昭和30年代の福岡・朝倉、よみがえる 地元で写真展が開催中
毎日新聞 / 2024年7月13日 9時30分
昭和30年代の旧朝倉町(現福岡県朝倉市)の農村風景や人々の生活を記録した写真家、故田中富美男さん(2008年に83歳で死去)の写真展が同市の甘木歴史資料館で開かれている。田中さんの約2万4000カットあったネガフィルムを地元のボランティアがデジタル化し、企画展の開催につながった。
田中さんは1925年、福岡市に生まれ、旧制福岡中(現福岡高)卒業後、航空機のエンジニアを志した。しかし、太平洋戦争後に日本の航空機産業が壊滅すると、父親の故郷だった朝倉に移住。旧朝倉町役場などに勤めながら当時はまだ珍しかったカメラで子供3人の成長を撮り始めた。写真は昭和30年代(55~64年)を中心に約2万4000枚が残り、当時の暮らしや家族の日常、朝倉の風景が記録されている。
しかし、写真は市町村の広報誌などに多く使われきた一方、ほとんどがネガフィルムで保管されていた。そこで立ち上がったのが、朝倉地域コミュニティ協議会会長の篠崎英一さん(75)だ。
同市比良松地区の出身の篠崎さんは、全国転勤があった化学メーカーを退職後、地元にUターン。地域のまちづくりなどに携わる中で、戦後の農村風景の変遷を切り取った写真にほれ込んだという。
すぐに田中さんの遺族に連絡を取り、2014年秋から約1年かけて、約2万4000カットあるネガフィルムをデジタル化し、そのうち約6000枚を甘木歴史資料館などに提供。これまで計7回、田中さんの写真の魅力を伝えようと公民館などを使って個人で展示会を開いてきた。
同資料館はこれまで写真を朝倉の民俗資料などを紹介する常設展示として活用してきたが、今回初めて企画展「朝倉のこどもたち-地域の原風景-」として開催。牛がリヤカーを引く様子や三連水車がある水路で川遊びをする子供たち、ロウソクの原料となるハゼを収穫している姿など約40点が並ぶ。
篠崎さんは「田中さんの写真には時代を記録した史料としての価値と写真作品としての芸術的価値の両方がある。後世に残さなければならないという使命を感じる」と語った。
同資料館での展示は8月18日まで(入館無料。月曜休館、祝日の場合は翌日。午前9時半~午後4時半)。柳川市の柳川古文書館(10月2日~12月1日)でも展示する。また7月21日午後2時、朝倉市中央図書館で篠崎さんが作品の魅力を語る講座が開かれる。【長岡健太郎】
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