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「8050問題が深刻化の恐れ」 25年は団塊ジュニア全員が50歳以上に

毎日新聞 / 2024年7月20日 13時0分

インタビューに答える石田光規・早稲田大教授=東京都新宿区で2023年4月24日、宮本明登撮影

 自宅で亡くなった高齢の親の遺体を放置したとして同居する中高年の子が死体遺棄容疑で逮捕される事件が相次いでいる。80代の親がひきこもり状態などにある50代の子を養う「8050問題」が背景にあるとみられるケースが目立つ。こうした実態をどう見るか、専門家に聞いた。

「しがらみからの解放」の副作用

 孤独・孤立の問題に詳しい早稲田大の石田光規教授(社会学)は、8050問題について「孤独がもたらした最悪の帰結の一つ」と語る。

 「地域のつながりが薄くなり、何らかの事情で仕事に就けない人たちが孤立してしまう。生活するには親の年金と貯金を頼りにするしかないのですが、親が亡くなったら八方塞がりになります」

 2025年には「団塊の世代」(1947~49年生まれ)が全員75歳以上の後期高齢者になり、「団塊ジュニア世代」(71~74年)も50歳以上になる。「現状を放置すれば8050問題はより深刻化し、『9060問題』に移行するケースも増える恐れがあります」

 そもそも各地で孤独が広がっているのはなぜなのか。石田教授は血縁、地縁、社縁といった「伝統的なしがらみからの解放」に着目する。

 「戦後の日本社会はしがらみから人々を解放することを目指してきました。それまでの家父長制的な規範の下では家族に対し、農村などでは地域に対して貢献することが求められましたし、会社にも忠誠を誓わなければなりませんでした。そうしたしがらみからの解放は人とのつながりを希薄にする副作用も強く、皮肉なことに至るところで孤独が広がってしまったのです」

「親亡き後」に備えて

 NPO法人「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」(東京都)副理事長でジャーナリストの池上正樹さん(61)は死体遺棄事件が相次いでいることなどを踏まえ、親が「親亡き後」に備えることの重要性を指摘する。

 「親が亡くなっても子の人生は続きます。親自身が万が一を考え、元気なうちに家族と話し合ったり工夫できることを検討したりしておくことが、ひきこもり状態にある子を守ることにつながります」

 また、池上さんはひきこもりに対する偏見や「自立=就労」という誤解が根強く残る現状を危惧している。KHJは今年6月から本人や家族、支援者向けに「個別相談サービス事業」を始めたほか、ひきこもり状態にある人たちを支援する基本法の制定も求めている。

 池上さんは「私たちが大事にしているのは人権です。法整備を機に、本人や家族の『尊厳』が重んじられる社会になれば」と訴える。【隈元悠太、千脇康平】

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