い関心と需要を、実際の訪韓につなげるべく、日本人旅行客をターゲットにした誘致にさらに力を入れていきたい」としている。【太田敦子】
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