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「ライフガード」誕生秘話 当たりも?私の知らない「チェリオ」

毎日新聞 / 2024年7月13日 11時0分

「ライフガード」(中央)など、チェリオのドリンク=大阪市北区で2024年7月8日、村田貴司撮影

 暑い夏。子どものころ、選んでいたのは安くて量が多い「チェリオ」のジュースだった。一番よく飲んだのは「ライフガード」。迷彩柄のパッケージも、微炭酸の不思議な味も好きだった。でも先輩記者のイメージは「ビン入りで、量が多くて当たり付き」だという。当たり付き? 私の知らないチェリオがありそうだ。【水津聡子】

 6月下旬、取材で歩き回った後に、冷えたライフガードを飲んだ。甘みと酸味のバランスが絶妙で、炭酸は控えめ。何だか元気が出てくる。他社からはビン入りで似た味のドリンクが販売されているけど、ライフガードの方がたっぷり飲めて、ありがたかったな……。思い出にひたりつつ、パッケージを見ると、7種のビタミンとアミノ酸、ハチミツやローヤルゼリーが入っているそうだ。あれ、以前に飲んだ時とパッケージデザインが違う?

旅行先のヨーロッパで

 チェリオコーポレーション(京都市南区)の広報担当、春名春佳さんに話を聞いた。

 ライフガードは1986年に誕生した。水分補給と栄養補給ができる「サバイバル飲料」というコンセプトで、開発に着手した。炭酸を入れる予定はなかったが「少しでも入れてほしい」という営業担当者の懇願で、微炭酸に変更された。迷彩柄のパッケージは、当時社長だった菅春貴会長が、旅行先のヨーロッパで迷彩柄の服を着た若者を見て「かっこいい」と感銘を受け、取り入れた。

 同じ100円ながら、ライフガードは350ミリリットル缶で、他社製品よりも量が多くお得感があった。このため、発売と同時に大ヒットした。ところで、長年の疑問なんですが、ライフガードって何味なんですか? 「他の味に例えられないので『ライフガード味』です!」。春名さんの力強い言葉に、思わず納得してしまいました。

 実はパッケージも進化している。90年に当時は珍しい500ミリリットルのペットボトルを発売。2002年には、リサイクルしやすくする観点からペットボトルの着色をやめ、ペットボトルの表面全てを覆う「フルシュリンクラベル」を業界に先駆けて採用した。03年にはポップなキャラクター「ウサダー」も登場。06年からは毎年春にパッケージを刷新し、ロゴカラーやキャップのデザインを変えている。迷彩柄の印象が強くて、気付いていませんでした。

アメリカのデザイン踏襲で容量大

 会社としては61年に大阪府高槻市で創業した。当初はアメリカの清涼飲料「セブンアップ」を日本で製造・販売するボトラー(瓶詰め会社)としてスタートした。さっそく、アメリカで大流行していたフルーツ系の炭酸飲料を製造・販売しようとしたが、許可を得られなかった。このためグレープ味とオレンジ味の飲料を独自に開発し、65年に売り出した。その名は「チェリオ」。英語でいう「乾杯」で、後になって、社名に冠することにもなる。

 アメリカのデザインを踏襲した10オンス(約296ミリリットル)のビンは、日本で当時主流だった200ミリリットルビンの1・5倍の容量があった。同じ値段でより多く飲めるとあって、子どもたちを中心に人気を集めた。

 販売ルートは主に駄菓子屋。70年代のチェリオの王冠キャップには、当たりくじがついていた。「50代以上は、『当たり付きのジュース』として覚えてくださっている方もいます」と春名さん。先輩が言っていたのは、これか。ビン入りは20年に販売を終えたが、今もペットボトルでメロン味が売られている。

 82年に誕生したのが「スィートキッス」。パッケージに描かれたキスマークに、子どものころドキドキした記憶があります。「当時、何味なのかわからない『不思議系ドリンク』が流行しており、その流れに乗りました」と春名さんが解説してくれた。薄型ガラスビン入りで、開封後もフタをして持ち運べることも斬新で、大ヒットした。これ以降、ドリンクの中身はもちろん、パッケージの改良にも、さらに積極的に取り組むようになった。

 おいしいだけでなく、楽しさを追求したドリンクもチェリオの特長だ。

ちゃんこ風スープまで

 90年発売の「どすこい」は、ちゃんこ風スープで、缶にはお相撲さんが描かれている。取引先から、具入りの豚汁ができると提案されて作ってみたが、具は飲み口にひっかかるとの理由で、スープのみとなった。

 04年ごろに売り出された「なんちゃってシリーズ」は、ジュースなのに、しょうゆやマヨネーズのように見えるパッケージ。「自動販売機の前で、お客さまが思わず笑ってくださったら」との思いで開発された。

 20年代に入っても、チョコミント味を再現した「KISS チョコミント」や、「台湾カステラソーダ」などの意欲作が。「台湾カステラのシュワシュワ感を炭酸で表現したんです」と春名さん。「シュワシュワ」にカステラとジュースの接点を見いだすなんて、発想が自由ですね。

 「キャラメルポップコーンソーダ」は、キャラメルポップコーンの味をリアルに再現した。新入社員が発案し、70歳近いレジェンド開発担当者が、本物の味を再現するのに力を注いだ。

 いずれもすでに販売を終了しているものの、攻めの姿勢にはSNS(ネット交流サービス)上から称賛の声も。「俺たちのチェリオ」と親しみを込めて呼ぶ人もいる。

 チェリオの自動販売機は、関西地方と東海地方、沖縄に約3万台が設置されている。原料費が高騰する中でも、お茶やジュースなど、100円で販売し続ける商品も多い。「『安くて大容量』は歴史であり、こだわりです。これからもモットーである『おいしい、たのしい、あたらしい』製品を作っていきたいです」と春名さんは語る。遊び心と心意気に乾杯!

お菓子メーカーとコラボ

 他のお菓子メーカーとのコラボ商品も。沖縄県の「上間菓子店」の乾燥梅「スッパイマン」の味を再現したサイダーを7月に発売。塩やクエン酸配合で夏にぴったりですね。プロ野球・阪神タイガースの岡田彰布監督の好物でさらに知名度が上がった「パインアメ」をドリンクにした「パインアメサイダー」は、23年発売の人気商品だ。

 逆のパターンで、ライフガード味のラムネやキャンディーなどを販売するメーカーもある。あっ、ここでもやっぱり「ライフガード味」!

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