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博多祇園山笠「伝統守り継ぐ」 次世代担う最若手38歳人形師

毎日新聞 / 2024年7月12日 16時14分

西流の舁き山笠の飾り付けを行う山笠人形師の西川直樹さん=福岡市博多区で2024年7月6日、平川義之撮影

 780年以上続く伝統の夏祭り「博多祇園山笠」の舁(か)き山笠(やま)が今夏も動き出し、福岡・博多の街を熱気の渦に包んでいる。山笠を手掛ける人形師は高齢化が進む一方、次世代を担う若手が徐々に存在感を示し始めた。舁き山笠を所有する七流(ながれ)の一つ、西流に所属する最若手の山笠人形師、西川直樹さん(38)=福岡市東区=は「伝統を守り継ぎたい」と語り、15日のクライマックス「追い山笠(やま)」で自ら手掛けた山笠を舁く。

 「滑らかになるように表面をきれいに磨き上げると、人形が自然と光るんです。納得いくまでやりきらんと気が済まない」。6月末、自宅の一室で自ら手掛けた人形を前に、西川さんは真剣なまなざしで語った。

 手掛けた人形は豊臣秀吉。秀吉は「太閤(たいこう)町割り」と呼ばれる戦国時代の戦災復興により、博多の街の基礎を築いた人物だ。発泡スチロールでかたどった人形のほおや目元に竹ベラで石粉粘土を塗る。電動製と紙製の二つのやすりを駆使し、唇やしわの線を整える。こだわり抜いて形成した秀吉は7月6日に飾り付けを終え、完成させた。目元や眉は深く彫って迫力を出す一方、口角を上げることで秀吉の柔らかな表情をも演出した。西流の仲間からも「今までにない太閤さんだ」と絶賛されたという。

 山笠に熱中する「山のぼせ」になったのは、同じ西流に所属する父勇助さん(76)の影響だった。赤ん坊の頃から祭りに連れ出され、中学生になる頃には全ての山笠の標題を暗記するまでになっていた。男たちが担ぐ舁き山笠の上で揺れ動く人形は、まるで命が吹き込まれたかのように躍動していた。「いつか、自らの手で作りたい」。そう強く憧れた。

 福岡市内の工業高校から九州産業大芸術学部に進学し日本画を専攻。卒業後はデザイン会社に就職したが、人形師への夢を諦めきれず、25歳で博多人形師の中村信喬さん(67)に弟子入りした。

 山笠人形師の成り手となるには博多人形師として高い技術力を身に付けなければならず、最低でも5年はかかるとされる。厳しい覚悟が必要だが「自分の目指す道でプロフェッショナルになりたい」と飛び込んだ。

 修業を重ね、念願の山笠人形師としてデビューしたのは2017年の夏。人形師は外部に依頼するケースもあるが、西流の町総代から「流の一員に任せたい」との提案があった。若手の人形師育成も必要とされる中、中村さんが後見に付くという形で、西川さんが抜てきされた。

平均年齢66歳、若手を積極登用

 当時の西流の総務、山脇正勝さん(81)は西川さんについて「人形師としては若かったが、初めて制作した山笠を見た時、人形が生きていると感じた」と振り返る。博多人形師でつくる博多人形商工業協同組合の組合員56人の平均年齢は66歳となり、高齢化が進む中で「若手が力を発揮している姿を見て、山笠に憧れる子もいると思う」と話し、今後の活躍にも期待する。今年の総務の伊藤康彦さん(76)も「西流では伝統的に若手を育てていこうという気風がある。次世代に継ぐことも私たちの大事な使命」と語り、若手の積極的な登用に前向きだ。

 15日午前4時59分にスタートする「追い山笠」で西流は4番目に登場する。伝統ある祭りの灯を絶やすまいとの思いを胸に、舁き手として博多の街を疾走したいと語る西川さん。「博多の街が何千年も栄えるよう祈った秀吉のように、見る人に希望を与えられる山笠にしたい」【栗栖由喜】

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