防衛省、117人を懲戒処分 特定秘密やパワハラなど 海幕長は退職
毎日新聞 / 2024年7月12日 10時42分
防衛省・自衛隊で国の安全保障に関わる「特定秘密」の不適切な取り扱いなどが相次いで発覚した問題で、同省は12日、117人を懲戒処分にした。海上自衛隊が113人で大半を占め、指揮監督が不十分だったとして酒井良海上幕僚長を減給1カ月(30分の1)とした。また延べ103人を訓戒や注意とし、同省が公表した懲戒処分や訓戒などの対象者は合わせて218人(延べ220人)という異例の規模になった。いずれも同日付。
この日の閣議で、引責辞任の意向を示していた酒井氏が退職し、斎藤聡自衛艦隊司令官を後任とする人事が承認された。木原稔防衛相は閣議後の記者会見で「防衛省、自衛隊の活動は国民の信頼あってだ。今回の事案は信頼を裏切る決してあってはならないもので、深くおわびする」と陳謝し、自身は大臣給与を1カ月分自主返納すると明らかにした。辞任は否定した。
防衛省によると、懲戒処分の内訳は免職11人、降任2人、停職83人、減給14人、戒告7人。対象行為は、特定秘密の不適切な取り扱い▽潜水作業に支給される手当の不正受給▽基地内での不正飲食▽部下へのパワーハラスメント――の4分野に及んだ。
特定秘密については、適性評価をクリアしていない隊員が情報を知り得る状態にあったなどとする漏えい事案を海自で41件、航空自衛隊で2件確認。海自では35隻の艦艇で保全措置が不十分だったとした。特定秘密の取り扱いに関する手続きに瑕疵(かし)があったとする事案も15件あった。外部への流出は確認されていないという。
酒井氏をはじめ海自と陸上自衛隊に所属する27人を懲戒処分とし、指揮監督する立場にあった増田和夫事務次官と吉田圭秀統合幕僚長、森下泰臣陸上幕僚長、内倉浩昭航空幕僚長を含む94人を訓戒などとした。
潜水手当の不正受給では、潜水艦救難艦に所属する海自隊員ら65人を免職などの懲戒処分に。2017年4月から22年10月にかけて訓練時間の虚偽報告などを繰り返し、不正受給は総額約4300万円に上った。また、厚木航空基地隊など計3カ所に所属する海自隊員22人が食事の無料支給対象者でないにもかかわらず、代金を支払わずに基地内の食堂で総額約160万円分を不正飲食していたとして降任や停職などにした。
さらに「背広組」と呼ばれる内部部局(内局)で複数のパワハラが確認され、審議官級以上の幹部職員ら3人を停職や減給とした。内局の職員がハラスメントで懲戒処分されるのは初めて。責任を取り、背広組トップの増田事務次官が俸給月額10%(3カ月)を自主返納する。パワハラが一因となって、職員1人が精神疾患で療養を余儀なくされたという。【松浦吉剛、木原真希、小田中大】
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