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店舗は直っても 能登のコンビニ、24時間営業再開への壁

毎日新聞 / 2024年7月15日 5時0分

コンビニの店頭に張り出された呼びかけの紙。人手不足で24時間営業ができずにいる=石川県珠洲市で2024年6月27日午後6時35分、面川美栄撮影

 能登半島の最北端に位置する石川県珠洲(すず)市。6月下旬のある日、街中にあるコンビニの店内は正午前のピーク時になると、150人ほどの客でごった返していた。

 「客数なんか絶対伸びない場所なのに、桁違い」

 この店を含めて市内でフランチャイズの3店舗を営む下孝典(しもたかのり)さん(43)は、この半年で売り上げが伸びたといい、うれしい悲鳴を上げる。ただ、この先の経営を考えると悩みがあるという。

 元日の地震で市内では震度6強の揺れに見舞われた。3店舗とも断水や駐車場のひび割れ、ペットボトルなどが陳列されている冷蔵庫の故障といった被害が生じた。2023年の大みそかまでは24時間営業だったが、翌日の地震直後から営業は続けられなくなった。

 駐車場を修繕するなどし、3月中旬になってようやく2店舗の営業を始められるようになった。

 だが、再開には大きな課題があった。

 これまで3店舗には社員やアルバイトの店員が計24人いたが、被災した影響で20~70代の7人に減少した。

 7月時点で、コンビニの本部社員1人が応援に駆けつけてくれた。それもあり、2店舗だけだが営業時間を月~土曜日は午前6時~午後6時に短縮させ、日曜日は休業することで、再開にこぎつけた。

 下さんは「店舗が営業できるような状態になっても、人がいなかった」と嘆く。

 店頭の広告でアルバイトを募集し、ハローワークなどに求人を出した。地震から半年がたって、ようやく70代の新人2人が入ってきた。

 下さんは「地震後、若い世代の減少にさらに拍車がかかった」と感じている。キャッシュレス決済や公共料金の支払いなど複雑化するレジの操作を任せるのは難しく、床掃除などの仕事をしてもらっている。

 下さんは、地震前より増えた客への対応もあって「新人に教えることもできない」と話す。

 1月の地震から半年がたっても、能登半島ではこうした人手不足により、商店や飲食店が思うように営業を再開できていない。

 北陸などでラーメン店を展開する「8番らーめん」の珠洲店では、火、水、木曜の午前11時~午後3時のランチ営業だけだ。

 本社事業部の担当者は「フルタイムでやりたいのは山々だが、従業員の中にも被災したり、地震をきっかけに引っ越して仕事ができなくなったりする人がいる」と話す。

 地域からは「ぜひ早く復活して」という要望の声も多いが、応えられずにいる。

 輪島市内のガソリンスタンドの男性店長(58)も「求人を出しても、誰も来ないと思う。打開策はない」とあきらめの表情を見せる。

 求職者1人当たりの求人数を表す有効求人倍率を見ると、県内全体では5月、1・48倍だった。一方、地震の被害が大きかった奥能登地方(珠洲市、輪島市、能登町、穴水町)では0・64倍と落ち込んでいた。

 県労働企画課の山口久雄課長は「能登半島の先に行くほど、雇用の弱さが見られる傾向」と分析する。

 雇用の維持や人材確保などを支援しようと県は7月1日、輪島市に雇用対策の拠点を開設した。2人の調整役が企業や業界団体に求人を確認するほか、求職者が応募しやすいように求人の出し方を助言する。

 山口課長は「こうした対応で、人手不足の解消につながれば」と話した。【面川美栄】

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