書の祭典で「推し」見つけたい 毎日書道展、最高賞の見どころ/1
毎日新聞 / 2024年7月14日 10時0分
「第75回毎日書道展」の東京展を開催中です。漢字、かな、近代詩文書、大字書、篆刻(てんこく)、刻字、前衛書の7部門にわたる日本最大規模の書の祭典です。会場は、東京・六本木の国立新美術館(入賞作品や役員、会友作品、8月4日まで)と上野の東京都美術館(東京展の入選作品など、7月18日から24日まで)の2会場です。公募部門の最高賞である毎日賞の作品の中から、本展の各部審査副部長が選んだ「私の推す毎日賞」を2回にわたり解説します。
<漢字Ⅰ類>謝名堂薫紅「金雞巌僧室」(沖縄県うるま市)
先が利く細めの筆の弾力を利用し、律動を加味しながら書き上げた運筆が見事。躍動している文字は、造形に少しも狂いがない。この字数で繁雑に見えないのは、墨の潤滑を効果的に配し、行を立て、行間を生かしたからで、完璧に近い作といえる。非凡な作者である。
(評・栗崎浩一路)
<漢字Ⅱ類>草野珠光「雙戯」(札幌市)
「雙戯」とは、秦代の画像磚(せん)に見られる雙龍が戯れる姿をいう。雄渾(ゆうこん)な筆致から繰り出される線条が紙面を圧倒し、大字の快作となった。豊かな墨量と渇筆が奥行きと明るさを生み、各字に生彩感が横溢(おういつ)している。
(評・加藤裕)
<大字書>小倉揮代「背」(愛媛県伊予市)
見るものを圧倒する筋肉質な線の塊。それを支える深みのある墨色。そして美しく輝く白。鍛錬に鍛錬を重ねたからこそ成しえる造形である。親父(おやじ)の背を見て子は育つとはよく言ったものだ。偉大な背である。
(評・松崎礼文)
<篆刻>笹倉淳「飛出蘆華」(大分県日田市)
漢印式の四字制(均布法)を使い力強い線質を組み合わせ直筆と曲筆を巧みに表現した作品。特に「華」の主体である中央線は白を利かせ、太く構成しているため、周囲の細かな線が一段と綺麗(きれい)に仕上がり力作が誕生した。(評・越坂久雄)
<刻字> 朝賀恵子「乱聲千葉下 寒影一巣孤」(新潟市)
凜とした中に爽やかさが漂う作品。大胆にして金文を基に歯切れのよい線質と構成の良さが心地よく余白と響き合っている。筆意を鋭い刀意に換え下地の濃紺に金箔が冴え、所々に赤のカシューがポイントになり現代に甦らせた作品。(評・齊藤瑞仙)
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